ツール・ド・フランス2020 第18ステージクフィアトコフスキが逃げ切り勝利、イネオスが名誉回復のワン・ツー 2位カラパスは山岳賞

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2020の第18ステージが現地時間9月17日に行われ、5つの山岳越えコースでミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)とリチャル・カラパス(エクアドル)のイネオス・グレナディアーズ勢が逃げ切ってワン・ツーフィニッシュ。ここまで不本意なレースが続いていたチームにとって名誉を回復させる会心の勝利を挙げた。個人総合首位を走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)はメイン集団で安定した走り。ライバルの攻撃にも冷静に対処し、マイヨジョーヌを守ることに成功している。

ツール・ド・フランス2020第18ステージ。ミハウ・クフィアトコフスキ(右)とリチャル・カラパスのイネオス・グレナディアーズ勢がワンツーフィニッシュ。ステージ優勝はクフィアトコフスキとなった Photo: Pool / BETTINI / SUNADA

超級山岳でイネオス勢2人が逃げ切り態勢へ

 終盤戦を迎えている今大会。第3週スタートの第16ステージから始まった3日続けての上級山岳ステージは、この日で終わりに。同時に、ロードレースステージにおける山岳はこれが最後になる。

 第18ステージは、前日のコル・ド・ラー・ローズ頂上決戦の興奮の余韻が残るメリベルをスタートし、アルプスの山々を抜けてラ・ロシュ=シュル=フォロンにフィニッシュする175km。5つのカテゴリー山岳が立て続けに現れるルート設定で、獲得標高は4000mを超える。最大の難所は、フィニッシュ前31.5kmで頂上に達する超級山岳モンテ・ドゥ・プラトー・デ・グリエール(登坂距離6km、平均勾配11.2%)。上りきった後には、1.8kmのグラベルセクション(未舗装区間)も待ち受け、登坂力だけでなく変化への対応力も求められる。最終盤は山岳にはカテゴライズされない丘越えを経て、フィニッシュへと下っていく。

最大で32人に膨らんだ逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 リアルスタートからしばらく出入りが繰り返されたあたりは、ここ数日と同様。その中から32人がメイン集団からリードしていくこととなり、その中にはポイント賞を争うサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)の同賞上位3選手もジョイン。

 彼らが狙うのは14km地点に用意された中間スプリントポイント。ここはスプリント力に勝るベネットがきっちりと1位通過。現在着用するマイヨヴェールを絶対的なものにすべく、貴重なポイントを獲得した。

 以降はベネットらスプリンター陣のほかにも数人がメイン集団へと下がっていき、この日1つ目の山岳である1級のロズラン峠を上る頃には先頭は19人に。この段階では集団との差は2分程度だったが、先頭グループは山岳賞で首位に立つ可能性のある選手たちがそろっていたこともあり、そのまま上りを急ぐ。頂上ではマルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ)とカラパスが争い、ヒルシが1位通過した。

 ヒルシとカラパスは直後の下りをそのまま先行。続いて迎えた3級山岳コート・ド・ラ・ルート・ド・ヴィルでクフィアトコフスキ、ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)が2人に合流。結果的に、このメンバーがレースをリードし続ける形に。残りの逃げメンバーは徐々にメイン集団へと飲み込まれていくことになった。

山岳に入って先頭は5人に絞られる Photo: Yuzuru SUNADA

 5人になった先頭では、依然ヒルシとカラパスが山岳ポイント獲得に意欲的。コート・ド・ラ・ルート・ド・ヴィル、続くコル・ド・セジーもヒルシが1番に頂上通過を果たした。しかし、その後の下りでヒルシが落車。すぐに立ち上がって前方復帰を目指したが、好ペースで飛ばす先頭グループの背中をとらえることはできず。エデも遅れたため、先頭はクフィアトコフスキ、カラパス、ビルバオの3人に絞られた。

 一方のメイン集団は、リーダーチームのユンボ・ヴィスマが淡々とコントロール。前をゆく選手たちを容認して、意識的にタイム差を広げていく。この日4つ目の上りとなる1級山岳コル・ド・アラヴァスの入口では先頭3人と6分45秒、超級山岳モンテ・ドゥ・プラトー・デ・グリエールに入る頃には8分以上の差となった。

 先頭は3人になってから、クフィアトコフスキが牽引する時間が長くなってくる。頂上ではカラパスが山岳ポイント獲得に動き、両者の役割が少しずつ明確に。そんな流れの中、超級山岳の中腹で両者をマークし続けていたビルバオが遅れ始める。そこからは、イネオス勢2人が逃げ切りに向かってフィニッシュを目指していった。

ライバルのアタックにもログリッチは動じず

 後続に対して十分なリードを得ていたクフィアトコフスキとカラパス。2人になってからは先頭交代のローテーションを増やして残りの距離を減らしていった。モンテ・ドゥ・プラトー・デ・グリエールの頂上もカラパスがトップ通過を果たし、この時点で山岳賞首位に。グラベルセクションも問題なくクリアし、あとはフィニッシュへ急ぐだけになった。

メイン集団はユンボ・ヴィスマがコントロールする Photo: Yuzuru SUNADA

 その後方では、メイン集団が活性化。最後の上りが始まるとともに個人総合7位のミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)がアシストのワウト・プールス(オランダ)とともにアタック。これはユンボ・ヴィスマ勢が静観したが、頂上を目前に同8位のエンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)が攻撃開始。さらに同2位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)がカウンターアタック。ここはログリッチがしっかりとチェックに動いて、そのまま頂上を通過。このアタックの打ち合いで、ランダは集団へと戻されている。

 グラベルセクションに入って、メイン集団はログリッチ、ポガチャル、個人総合3位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)、ランダ、マス、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)の6人に。急坂で上位戦線を走る選手たちが遅れたほか、グラベルに入ってすぐに同4位のリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)がパンク。バイク交換までに時間を要したこともあり、マイヨジョーヌグループを追う格好になった。

グラベルセクションを進むリチャル・カラパス(先頭)とミハウ・クフィアトコフスキ Photo: Yuzuru SUNADA

 グラベル、直後の下りでは大きな変化がなかったメイン集団は、残り15kmで前方を走っていたビルバオが前待ちでランダのためにアシストを開始。さらに5kmほど進んだところでポートが復帰。個人総合上位陣が一団となると、バーレーン・マクラーレンのアシスト陣がこのグループをまとめる方向へ。アタックや牽制といった駆け引きはないまま、最終局面へと進んでいくことになった。

 後方で起きていためまぐるしい展開を尻目に、快調に逃げ続けていたクフィアトコフスキとカラパス。残り数キロからは会話をしながら進んでいた両者だが、最後の1kmを示すフラムルージュを通過するとともにペースを緩めてウイニングライドを開始。ときに互いの肩を抱きながら、ときに後ろを走るチームカーに向かって喜びを分かち合いながら、ゆっくりとフィニッシュラインへ。肩を組んでのワンツーフィニッシュは、カラパスが貢献度の高かったクフィアトコフスキを少し前に出す形で完成させた。

ワンツーフィニッシュを決めて肩を抱き合う Photo: Pool / BETTINI / SUNADA

ログリッチ「うまく乗り切ることができた」

 過去には世界王者になるなど、数々の実績を持つクフィアトコフスキだが、意外にもツールは初のステージ優勝。喜びを語るにあたって、「チームとリチャル(カラパス)に心から感謝している」と真っ先に口にした。レースを振り返って、「リチャルの山岳賞のために、ヒルシの動きをチェックしていた。彼(ヒルシ)は山岳ポイントに集中していたようだが、下りで落車してからは自分たちにできることをやろうと心がけた。それが結果に表れた」と述べた。

 イネオス・グレナディアーズはエガン・ベルナル(コロンビア)の個人総合2連覇を最大のミッションにツールへと乗り込んでいたが、そのベルナルが背部の痛みもあり第15ステージで脱落。続く第16ステージを終えるとともに大会を離脱し、当初の目標から大幅な軌道修正を余儀なくされていた。ここ数ステージはカラパスが再三の逃げでステージ優勝目前まで迫るなど、チーム状態は上向きになっていたが、ついに勝利をつかんでみせた。同時にカラパスは山岳賞のマイヨアポワに袖を通しており、残るステージは水玉ジャージを持ち帰るための戦いにも力を注いでいくことになる。

グラベルセクションを走るマイヨジョーヌのプリモシュ・ログリッチ Photo: Yuzuru SUNADA

 ステージ優勝とならんで焦点だった個人総合の行方。マイヨジョーヌのログリッチが、上りで遅れたアシスト陣の復帰を待ったことも関係し、メイン集団は最終局面で12人に。残り1kmから再びユンボ・ヴィスマが主導権を奪って、ワウト・ファンアールト(ベルギー)がスプリントでステージ3位を確保。ログリッチを追うライバルたちにボーナスタイムを与えない盤石ぶりを見せ、チームリーダーの首位を堅いものとした。

プリモシュ・ログリッチ(前)とタデイ・ポガチャルは互いをマークし合いながらフィニッシュを迎えた Photo: Pool / PN / SUNADA

 ジャージを守ったログリッチはレース後の記者会見で「2日続けてハードなステージだったが、うまく乗り切ることができた」とホッとした様子。平坦ステージを1つ挟んで迎える第20ステージの個人タイムトライアルへと向かうが、「まだまだトリッキーなステージが控えている。明日の平坦ステージも集中しなければいけない」と気を引き締める。レース終盤、集団内でポガチャルに声をかける場面があったが、何を話していたか問われると「覚えていないよ」とはぐらかす余裕も見せた。

 かたや、総合タイム差57秒で2位につけるポガチャルは悔しそうな様子。「ライバルに差を付けようと試みたが上手くいかなかった」とコメント。ステージ3位でボーナスタイムの獲得も意識していたというが、これも失敗。「ユンボ・ヴィスマが素晴らしいコントロールだったことを認めなければいけない。まずはチームメートに感謝したい」。ログリッチ同様、集団内での会話について問われると「よく覚えていない」とかわしてみせた。

 このステージを終えて、個人総合に変化が発生。同5位でスタートしたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、同6位だったリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)がともに超級山岳で遅れ、それぞれ順位を2ランクダウンさせている。代わってランダが5位、マスが6位にアップしている。

マイヨジョーヌを堅守したプリモシュ・ログリッチ。残るステージへ集中力を高めている Photo: Pool / PN / SUNADA

 18日に行われる第19ステージは、久々の平坦ステージ。ブールカン=ブレスからシャンパニョルまでの166.5kmは、中盤の4級山岳以外は目立った登坂区間がなく、スプリンターのための1日となりそう。個人総合上位陣にとっては、思わぬトラブルなどに巻き込まれず、きっちり走り切ることがミッションになる。

第18ステージ結果
1 ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) 4時間47分33秒
2 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) +0秒
3 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +1分51秒
4 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +1分53秒
5 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)
6 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +1分54秒
7 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)
8 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)
9 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・マクラーレン)
10 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 79時間45分30秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +57秒
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分27秒
4 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +3分6秒
5 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +3分28秒
6 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +4分19秒
7 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +5分55秒
8 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +6分5秒
9 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +7分24秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +12分12秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 298 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 246 pts
3 マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) 235 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 74 pts
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 72 pts
3 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 67 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 79時間46分27秒
2 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +3分22秒
3 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマ・エフデジ) +1時間35分35秒

チーム総合
1 モビスター チーム 39時間23分11秒
2 ユンボ・ヴィスマ +24分36秒
3 バーレーン・マクラーレン +58分47秒


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