ツール・ド・フランス2020 第17ステージ大会最高峰のローズ峠をロペスが制する スロベニア勢対決に勝ったログリッチが総合首位キープ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 大会後半の戦いが進んでいるツール・ド・フランス2020。現地時間9月16日に行われた第17ステージは、この大会の行方を決めるとみられていた大事な1日。超級山岳コル・ド・ラ・ローズの頂上を目指したレースは、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)が一番乗り。ツール初勝利を挙げた。そして大注目の個人総合争いは、首位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が2位に付けるタデイ・ポガチャル(UAE・チームエミレーツ)との同国対決に勝つとともに、ステージ2位とまとめてマイヨジョーヌをがっちりキープした。

ツール・ド・フランス2020第17ステージ、今大会のクイーンステージと呼び声の高かった1日をミゲルアンヘル・ロペスが制した Photo: Pool / PN / SUNADA

故障抱えたベルナルが大会を去る

 前日から始まった山岳3連戦。その2日目が最も難易度が高く、今大会の総合争いに大きな影響を与えるものとみられてきた。グルノーブルからメリベル,コル・ド・ラ・ローズまでの170kmに設定された第17ステージ。最初の難関は、中間地点を過ぎた直後から上り始める超級山岳マドレーヌ峠(登坂距離17.1km、8.4%)。これを上り切り、長いダウンヒルをこなすと、いよいよ今大会最高峰、標高2304mの超級山岳コル・ド・ラ・ローズ(ローズ峠)を迎える。21.5kmの上りは、フィニッシュに近づくにつれてハードなものとなる。

 特に残り4kmから勾配が急激に変化。残り2.5kmで最大勾配24%となり、その後も20%前後の急坂が断続的に現れる。冬場にはスキー場の滑走コースともなる自転車道を、このレース仕様に新たに舗装。今大会のクイーンステージとの呼び声が高いが、そんな評判に違わない最高の舞台が用意された。なお、この山岳をトップで上った選手に特別賞「アンリ・デグランジュ賞」が贈られるとともに、超級山岳の2倍分の山岳ポイントが付与される。

グルノーブルを出発するプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 この日のレースを前に、ディフェンディングチャンピオンのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が大会を去ることを発表。かねてから痛めていた背部の状態が思わしくなく、しばらくは回復に専念するとした。今大会では個人総合2連覇への挑戦が期待されていたが、第15ステージで大きく遅れ、上位戦線からも脱落していた。

 加えて、シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)も未出走。前日のステージでジェローム・クザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)がタイムアウトととなり、第17ステージは152選手がスタートラインについた。

5人で形成された逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 ここ数日と同様に、リアルスタート直後からアクティブな状況が続いた序盤。トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が1人でリードを広げていく場面も見られたが、逃げを決めるところまではつなげられず。一時的に形成された大人数のパックから、リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ プロチーム)、ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が30km地点を過ぎたところで抜け出し、ようやくプロトン全体が落ち着くこととなった。

 45.5km地点で通過した中間スプリントポイントは、アラフィリップがトップを確保。3分10秒後にやってきたメイン集団では、ポイント賞首位のマイヨヴェールを着るサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭をとって全体の7位通過。同賞争いで2番手のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が9位通過だったこともあり、2ポイントながらベネットがリードを広げることに成功している。

マドレーヌ峠を上る先頭グループ Photo: Yuzuru SUNADA

 以降は先頭5人が長くリードを続ける流れに。マドレーヌ峠の登坂を前に、最大6分まで差は広がった。上りに入ると、先頭グループは前日の勝者であるケムナが脱落。4人として頂上を目指していく。しばし淡々と上り続けるが、頂上を目の前にカラパスがスピードアップ。一瞬追ったアラフィリップを制して、1つ目の超級山岳をトップで走りぬいた。

 メイン集団は、それまでコントロールしていたユンボ・ヴィスマに代わってバーレーン・マクラーレンがアシスト総出で牽引を始める。狙うは個人総合7位のミケル・ランダ(スペイン)のジャンプアップ。長く厳しい上りとあって集団からポジションを下げる選手が続々と現れる。その中には、ここまで個人総合10位につけていたナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)の姿も。総合争いから完全に脱落となった。

 精鋭だけに絞られつつある集団でも山岳賞を意識した動きが見られた。同賞争いで2番手のポガチャルがスピードを上げて頂上を通過。全体の5位通過で8ポイント獲得し、この時点で首位に立った。

最も厳しい局面で攻撃のロペスが歓喜のフィニッシュ

 先頭では、マドレーヌ峠からの下りでマーティンが遅れ、そのままメイン集団へと飲み込まれる。3人に絞られた逃げメンバーは、コル・ド・ラ・ローズの入口で2分15秒差。メイン集団の気配を少しずつ感じながら、眼前にそびえる高峰へと向かっていった。

メイン集団はバーレーン・マクラーレンがコントロール Photo: Yuzuru SUNADA

 下りを慎重にこなしたメイン集団は、しばしの平坦区間から再びペースを戻して逃げる3人を射程圏内にとらえる。ペーシングを担うのはバーレーン・マクラーレンで変わらず、フィニッシュまでの距離を15kmとしたところでその差は1分45秒まで縮めた。

 前方では、この状況を嫌ったカラパスがアタック。アラフィリップを振り切ると、残り9kmでイサギレも置き去りにして先を急ぐ。この時点で30秒差まで迫っていた集団だったが、カラパスのペースアップと集団自体のコントロールもあってその差は再び拡大傾向となる。

 ただ、カラパスは総合に関係しない選手とあり、個人総合上位陣は集団内での駆け引きに集中。残り4kmからはUAE・チームエミレーツがスピードアップを図る。すると、それまでアシスト陣のケアを受けていたランダが遅れ始める。ログリッチのそばを走っていたチームメートのトム・デュムラン(オランダ)や、個人総合3位でスタートしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)も徐々に離されていく。

 緊張度が増す集団が動いたのは残り3.5km。個人総合上位陣で最初のアクションはロペスだった。これに続いたのはポガチャル、ログリッチ、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)。少し遅れて個人総合6位のリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)も追いつく。そこからはクスが牽引を担い、先頭を走り続けたカラパスをパスした。

アタックを成功させて独走に持ち込んだミゲルアンヘル・ロペス Photo: Yuzuru SUNADA

 クスのアシストでログリッチの態勢を整えるかと思われた矢先、そのログリッチがライバルたちの様子を見ながら一瞬ペースダウン。好ペースを維持するクスは、そのまま単独先頭となる。ただ、この動きを見逃さなかったのがロペス。急いでクスに合流すると、一気にペースアップ。残り2.5kmとなったところでクスがログリッチを待つ判断をしたことで、ロペスの独走状態になった。

 1人フィニッシュへ突き進むロペスと、その後ろではログリッチとポガチャルのスロベニア勢同士の総合首位攻防戦が勃発。ログリッチが渾身のアタックでポガチャルに差をつけると、前待ちのクスに追いついて勢いを増す。残り2kmからは単独でロペスを追いかけるとともに、数秒差で続くポガチャルからの逃げ切りを図る。

 沿道の大歓声を受けながら最も厳しい勾配20%前後の区間を上る選手たち。最後までペースを落とさず上りきったロペスが、コル・ド・ラ・ローズの頂上へ真っ先にやってきた。初出場のツールで、クイーンステージを鮮やかに制してみせた。

 その15秒後、スロベニア国旗が至るところではためく中をログリッチがステージ2位でフィニッシュ。ロペスに追いつくことはできなかったものの、マイヨジョーヌを堅いものとするのには十分な走り。懸命の追走を見せたポガチャルはさらに15秒後にやってきてステージ3位に続いた。

ステージ優勝のポディウムに上がったミゲルアンヘル・ロペス Photo: Pool / PN / SUNADA

ログリッチ「やるべき仕事は残されている」

 これまでも上りがタフになればなるほど強さを発揮してきたロペス。持ち味を発揮してのクイーンステージ勝利に感情を抑えることはできなかった。

 レース後のインタビューでは涙を流しながら「今日の勝利は妻とわが子のためのもの。(コロンビアの自宅には)遠くて帰れずさみしいけれど、よい報告ができる」と家族を思った。激闘を振り返って、「標高2000mはまるでわが家のようだ。勝つ自信はあったし、チームメートの働きに応えたかった」とコメント。9月16日はチームマネージャーのアレクサンドル・ヴィノクロフ氏の誕生日でもあり、「素晴らしい誕生日プレゼントを贈ることができる。本当に感動的だ」と喜ぶ。そして残るステージへの意気込みを問われると、「もともとはパリ到達そのものが目標だった。これからは毎日の調子を見ながら、できることを続けていきたい」と話した。

ステージ2位とまとめてマイヨジョーヌを守ったプリモシュ・ログリッチ Photo: Yuzuru SUNADA

 ログリッチも最難関をうまく乗り切り、マイヨジョーヌを守ることに成功。レースを終えて、「最後の4~5kmはほかのレースとは比べものにならなかった」とそのハードさを表現。残り3kmを切ったところでクスを先行させた動きについて説明を求められると、「いつだって助けてくれる彼を勝たせてあげたかった。レース中に話し合って、ステージ優勝を狙ってほしいと伝えていた」と事情を明かす。結果的にクスがアシストに戻って自身のステージ2位につなげたことにも感謝し、「彼が助けてくれて本当によかった」と述べた。ポガチャルとの総合タイム差は57秒としたが、「十分なリードだとは思わない。まだやるべき仕事は残されている」と気を引き締める。

 そんな彼が笑顔を見せたのは、スロベニアからの大応援団について問われた時。自身のファンクラブのメンバーも多数駆けつけていたといい、「グラン・コロンビエのステージ(第15ステージ)からずっと見守ってくれている。みんなからのエネルギーを感じているし、彼らもスロベニアに帰った時にこの経験を誇りにしてほしいね」と明るく話した。

懸命の追走を見せたタデイ・ポガチャル。マイヨジョーヌとの差は開いたが引き続き攻撃すると宣言した Photo: Yuzuru SUNADA

 一方、直接対決に敗れたポガチャルも、「走りは悪くなかった」と前を向く。「ものすごい急勾配だった。ベストを尽くしたが、ロペスとログリッチにはかなわなかった」と2人の強さを認めつつも、「まだまだハードなバトルが待っている。最後までトライはやめない」と強い意志を見せた。

 このステージを終えて、ロペスが個人総合3位に浮上。ログリッチとは総合タイム差1分26秒とする。同4位にはポートが2ランクアップ。対照的に、ウランが3ランクダウンとなった。また山岳賞にも変動があり、ポガチャルがマイヨアポワに袖を通している。3点差でログリッチが続いており、こちらもまだまだ予断を許さない展開だ。

マイヨジョーヌを守ったプリモシュ・ログリッチ。残るステージへ気を引き締める ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 激闘から明けて迎える第18ステージは、メリベルからラ・ロシュ=シュル=フォロンまでの175km。山岳3連戦の最終日は、5つのカテゴリー山岳が凝縮した獲得標高4000m超え。その最後に立ちはだかる超級山岳モンテ・ドゥ・プラトー・デ・グリエール(6km、11.2%)では、総合上位陣による打ち合いが見られるか。頂上フィニッシュとは異なり、ダウンヒルから最終局面を迎えるあたりでも、これまでとは違った勝負が期待できそうだ。

第17ステージ結果
1 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 4時間49分8秒
2 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +15秒
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +30秒
4 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) +56秒
5 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +1分1秒
6 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +1分12秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +1分20秒
8 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
9 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +1分59秒
10 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +2分13秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 74時間56分4秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +57秒
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分26秒
4 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +3分5秒
5 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +3分14秒
6 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +3分24秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +3分27秒
8 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +4分18秒
9 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +7分23秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +9分31秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 278 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 231 pts
3 マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) 218 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 66 pts
2 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 63 pts
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 51 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 74時間57分1秒
2 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +3分21秒
3 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマ・エフデジ) +1時間24分17秒

チーム総合
1 モビスター チーム 224時間49分23秒
2 ユンボ・ヴィスマ +30分7秒
3 EFプロサイクリング +1時間3分21秒


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