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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<63>世界一周自転車旅で持ち運んだ工具とリペアパーツ

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 前回の記事では旅の装備は軽量コンパクトなものを選んだと書いた。しかし自転車に使う工具だけは違った。自転車店勤務の経験から、ありとあらゆる自転車トラブルが目に浮かんでしまい、工具一式と言ってもいいくらい沢山持って行った。

ホロ―テックⅡのBBを交換する様子。交換や修理の感触を知れるのも自分で作業するメリットだ Photo: Gaku HIRUMA

愛車の状態をしっかり把握しておくことの大切さ

 持ち運んだ工具はパンク修理セット、アーレンキーセット、モンキーレンチ、チェーンカッター、ニップル回し、ラジオペンチ、ワイヤーカッター、ニッパー、スプロケット外し、ハブスパナ、BBの脱着工具などなど。挙げた工具のうちどれが自転車旅に必要かと聞かれると非常に判断が難しい。

 僕の経験談だが、世界一周のお供に選んだ初代の自転車はトラブルが多く、道具が揃わないような小さい町では、自分で修理や調整のできる工具は重宝した。そのおかげで定期的にメンテナンスでき、自転車の状態を保つことができた。車体の状態をこまめに見れるので、交換が必要なパーツを事前に目星を付け、早めに交換できるのでメリットが大きかったと感じる。

現地で輪行やメンテナンスをする際は、外したボルトは必ず戻しておくことが重要だ。下手したらボルト1本ないだけで、走行できないこともありうる Photo: Gaku HIRUMA

 自分が滞在している町で、信頼できそうな腕をもつ自転車店を見つけられればいいが、適当に修理されるくらいなら自分で直したいという気持ちがあった。それにしっかり修理できたのか、とりあえず修理したのかでは大きく違うし、その感覚は直した本人でしか分からない。僕の経験上、海外の自転車店は自信満々に「直ったぜ」と言われ、自転車を渡されても、実は全然直ってなかったというケースが多々あった。

 だから自分で修理するのを前提に考えていた。自分で直せば、その感覚を元に走行中の異常や異音を注意深く観察できて、次にどこが壊れそうなのか目星を付けられる。海外の自転車旅では愛車の状態をしっかりと把握しておくことが大切だ。

自転車のトラブルは世界中どこでも変わらない

 次にリペアパーツ。常に持っていたのはパンク修理セット、チューブ2~3本、ブレーキシュー、ブレーキ・シフトワイヤーとチェーンのコネクティングピン、スポークとニップルだ。そのほかタイヤも予備で持つことが多かった。交換の時期が近くなってくると、チェーンやスプロケットなども持ち運んだ。

 僕は心配性なので大量の工具とリペアパーツ用意したけど、そのおかげで消耗品のブレーキシュー、ワイヤー、チェーン、スプロケットは定期的に交換できたので、走行中のトラブルはなかった。その甲斐あってか実際に荒野の走行中に起こった自転車のトラブルは、パンク、スポーク折れ、フロントフォーク破損くらいだった。世界中どこを走っていても、実際に起こるトラブルは日本で走るのとさほど変わりない。

突然変速がトップギヤに落ちた。Wレバーが緩み破損寸前だったけど、なんとか位置調整して元に戻せた Photo: Gaku HIRUMA

 ちなみに出発当時はアラヤの完組ホイールを使っていた。スポークは何本も折れて交換したが、サイクリストの間でよく聞くようなリム割れやハブのベアリング破損などはなかった。

 リムが割れると、たちまち走行不能に陥る。ツーリング自転車は重い荷物を載せるからか、リムに過度な負担がかかり、避けられないトラブルのひとつだった。トラブルの予防策としてリムのダメージが少ないディスクブレーキの車体を選ぶという選択肢がある。

 僕はブレーキ周りがある程度自由に調整可能なカンチブレーキの車体を使っていたから、フロントフォークが破損したとき、どうにか自走できたという経験があった。だから一時帰国で自転車を新調した際も、ディスクブレーキではなくカンチブレーキの車体を選んだ。

 フレームの破断やフロントフォークの破損、リム割れなど走行不能になるトラブルは非常に厄介だ。修理できる自転車屋やパーツを探したり取り寄せたりしなければならず、大幅に予定が狂う。そもそもビザの関係で滞在も限られる。下手をしたら一時帰国をしなければならないなんてことも考えられるトラブルだ。

 僕のフロントフォークが破損した際は、路上でフォークを引き抜き、自走できるくらいになるまでフロントフォークを曲げて修理した。曲がったフォークで走行するのは決しておすすめできないが、そのフォークで走るしかない環境だったので仕方がない。細心の注意を払いながらの走行になったが、旅を続けられたのが嬉しかった。

ボルトを踏んで車輪に巻き込んでしまったときの写真。激しくフロントフォークが曲がってしまった。スタートしたばかりのアメリカで一時帰国が頭をちらつき、泣きそうになった Photo: Gaku HIRUMA

 その後、ケルビムに同じフォークの作成をお願いして、指定した場所まで送ってもらい、交換して事なきを得た。自転車のフレームが折れたときは、バスに乗って町まで行き、現地で溶接して自走可能になったが、その後の行程を考え自転車を新調しようと一時帰国を決めた。

曲がったフロントフォークを引き抜ぬいたはいいが、曲げを直すための専用工具がないので、ひたすら体重をかけて直すしかなかった Photo: Gaku HIRUMA

 走行不能なトラブルを考えていてもキリが無いので、よくあるトラブルにだけ目を向け、工具を極端に減らし、後は町の自転車店でメンテナンスやパーツの交換をしてもらうと割り切れば、工具は必要最小限でも走行可能だ。

不用品はFree Boxに入れる

 ただ全く不要だと思った道具もあったので、それはすぐにホステルのFree Boxに入れた。大体のホステルにはFree Boxというのが設置されていて、不要になった物を入れておくと、自由に必要な人が持って行っていいのだ。そのおかげで心置きなく捨てられた。箱の中には使いきれなかった食材や調味料などが入っているのだけど、僕は旅関連のアイテムを入れて必要な人に使ってもらった。

 箱に入れたものの中で最も必要なかったのが、折りたたみ式のメンテナンススタンドだ。何故こんなものを持って行ったのだろうか今では不思議に感じるけど、恐らく当時はシフトの調整などをしようと思い、バッグの片隅に忍ばせていたのだろう。折りたたみ式だけど自転車を支えるだけの強度を保つため、かなり重量のあるものだった。

 また旅の序盤は世界の旅を続けられるのか不安で、いつでも輪行できるようにと厚手の輪行バックも持ち運んだが、重たくかさばるので早々に手放した。

 旅をするのに自転車の知識や修理技術は覚えていたほうがいいが、世界を走るサイクリストの中には、「旅に出たときはパンク修理くらいしかしたことがなかったよ」という人も結構いる。だから旅しながらそういった知識を学ぶのもいいと思う。

 旅をしていると自分の自転車のトラブルの多い場所が嫌でも分かってくる。それに応じて現地で修理工程を教えてもらい、工具を買い足していくのもひとつの手だ。どちらにせよ、海外ツーリングに自転車トラブルはつきもの。そのトラブルをどう乗り切ったかという経験が、その後の走行の大きな励みになる。

サンダルで走るサイクリストもいる

 不要ではないが、かさばるものの代表格で靴がある。人によってはサンダルひとつで旅をする人もいるらしい。僕は靴も持ちたい派だったので、メインで使う以外の靴を持つかどうかが問題だった。寒い地域を走る場合は持っていたほうがいいが、暑い地域だとかさばるだけの無用の長物になってしまう。

 そんなメリットデメリットを考えた結果、僕は旅の後半、つま先を保護できるサンダルをメインで使っていた。雨の日も気にせず履けて宿のシャワーにそのまま入ってジャブジャブ洗えるので便利だ。多少の寒さであればサンダルに靴下を履くだけで走れるから非常に使い勝手が良かった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生のときに自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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