ツール・ド・フランス2020 第15ステージポガチャルが超級山岳グラン・コロンビエ征服 ベルナルは大きく遅れ総合連覇厳しく

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 熱戦が続いているツール・ド・フランス2020の第15ステージが、現地時間9月13日に実施された。超級山岳グラン・コロンビエの頂上にフィニッシュする高難度の1日は、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)が勝利。第9ステージに続く、今大会2勝目を挙げた。個人総合首位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)も激しくステージ優勝を争って、同タイムの2位に入りマイヨジョーヌを守っている。一方で、前回覇者のエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は大きく遅れ、大会2連覇は厳しい状況となった。

ツール・ド・フランス2020第15ステージ、超級山岳グラン・コロンビエ頂上フィニッシュをタデイ・ポガチャルが制した Photo: Yuzuru SUNADA

リーダーチームのユンボ・ヴィスマが主導権

 大会第2週は、フランス中央部を西から東へと横断するように進んできたプロトン。その締めくくりとなる1日が、リヨンからグラン・コロンビエまでの174.5kmの山岳ステージ。スタートから中盤までは平坦が続くが、中間地点を越えてからジュラ山脈の山々へと入っていく。モンテ・デ・ラ・セル・ド・フロマンタル(登坂距離11.1km、平均勾配8.1%)、コル・ド・ラ・ビッシュ(6.9km、8.9%)と2つの1級山岳を立て続けに上ると、いったん下って超級山岳グラン・コロンビエへ。頂上のフィニッシュまでは17.4km、平均勾配は7.1%だが断続的に10%を超える急勾配が待ち受ける。

 まだ先は長く、このステージでマイヨジョーヌ争いの形成が完全に固まることはないが、大きく遅れるようだとそれは上位戦線からの脱落を意味する。第2週の最後にふさわしい、マイヨジョーヌへの挑戦権をかけた大きな関門と言える1日だ。

リアルスタート直後から激しいアタックの応酬となった ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)のファーストアタックで幕を開けたレースは、簡単に逃げ狙いのアタックが容認されることはなく、しばし活発な出入りが続く。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が一時的に独走する場面や、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の動きにサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が追随してポイント賞争いの2人が先行するといった局面も見られる。ただ、いずれもメイン集団へと引き戻されている。この間、集団前方でバランスを崩したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)に接触したセルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)が激しく地面へと落とされるクラッシュ。一度はレースに戻ったが、すぐにリタイアしている。

リーダーチームのユンボ・ヴィスマがメイン集団をコントロール。平坦区間はトニー・マルティンが長く牽引した ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 慌ただしい状況にストップがかかったのは、30kmを迎えようかというタイミング。8人の先行が決まると、メイン集団はリーダーチームのユンボ・ヴィスマがコントロールを開始。先頭の8人との差を調整しながら、距離を減らしていった。

 58km地点に設けられた中間スプリントポイントでは、先行メンバーでのスプリントを制したマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)が1位通過。3分5秒後にやってきたメイン集団は、人数をかけたリードアウトを奏功させたベネットが先頭通過し全体の9番手。ドゥクーニンク・クイックステップ勢が前方を占めたこともあって、ライバルのサガンは11番手での通過に終わる。これでベネットは、2ポイントながらマイヨヴェール争いでリードを広げることに成功している。

山岳に入るまでは8人がレースをリード。先頭に立っているのはマッテオ・トレンティン Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳区間へ向かっては、先頭グループが集団に対して4分以上のリードを確保。モンテ・デ・ラ・セル・ド・フロマンタルの上りが始まると、シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)が仕掛けて人数の絞り込みを狙う。その後ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)に先頭が代わり、そのまま頂上を1位通過した。

 ただ、エラダが先行する時間はそう長く続かない。下りでミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング)がトップに立ち、コル・ド・ラ・ビッシュの登坂へと突入。数十秒差で追っていたピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)が登坂力を生かしてゴグルに合流。ロランは頂上を1位通過後、ゴグルとエラダが再合流を果たしたが、続く長いダウンヒルでエラダが脱落。下りを終えたところで先頭にはロランとゴグルの2人となった。

 依然ユンボ・ヴィスマがコントロールを続けるメイン集団は、先頭グループから脱落した選手たちを拾いながら、前の2人とのタイム差を縮めていく。残り20kmでその差は2分。集団が優勢な形で、勝負どころのグラン・コロンビエの上りを迎えた。

フィニッシュ前150m 一発で勝負を決めたポガチャル

 グラン・コロンビエを上り始めてすぐに、先頭ではロランがゴグルを引き離して独走に持ち込む。だが、この時点で集団との差は約1分。逃げ切るには厳しい情勢だ。

 徐々に勝負へのムードが高まるメイン集団に衝撃的な事態が発生したのは残り13km。個人総合5位につけるナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が後方へと下がっていく。その直後、今度はベルナルがペースダウン。みるみるうちに集団との差は広がっていき、アシスト陣の力を借りながら前を目指す格好に。

マイヨジョーヌのプリモシュ・ログリッチを擁するユンボ・ヴィスマが終始メイン集団を支配した Photo: Yuzuru SUNADA

 かたや、ユンボ・ヴィスマの主導権が揺るがないメイン集団は、ワウト・ファンアールト(ベルギー)のペーシングがはまり、キンタナとベルナルを脱落させる。先頭を走っていたロランをキャッチし、残り8kmとなったところで生き残ったのは15人。残り7kmではアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がアタックに出たが、1kmほど進んだところで集団へと戻る。それからは、しばしの膠着状態が続いた。

 終盤に入っても数的優位が続くユンボ・ヴィスマは、ファンアールト、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)から継いだトム・デュムラン(オランダ)が長く牽引。精鋭グループは12人として残り1kmのフラムルージュを過ぎた。

 残り600m、マイヨジョーヌが自ら緊縛した状況を動かす。ログリッチが計ったようにアタックすると、真っ先に反応したのは新人賞のマイヨブランを着るポガチャル。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)も続く。ここでログリッチのケアに入ったセップ・クス(アメリカ)が牽引を引き受け、再度フィニッシュへ展開を構築する。

 残り400mを切って勾配が厳しい区間でポートがアタック。ここはログリッチがすぐにチェックに動き、ポガチャル、ロペスも追随。そして、残り150mとなったところで勝負に出たのはポガチャル。一気のアタックを追うことができたのはログリッチのみ。そのログリッチも、フィニッシュ前のわずかなコーナーでイン側を押さえていたにも関わらずポガチャルの前に出ることはできない。最後はパワーで押し切ったマイヨブランが完勝ともいえるステージ優勝を決めた。

 同タイムの2位にはログリッチ、5秒差の3位にポート、その3秒後にロペスと続いた。

ステージ優勝をかけた上りスプリント。タデイ・ポガチャル(右)が先頭を譲ることなフィニッシュへと飛び込んだ Photo: Yuzuru SUNADA

ポガチャル「スプリントでのステージ優勝に賭けた」

 第9ステージに続く今大会2勝目を挙げたポガチャル。ともに週の最終日をモノにしている。勝因としては「最後まで我慢して、フィニッシュへのスプリントに賭けたこと」を挙げる。全体を通して終始ユンボ・ヴィスマがコントロールしていたこともあり、「上りの途中でアタックするといった攻撃は無意味だと思った」といい、レースを進めていく中でスプリントでのステージ優勝狙いに切り替えたという。ログリッチとの総合タイム差を4秒縮めたが、「引き離すのは難しかった」とレースリーダーの強さを認める。ベルナルが脱落したことに絡めて、「私やログリッチもどこかで必ず苦しい局面がやってくる」とも述べて、先々の戦いへ気を引き締めた。

 ログリッチはステージ優勝こそ逃したものの、マイヨジョーヌはがっちりキープ。最終局面でのポガチャルとの勝負は「勝つ力が残っていなかった。彼とは友人だが、勝利を譲るつもりはない。今日の結果は少しがっかりだ」と悔しさをにじませた。それでも、週を通して個人総合首位の座は守り抜いて第3週へ。「まだ何も終わっていない。よい状況にあることは確かだが、ツールの終わりはまだまだ遠い」として、最後まで戦い抜くことを宣言した。

マイヨジョーヌを守って第2週を終えたプリモシュ・ログリッチ ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 第2週を終えて、スロベニア勢がワン・ツーに立つ。首位のログリッチとポガチャルとは、総合タイム差40秒。個人総合3位にはリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)が浮上し、タイム差は1分34秒差。同4位はロペスで1分45秒差。ここまでがログリッチとの差を2分以内としている選手たちだ。

力なくフィニッシュへ向かうエガン・ベルナル。総合争いからの白旗を宣言した Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、この日まさかの苦戦を強いられたベルナルは、歓喜のポガチャルから7分20秒遅れてフィニッシュラインを通過。個人総合でもログリッチから8分25秒差の13位までランクダウン。事実上、大会2連覇は厳しいものに。レース後ミックスゾーンに現れ、「1つ目の上りから苦しかった」と不調だったことを打ち明け、「総合表彰台は難しいと思う」と続けて上位戦線からの離脱を認めた。

 9月14日は今大会2回目の休息日。出場チームは前回の休み同様にPCR検査やオンラインでのメディア対応などを行いながら、来る第3週への準備を進める。15日に行われる第16ステージは、ラ・トゥール=デュ=パンからヴィラール=ド=ランまでの164km。フィニッシュ前20.5kmで頂上通過となる1級山岳モンテ・ド・サン=ニジエ=デュ=ムシェロット(11.1km、6.5%)が最重要ポイントとなりそう。最後は、3級山岳コート2000を上ってレースを終える。

第15ステージ結果
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 4時間34分13秒
2 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +0秒
3 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +5秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +8秒
5 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +15秒
6 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)
7 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)
8 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
9 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +18秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +24秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 65時間37分7秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +40秒
3 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +1分34秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分45秒
5 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +2分3秒
6 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +2分13秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +2分16秒
8 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +3分15秒
9 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) +5分8秒
10 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +5分12秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 269 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 224 pts
3 マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) 189 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 36 pts
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 34 pts
3 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 33 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 65時間37分47秒
2 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +2分35秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +7分45秒

チーム総合
1 モビスター チーム 97時間4分16秒
2 ユンボ・ヴィスマ +14分50秒
3 EFプロサイクリング +26分15秒


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