ツール・ド・フランス2020 第13ステージ逃げメンバーでの急坂勝負をマルティネスが制す 総合首位ログリッチはリード拡大に成功

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2020は、現地時間9月11日に第13ステージを実施。大会第2週で初めてとなる山岳ステージは、逃げメンバーによる優勝争いとなり、最後はダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)が急坂を制してツール初勝利を挙げた。総合上位陣にも変動があり、マイヨジョーヌを着る首位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がリードを広げることに成功。並んでフィニッシュしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)が個人総合2位に浮上している。

ツール・ド・フランス2020第13ステージ、逃げメンバーによるステージ優勝争いをダニエル・マルティネスが制した Photo: Pool / PN / SUNADA

大人数の逃げが最大10分超のリード

 第2週に入ってフランス中部を進んでいるツールは、このステージでは中央山塊へと入っていく。シャテル・ギヨンからピュイ・マリーまでの191.5kmは、北から南に、山々を縦に切るようにして進むルート。序盤から最後まで、1級から3級までのカテゴリー山岳が次々と現れる。特にハードなのが、フィニッシュ前15kmに詰め込まれた、2級山岳コル・ド・ナロンヌ(登坂距離3.8km、平均勾配9.1%)、フィニッシュ地ピュイ・マリーを目指す1級山岳パ・ド・ペロル(5.4km、8.1%)の2つ。どちらも10%級の急坂が続き、フィニッシュ前は15%に達する部分も。大会中盤戦のヤマ場と見る向きも強い1日となった。

序盤に形成された5人の逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 緊張感とともに始まったレースは、リアルスタートから出入りの連続。アタックの散発から状況が落ち着くまでしばしの時間を要した。メンバーを入れ替えながら、逃げのグループが固まったのは10km過ぎ。山岳賞のマイヨアポワを着るブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)、ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が先行を開始した。

 その後もメイン集団から1人、また1人と飛び出しをはかる。やがて大人数の追走グループが形成され、その中にはポイント賞争いで再浮上を狙うペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も加わる。メイン集団も含め、すべてのパックでアクティブな状況が続いたこともあり、サガンは集団へと戻ることになったが、10人以上に膨らんだ2番手グループが先頭へと少しずつ迫っていった。

 この間、先頭ではコヌフロワに代わってマルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム)がジョイン。36km地点に設けられた1級山岳コル・ド・サセットはゲシュケが1位通過。メイン集団はユンボ・ヴィスマがコントロールを開始し落ち着きを見せ始めるが、追走メンバーはまだまだ活発。この日2つ目のカテゴリー山岳、3級のコル・ド・ゲリーの上りでついに先頭へと合流し、12人が逃げる状況になった。

先頭グループをジュリアン・アラフィリップが牽引する Photo: Yuzuru SUNADA

 コル・ド・ゲリーはピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)が、続く2級山岳モンテ・ド・ラ・ステルでは先頭グループから一時的に抜け出したヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマ・エフデジ)がそれぞれ1位通過。その後の下りで他の逃げメンバーが再度合流して大人数の先頭グループに戻ると、111km地点に置かれた中間スプリントポイントへ。ここはアラフィリップがトップをとったほか、前を走る選手たちが上位を締めた。

 その頃、メイン集団ではクラッシュが発生。個人総合4位につけるロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が地面に叩きつけられたほか、同5位のナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)も足止め。両者は再スタートを切って集団へと復帰したが、同13位につけていたバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)はレースに戻ることができずリタイアとなった。

 それからはメイン集団がタイム差を意図的に広げたこともあり、残り40kmを前にしたところで最大の10分45秒に。ステージ優勝争いは先頭を走る選手たちから出ることが色濃くなってきた。

マルティネスがケムナとの急坂勝負をモノに

 レースが後半に入ると、先頭グループでは人数の絞り込みを狙った動きがみられるようになる。このステージ5つ目の山岳である3級のコート・ド・アングラール・ド・サレへ向かって、ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFプロサイクリング)がアタック。しばらくしてマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も飛び出し、ポーレスに追いつく。勢いづいた2人は後続との差を広げて、終盤へ向かう。

独走に持ち込んだマキシミリアン・シャフマン ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 重要な2つの上りを前に、先頭ではシャフマンがポーレスを引き離して独走を開始。そのままコル・ド・ナロンヌに突入すると、後方ではマルティネス、ソレル、レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が追撃態勢を高める。直後にソレルが遅れたが、マルティネスとケムナはポーレスもパスしてシャフマンへと少しずつ迫る。

 シャフマンは単独トップのまま最後の上りであるパ・ド・ペロルへと入ったが、追走2人のペースが上回り、フィニッシュまで残り1.5kmでついに追いつく。マルティネスをピッタリマークしていたケムナがすかさずアタックするも、マルティネスが素早いチェック。シャフマンも含めた3人で残り1kmのフラムルージュを過ぎた。

 追走段階からほぼ先頭固定のまま上り続けるマルティネス。残り700mでシャフマンを突き放すと、その直後のケムナのアタックにもしっかり対処。カウンターアタックは決まらなかったが、ケムナとのマッチアップに向けタイミングを計った。

フィニッシュ前の急坂で勝負を決めたダニエル・マルティネス Photo: Pool / PN / SUNADA

 そして最後の150m。厳しい上りを利用してケムナが先に仕掛けるが、マルティネスは逃がさない。フィニッシュラインまで100mを切ったところで再び前へ出ると、ケムナは戦意喪失。マルティネスがツールでは初めてとなるステージ優勝を決めた。

 前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは個人総合優勝を果たし、注目株の1人となっていたマルティネス。今大会は総合エースのリゴベルト・ウラン(コロンビア)のアシストに回っているが、この逃げきりで改めて実力を証明した。レース後の記者からの質問に対して「本当に満足している。2歳の誕生日が間近の息子への最高のプレゼントになった」と喜んだ。レースを振り返り、「シャフマンに追いつくのは難しいと思っていて、最後の上りは2位争いを意識していた。一緒に上っていたケムナには勝つ自信があった」と述べ、自身の予想を上回っての優勝争いとなってもしっかり勝ちきったことに胸を張った。

ログリッチとポガチャルのスロベニア勢が協調 ライバルからタイムを奪う

 逃げ切りを容認したメイン集団だが、終盤にかけて総合上位陣が動いた。

総合リード拡大に向けて動いたプリモシュ・ログリッチ(左)とタデイ・ポガチャル Photo: Yuzuru SUNADA

 先頭とのタイム差が10分を超えると、イネオス・グレナディアーズが牽引を担って集団のペースを上げていく。コル・ド・ナロンヌに入ってユンボ・ヴィスマが主導権を奪い返すと、個人総合3位のギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、同4位バルデが遅れ始める。これを見たユンボ・ヴィスマはトム・デュムラン(オランダ)を前に上げて一気にスピードアップ。頂上をクリアする頃には総合上位陣を中心に13人まで絞られる。

 続くパ・ド・ペロルを迎えると、ポガチャルが図ったようにアタック。これに合わせられたのはログリッチただ1人。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)がパックを組んで2人を追うが、個人総合2位につけていたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がこの動きに対応できず、引き離されてしまった。

 ログリッチとポガチャルのスロベニア勢2人は協調体制に入り、先頭交代をしながら後続との差を広げていく。上手く最重要局面を乗り切った2人は並んでフィニッシュラインを通過。ポートとランダに対して13秒、ロペスに18秒、ベルナルには38秒を奪うことに成功した。

ログリッチ「これはスロベニアデーだ」

 ライバルたちから総合リードを拡大し、よい状況を作り出したマイヨジョーヌのログリッチ。ポガチャルとそろって先着し、「スロベニアデーになったと感じている」と第一声。特に上りが厳しかったフィニッシュ前の2kmについては、「上る前にはどれだけハードなものかと感じずにはいられなかった。ただ上手く走り切ることができて満足している」とコメント。先の見通しが明るくなったのでは、との問いには「まだ先は長い。次の週になれば、他の選手たちが違ったシナリオを作り出してくるはずだ。ただ、いまはチームと自分自身に集中したい」と気を引き締めた。

総合リードを広げることに成功したマイヨジョーヌのプリモシュ・ログリッチ ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 ログリッチと共闘の形になったポガチャルも、この好走で個人総合2位に浮上。新人賞のマイヨブランも奪取し、「プリモシュとは上りでよい勝負ができた。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャを思い出したよ。最後の2kmはいつものような友人ではいられなかったね」と緊迫した状況を説明。ログリッチ以外の選手からタイムを奪ったことは非常によかったとし、チームメートの働きにも感謝。そして、「次の週にはもっと攻撃するつもりだ」とさらなる向上を宣言した。

個人総合2位に浮上したタデイ・ポガチャル。新人賞のマイヨブランも奪取した ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 バルデとマルタンが遅れたこともあり、個人総合順位は大きく変化。ログリッチ、ポガチャルに続くのは、この日苦戦したベルナル。ウランが4位に浮上し、キンタナが5位、ロペスが6位に位置。ベルナルまでが総合タイム差1分以内、上位8選手が2分以内につけている。

 9月12日に行われる第14ステージは、クレルモン・フェランからリヨンまでの194km。主催者発表では平坦ステージにカテゴライズされるが、カテゴリー山岳が多く、スプリンターが最後まで残るには難しいか。リヨン市街地を前に待つ2つの4級山岳も急ぐ選手たちの行く手に待ったをかけそう。変化の多いコースはあらゆる展開が考えられる。

第13ステージ結果
1 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) 5時間1分47秒
2 レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +4秒
3 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +51秒
4 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマ・エフデジ) +1分33秒
5 ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) +1分42秒
6 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) +1分53秒
7 シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) +2分35秒
8 マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム) +2分43秒
9 ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) +3分18秒
10 ダビ・デラクルス(スペイン、UAE・チームエミレーツ) +3分52秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 56時間34分35秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +44秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +59秒
4 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング) +1分10秒
5 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) +1分12秒
6 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分31秒
7 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分42秒
8 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +1分55秒
9 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +2分6秒
10 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +2分54秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 252 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 186 pts
3 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) 162 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 36 pts
2 ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 31 pts
3 マルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ) 31 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 56時間35分19秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +15秒
3 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +2分10秒

チーム総合
1 EFプロサイクリング 169時間47分21秒
2 モビスター チーム +3分0秒
3 ユンボ・ヴィスマ +23分2秒


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