ツール・ド・フランス2020 第12ステージヒルシが“3度目の正直”で逃げ切り勝利 マイヨジョーヌはログリッチが堅守

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 中盤戦に入っているツール・ド・フランス2020は、現地時間9月10日に第12ステージを実施し、細かなアップダウンが連続する丘陵ステージは、レース後半で独走に持ち込んだマルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ)がステージ優勝した。今大会は再三逃げ切りのチャンスを築いていたが、“3度目の正直”でついに勝利をつかんだ。この日は上位を逃げメンバーが押さえたが、総合勢はすべてメイン集団でレースを完了。首位のマイヨジョーヌはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が守っている。

ツール・ド・フランス2020第12ステージ、最後の約30kmを独走したマルク・ヒルシが勝利を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

逃げ狙いのアタック多発 6人が先行も大きなリードは奪えず

 フランス中部を内陸に向かって進んでいる大会第2週。前日までの2日間は平坦ステージが続いたが、ここからは登坂力が試される日々が続いていく。第12ステージは、ショヴィニーからサラン・コレーズまでの218km。今大会最長のレース距離で、中盤以降に細かなアップダウンの連続となることもあって、主催者発表では丘陵ステージに位置付けられる。カテゴリー山岳は4つで、いずれも登坂距離は長くないものの、10%を超える急勾配のポイントもある。大方の予想では、逃げた選手が有利になるとの見方だ。

レースは序盤からハイペースで進行した ©︎ A.S.O./Alex Broadway

 そうなると、数少ないチャンスに賭けたい選手たちが次々と動く。スタート以降出入りが激しく、10km地点を前にイマノル・エルビティ(スペイン、モビスター チーム)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)、ニルス・ポリッツ(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)、マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)の4人が先行するが、後続も活発でタイム差がなかなか広がらない。さらには、マチュー・ブルゴドー(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が追走を開始。35km地点を迎えたところでボーラ・ハンスグローエがメイン集団のコントロールを始め、ようやく慌ただしさが収束することとなる。

 それでも、逃げの4人が大きくリードを奪うことは許されない。集団はおおよそ2分の差でコントロールしながら距離を減らしていく。レース最初の1時間は、51.4kmというハイペースでの進行となった。

 この間に、51km地点に設定された中間スプリントポイントを通過し、ポリッツが1位通過。メイン集団は2分遅れで到達し、ポイント賞首位のサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭をとり全体の7位通過としている。

 その後、前の4人を追いかけていたブルゴドーとアスグリーンが合流し、先頭は6選手に。中盤に入っても集団とのタイム差約2分の状況は変わらず。中間地点前後に置かれた2つの4級山岳は、ともにブルゴドーが1位で通過した。

ヒルシが最後の約30kmを独走に持ち込み勝利

 レース半ばでは、ツールで8度総合表彰台に立ちながら、一度もマイヨジョーヌを着ることのなかった名選手レイモン・プリドールが生涯を過ごしたサン・レオナール・ド・ノブラを通過。歓迎ムードの中をプロトンは進んだ。

逃げグループから飛び出したカスパー・アスグリーン(右)とイマノル・エルヴィティ Photo: Yuzuru SUNADA

 タイミングを同じくして、CCCチームやボーラ・ハンスグローエがメイン集団のリズムを上げ、先頭グループとのタイムギャップを減らしていく。フィニッシュまで65kmのところでその差は1分。そして25秒まで縮まったところで、この状況を嫌ったアスグリーンが先頭グループからアタックした。

 これにエルビティが加わり、2人逃げになったところでメイン集団からも前方をうかがう動きが本格化。残り40kmを前にティシュ・ベノート(ベルギー)とセーアン・クラーウアナスン(デンマーク)のチーム サンウェブ勢。さらにはマルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム)も追いつき、先頭をゆくメンバーが入れ替わる。

 この状況を集団が静観しているとみるや、ヒルシ、マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)も飛び出して、前の3人に合流。その後方でも追走グループが形成されるなど、めまぐるしく展開していった。

2級山岳の上りでアタックしたマルク・ヒルシ ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 決定的なシーンは、この日最後のカテゴリー山岳、2級のシュク・オゥ・メイの上りでやってきた。頂上まで2kmでソレルがまずアタック。一瞬他を引き離したが、これを冷静に対処したヒルシがカウンターで反撃。急坂区間での強烈なアタックに誰も続くことができない。そのまま頂上も単独で通過し、独走へと持ち込んだ。

 その後ろでは、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がメイン集団から飛び出し、ヒルシを追うグループに合流。さらにその後方、メイン集団はリーダーチームのユンボ・ヴィスマが前を固めて統率を始める。ステージ優勝は前を急ぐ選手たちの争いとなった。

 独走に入ってからは下りを快調に飛ばし、上りもペースを落とすことなくこなしていったヒルシ。後ろでは、2番手パックだったシャフマンとソレルに、アラフィリップたちのグループがジョイン。人数を増やすも、ここに入ったクラーウアナスンやニコラス・ロッシュ(アイルランド)のサンウェブ勢が追撃の芽を効果的に摘み取り、ヒルシの独走をお膳立て。

 フィニッシュまでの約30kmを一人で走りぬいたヒルシは、最後まで勢いが衰えず。後続に十分なリードを得て、鮮やかな逃げ切り勝利を決めてみせた。

3度目の正直でツール初勝利を挙げたマルク・ヒルシ Photo: Yuzuru SUNADA

ヒルシ「プロ初勝利はこれ以外考えられなかった」

 大会開幕以降、第2ステージではアラフィリップらとの激闘、第9ステージでは約90km独走しながら逃げ切りを逃すなど、勝利に迫りながらあと一歩のところで逃し続けていたヒルシ。“3度目の正直”を成就させ、レース直後は涙した。

ステージ優勝のポディウムに上がったマルク・ヒルシ Photo: Yuzuru SUNADA

 記者会見でも、「胸がいっぱいで、喜びをどう表したらよいか思い浮かばない」と感激の面持ち。改めて気持ちを問われると、「最後の最後まで勝てるとは思っていなかった。ただ、プロ初勝利を手にするにはこの方法以外は考えられなかった」とコメント。勝利目前で敗れた2回のレースが悔しさの一方で自信をもたらしたともいい、「今日トライしてみれば勝てるかもしれない」という思いもあったと明かした。

 結果的に、レース後半に仕掛けた選手たちがステージ上位を占めている。2位には残り数キロでアタックしたピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)、3位はクラーウアナスンが確保。たびたび追撃姿勢を見せていたアラフィリップは、最終局面を前にチェーントラブルで後退し、11位に終わっている。

メイン集団でレースを進めたプリモシュ・ログリッチ。マイヨジョーヌをキープした Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、メイン集団はヒルシのフィニッシュから2分30秒後にやってきた。ユンボ・ヴィスマが完全にまとめるとともに、ポイント狙いでスプリントしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭に立ち、ステージ13位としている。

 このステージを終えて、4賞に変動はなし。マイヨジョーヌはログリッチ、マイヨヴェールはベネット、山岳賞のマイヨアポワはブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、新人賞のマイヨブランはエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)となっている。

マイヨジョーヌを守るプリモシュ・ログリッチ。続く第13ステージに集中力を高めている Photo: Yuzuru SUNADA

 9月11日に行われる第13ステージは、シャテル・ギヨンからピュイ・マリーまでの191.5km。中央山塊が舞台となる1日は、1級から3級までのカテゴリー山岳へと次々とトライする。なかでも、10%前後の急坂が続く2級山岳コル・ド・ナロンヌと、頂上フィニッシュとなる1級山岳ピュイ・マリーが最後の15kmに凝縮される。15%の急勾配となるフィニッシュ前の争いも注目される。もちろん山岳ステージにカテゴライズされ、マイヨジョーヌ候補たちから何らかのアクションが見られるはず。

 中盤戦のヤマ場を控え、マイヨジョーヌのログリッチは「新しいチャレンジの日」、個人総合2位のベルナルは「フィニッシュ前の急坂で(選手間に)違いが現れるかもしれない」と述べ、有力選手たちが集中力を高めている様子がうかがえる。

第12ステージ結果
1 マルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ) 5時間8分49秒
2 ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) +47秒
3 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チーム サンウェブ) +52秒
4 カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
5 ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
6 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
7 ユーゴ・ウル(カナダ、アスタナ プロチーム)
8 セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマ・エフデジ)
9 ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) +56秒
10 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チーム サンウェブ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 51時間26分43秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +21秒
3 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) +28秒
4 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +30秒
5 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) +32秒
6 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)
7 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +44秒
8 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分2秒
9 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分15秒
10 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +1分42秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 252 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 186 pts
3 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) 162 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 36 pts
2 ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 31 pts
3 マルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ) 31 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 51時間27分4秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +23秒
3 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +1分41秒

チーム総合
1 モビスター チーム 154時間26分36秒
2 トレック・セガフレード +4分18秒
3 EFプロサイクリング +5分37秒


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