大会ディレクターのプリュドム氏はコロナ陽性で一時離脱試行錯誤のツール・ド・フランス休息日 PCR検査やプレス対応に見る新型コロナの影響

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 熱戦展開中のツール・ド・フランス2020は第2週の戦いを進めている。フランスでも猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの影響を大きく受けながらも、選手・チームスタッフ・大会関係者みんなが強い意志で「フランス一周の旅」を継続する。しかし、未曽有のパンデミック下でのイベントとあり、日々試行錯誤の連続。レース運営のみならず、休息日の過ごし方もこれまでとは違ったものとなった。そこで、休息日を通じて感じたイレギュラーがどんなところにあるかまとめてみたい。きっと、大会に携わるすべての人が「何がベストか」を探りながら毎日奮闘していることを分かっていただけると思う。

パンデミック下でのツール・ド・フランスは試行錯誤の日々。休息日も例年とは違った1日を過ごした(写真はイメージ) ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

大会ディレクターのプリュドム氏がまさかの新型コロナ感染

 今大会の新型コロナ対策の中でも、特に世界規模で注目されているのが休息日でのPCR検査の実施だ。レギュレーションの詳細は「異例づくしのツール・ド・フランス2020 新型コロナ関連のレギュレーションまとめ」を参照されたい。

第1休息日に行なったPCR検査で選手からの新型コロナ陽性はゼロ。第2週は予定通りスタートを切った。写真は第10ステージのスタート地点でのひとコマ ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 このPCR検査は、主催者A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)や出場チーム、UCI(国際自転車競技連合)らの話し合いによって決まった「7日間以内で2選手の感染が判明した場合、そのチームを大会から除外する」とのルールに基づくもの。開幕後は休息日に選手・チームスタッフを対象に検査を実施し、陽性またはエラーの結果が出た場合は、該当者を対象に再検査を行い、それでも陽性となった場合は大会からの離脱となる。

 ツールにおけるPCR検査は、実施からおおよそ2時間程度で結果が出るとされ、再検査を含むすべての検査結果は遅くとも休息日翌日の朝には確定するという。今大会1回目の休息日だった9月7日に実施の検査は、翌8日の午前10時頃(現地時間)には判明するとの見方が広がっていた。

主催者A.S.O.による休息日PCR検査のリポート

 実際に、検査の結果は8日朝の時点で各チームに伝えられていたとみられる。大多数のチームは通常通りレース会場入りしたが、ドゥクーニンク・クイックステップだけが大幅に遅れる形に。現地メディアの報道では、一部チームスタッフの結果がエラーとなり、再検査の結果を待っていたとのこと。

 現地時間の午後に主催者発表があり、この2日間で検査を行った全841検体のうち、選手からの陽性反応はゼロであることが明らかになった。コフィディス、アージェードゥーゼール ラモンディアール、イネオス・グレナディアーズ、ミッチェルトン・スコットのチームスタッフからそれぞれ1人ずつ、大会のテクニカル(技術)スタッフから1人の陽性が分かり、それぞれ大会を離脱していることも示された。

毎日スタート地点での各種イベントに参加していたクリスティアン・プリュドム氏。新型コロナ感染が判明し一時的に大会を離脱した Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして最大のトピックとなったのは、大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の陽性発覚だ。ここ1カ月間で4回のテストを受けていたが、最新の検査で陽性が判明したという。開幕以降、“レースバブル”と称される選手やチーム関係者のグループには一切接触していないというが、「念のため」自身も検査を受けたところ、思いがけない結果が出たよう。

 プリュドム氏はこの先7日間、検疫期間に入るため、第10ステージから第16ステージまで大会を離脱すると発表。当面は、パリ~ニースで先頭車両に乗る役目を持つフランソワ・ルマルシャン氏が代役を務めることに。

 関連して、9月5日実施の第8ステージでプリュドム氏と一緒に先頭車両に乗っていた同国のジャン・カステックス首相も、これを受けて自主隔離に入ったという。近日中にPCR検査を受ける見通しだ。

 幸い出場選手に感染者がいないため、緊張感を増しつつもレースは進行していく。ただ何より、有観客での開催にこだわってきた大会トップが感染とは、何とも皮肉な話である。

オンラインならではの難しさ感じたプレスカンファレンス

 新型コロナ関連では、休息日に各チームが実施するプレスカンファレンス(記者会見)がオンラインで行われたことも、これまでとは大きく異なっている点だ。

ツール休息日恒例のプレスカンファレンスは、新型コロナ対策の一環として大多数のチームがオンライン形式で行った(写真はイメージ) ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 ツール休息日のプレスカンファレンスは、チームが宿泊するホテルにプレス(取材者)を招き、選手全員、またはエースクラスの選手と首脳陣らが記者会見に臨む。そこでは、前週の戦いの振り返りや、先に引かれるステージやレースの意気込み、展望を語る場で、筆者を含めジャーナリストにとっては選手たちの声を聞く貴重な機会だ。個人総合上位の選手のカンファレンスとあれば、世界各国のプレスが集まり、会見場に入りきらない場合もある。

 しかし、今年は選手やチームスタッフの感染予防を最大の要因として、対面式のカンファレンスは行わず、大多数のチームがオンラインで実施。

 従来の対面式以上に、オンラインになるといっそう重要になるのが、「どの言語で進行していくのか」という問題。リーダーチームのユンボ・ヴィスマの場合、基本は英語とオランダ語で行うとしていたが、マイヨジョーヌのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)のコメントを得ようと同国メディアが殺到。急遽スロベニア語のインタビューも実施することになった。

好調ユンボ・ヴィスマは休息日のメディア対応でプレス向けのインタビュー動画を配信した(写真は第10ステージ) ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 ツール出場チームの多くがオンライン会議システムの「ZOOM」を導入していたが、前述のユンボ・ヴィスマはチームで撮影したインタビュー動画の配信をもって公式の対応とするケースも。どちらの場合も、チーム側はプレスに対して事前に質問を送るよう依頼。質問を希望する者は聞きたい事柄を送るといったやり取りがなされていた。

 いまではパソコンやスマートフォンで活用できる便利なアプリやツールでチームとプレスが信頼関係を築くことができるが、オンラインならではの難しさも存在する。

 例えば、配信側のインターネット環境が充実していなかった場合、カンファレンス進行・運営に支障をきたすこともある。いくつかのチームはホテルのWi-Fiにゆだねていたとみられ、配信中に映像が乱れる場面があった。また、ユンボ・ヴィスマも当初予定していた動画公開時間にアップロードが間に合わず。チームとプレスが情報を共有できるメッセージアプリ上では、メディア数社からの催促メッセージが飛び交う事態となっていた。

大会に携わる人すべてが試行錯誤をしながらも、パリ・シャンゼリゼへの到達を目指してレースへと向き合っている ©︎ A.S.O./Thomas Maheux

 これまでにない状況下での大会に、レースに携わるすべての人々が知恵を出し合いながら日々の活動に勤しんでいる。感染しないことが大前提ではあるが、そうした中でも最良の方法を探り、トライ・アンド・エラーを重ねながら前へと進んでいく。一歩ずつではあるが、着々と、最終目的地のパリ・シャンゼリゼを目指している。

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