ツール・ド・フランス2020 第10ステージサム・ベネットが悲願のステージ初優勝 総合上位陣は安泰な1日に

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2020は第2週のレースが幕を開けた。その初日、第10ステージは平坦コースが舞台となり、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリント勝利。ツールでは初のステージ優勝を挙げた。この日は総合上位陣に大きな変動はなく、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨジョーヌを堅守している。

ツール・ド・フランス2020第10ステージ、スプリント勝負を制したのはサム・ベネット(中央) Photo: Pool / PN / SUNADA

島から島へ 潮の香りを感じながら進む1日

 今大会1回目の休息日を終え、中盤戦を迎える。新型コロナウイルス感染拡大により、ツールでは期間中のPCR検査が導入されている。選手やチームスタッフが主な対象となり、今回の検査では数チームのスタッフの陽性が判明したが、現時点までレースを進めてきた選手たちは全員陰性。レース活動は続いていくことになった。なお、大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が検査の結果陽性となり、大会を離脱して7日間の検疫に入ることが発表されている(関連する話題は別記事にて掲載を予定)。

リアルスタート直後のオレロン島橋を渡るプロトン Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 第2週の幕開けは、ル・シャトー=ドレロンからサン=マルタン=ド=レまでの168.5km。日本語では「オレロン島からレ島まで」となる1日は、行程を大部分を海を横目に進むことになる。レイアウト的にはほぼオールフラットだが、選手たちにとって注意が必要なのは風。その強さや向きによっては、集団を崩そうと動くチームもあるとみられていた。

 落車での負傷を抱えていたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)が未出走となり、165人がこの日のステージへ繰り出した。シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ)とミヒャエル・シェアー(CCCチーム)の両スイス人ライダーのアタックでオープニングを迎えると、2人は集団に対し少しずつリードを広げながら進んでいく。最初の1時間は49.3kmのハイペースを記録し、集団との差を最大で約2分とした。

 しかし、集団は進行方向によっては風を警戒しながらペースをコントロールしていたこともあり、前を行く2人との差が徐々に縮まっていく。リーダーチームのユンボ・ヴィスマがペーシングを担ったメイン集団は、77km地点でキュングとシェアーをキャッチ。それ以降、レースは一団のまま進んだ。

集団内のいたるところでクラッシュが発生 Photo: Yuzuru SUNADA

 集団内ではいくつかのクラッシュが発生。69km地点ではサム・ビューリー(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)がリタイア。100kmを過ぎたところでは、個人総合3位のギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、同7位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)が巻き込まれたが、こちらは問題なく集団へと復帰している。

 一見イージーに見えた展開が活性化したのは、129.5km地点に置かれた中間スプリントポイントが近づいたタイミング。上位通過が狙えるとあって、スプリンターがポイント争いに参戦。ここはマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)が1位通過。以下、ポイント賞首位のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ベネットと続いた。

 フィニッシュ地・レ島へと渡る直前からは、ユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズが集団のスピードアップを図る。風向きを計算に入れた動きを見せるが、大きなゆさぶりとまではいかない。この間、個人総合9位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)がクラッシュに巻き込まれるが、集団に無事復帰している。

残り300mで流れをつかんだベネットが勝利のスプリント

 レ島橋でキュングが再度のアタックを試みたが、これは決まらず。やがてフィニッシュ地のレ島へと上陸し、各チームがフィニッシュに向けた態勢を整えていく。ユンボ・ヴィスマやEFプロサイクリングが前方を固めながら進行。

チーム サンウェブのトレインが主導権を握る。牽引するのはティシュ・ベノート Photo: Yuzuru SUNADA

 スプリントフィニッシュが濃厚となった残り2kmからは、チーム サンウェブやNTTプロサイクリングが上がってくる。とくにチーム サンウェブは人数をそろえたトレインで主導権の確保に成功する。前線を押さえたまま、残り1kmを過ぎた。

 順調に見えたサンウェブトレインだったが、肝心のセース・ボル(オランダ)が後方に取り残されたまま。代わって残り300mから流れをつかんだのはドゥクーニンク・クイックステップだった。

 ミケル・モルコフ(デンマーク)が長い距離を引き続け、ベネットの発射タイミングを計る。そして残り100m、満を持してベネットを送り出した。

 トップスピードを維持するには十分な距離だったベネットは、すぐ後ろにつけていたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やサガンの追い上げをかわし、トップでフィニッシュラインへ通過。正式結果が出るまで不安げな表情を見せていたが、ステージ優勝が確定した瞬間にチームメートとの歓喜の輪ができあがった。

ステージ優勝をかけたスプリント。絶好のポジションから飛び出したサム・ベネット(中央)が最速でフィニッシュラインを駆けた Photo: Pool / BETTINI / SUNADA

涙のベネット「ツールで走ることを理解してくれたチームに感謝」

 3回目のツール出場で悲願のステージ優勝を果たしたベネット。昨年まで所属したボーラ・ハンスグローエではチーム事情もあり他のグランツールへ回ることも多かったが、ツールで走ることにこだわって加入した現チームで、ついに大きな仕事を成し遂げた。

悲願のステージ初優勝に涙したサム・ベネット Photo: Pool / BETTINI / SUNADA

 それもあり、優勝決定後しばらくは感情が爆発。レース後のインタビューも涙を流しながらのものとなった。その後、落ち着きを取り戻して記者会見に臨むと、「私がツールで走ることを理解してくれたチーム全体や(ゼネラルマネージャーの)パトリック・ルフェヴェル氏に心から感謝している。ツールでの勝利が夢だったが、(何度もチャンスを逸し)もうそれはかなわないと思っていた」と感慨深げ。最終局面を振り返り、「向かい風だった。ギリギリまで(加速タイミングを)待ったのだけれど、一瞬遅かったかもとは思った。でもチームのみんながすごいパフォーマンスだった。本当に勝ててよかった」と語った。

 そんなベネットのスプリントスピードは、最速で時速65キロまで達していたことが主催者によって発表されている。この勝利で、ポイント賞の首位にも再浮上。第11ステージは、マイヨヴェールを着用して臨む。

 このステージでは、個人総合上位陣は安泰。クラッシュに巻き込まれた選手たちも持ち直してメイン集団でレースを終えている。マイヨジョーヌはログリッチがキープ。2位以降の選手たちも総合タイム差に変化は起きていない。

 その他各賞は、山岳賞のマイヨアポワをブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、新人賞のマイヨブランをエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がそれぞれキープ。敢闘賞は複数回のアタックで魅せたキュングが選出されている。

マイヨジョーヌはプリモシュ・ログリッチが問題なく守っている ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

 9月9日の第11ステージは、シャトライヨン=プラージュからポアティエまでの167.5km。中盤の4級山岳以外は変化の少ない平坦ステージだ。セオリーではスプリント勝負だが、風が吹けば状況が変わってくるかもしれない。とはいえ、この日を終えると平坦は第19ステージまで待たねばならないため、スプリンターチームが全力で支配を試みると予想される。

第10ステージ結果
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 3時間35分22秒
2 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) +0秒
3 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
4 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
5 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
6 アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
7 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
8 ケース・ボル(オランダ、チーム サンウェブ)
9 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
10 ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 42時間15分23秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +21秒
3 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) +28秒
4 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +30秒
5 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) +32秒
6 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFプロサイクリング)
7 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +44秒
8 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分2秒
9 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分15秒
10 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) +1分42秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 196 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 175 pts
3 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) 129 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 36 pts
2 ナンズ・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 31 pts
3 マルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ) 26 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 42時間15分44秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +23秒
3 エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム) +1分41秒

チーム総合
1 モビスター チーム 26時間53分1秒
2 EFプロサイクリング +5分12秒
3 トレック・セガフレード +5分27秒


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