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昼間岳の地球走行録<62>世界一周旅のお供に選んだ自転車用品とキャンプグッズ 

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 僕は世界一周旅行にトータル7年間もかけた。途中の3年目で自転車のフレームが折れたので、1年の間一時帰国をしている。その一時帰国を挟んで再出発する際、自転車本体からアウトドア用品に至るまで、旅の装備を大きく変えた。実際に世界を走ってみて必要な装備、不必要な装備が見えてきたのもあるが、旅のスタイルそのものが変化したという理由もある。今回から数回にわたり、装備の変化について紹介する。

色褪せてボロボロになっていくほど、愛着の湧いた初代の自転車。ワッペンが地元の人とのコミュニケーションを円滑にしてくれた Photo: Gaku HIRUMA

世界一周の下準備

 まずは世界一周旅に出発するにあたり、下準備や下調べはどうしていたかについて。僕が自転車で世界一周をすると明確に決めたのは、旅に出発する8年ほど前の大学生の時だ。在学中に自転車で日本を縦断したり、海外をバックパック一つで旅してまわり、旅の感覚を徐々につかんでいった。

 その経験を元に、大学卒業後の4年で旅行資金を貯めようと決意した。運よく自転車店に就職できたので、自転車の知識と資金を一緒に得ることができた。1年で150万円の貯金を目標に4年間で約600万円弱を捻出し、旅行資金に充てた。

 当時は何にも縛られない自由な旅がしたいという理由で、企業へのスポンサー集めや、旅の記事の書かせてもらうような交渉は一切しないで出発した。今考えるともったいなかった。

自転車店勤務と日本縦断の経験から選ぶ

 旅の装備を選ぶ基準だが、当時はスマホもパソコンも持っていなかったので、ネットから装備を参考にするということはなく、自転車店勤務と日本を縦断したときの経験から選んだ。

 当時はツーリング自転車や装備に関する知識はぼぼないに等しかった。日本縦断をしたときは、キャリアとバックが付いたジャイアントのグレートジャーニーを購入したので、これまでの経験値が生かせたかというと、全くそうではなかった。

 しかし海外を走るなら、長距離向きで折れても溶接できるクロモリがいいことだけは知っていた。だから職場の近くにあって、クロモリのオーダーメイド自転車を手がけるケルビムに、ツーリング自転車の作成をお願いした。

 その当時の流行りはマウンテンバイクタイプのツーリング自転車だったけど、僕のイメージする旅の自転車は、昔ながらのランドナー風だ。ダブルレバーとドロップハンドル、カンチブレーキを装備したツーリング自転車で旅をしたいと安直に考えていた。

 ケルビムのツーリング車にキャリアは日東のキャンピー。自転車バッグは布バッグのオーストリッチを選んだ。どちらも日本を代表するツーリングアイテムだが、残念ながら強度や使い勝手は、過酷な海外を走り切るには少々頼りなかった、というのが正直な感想だ。

 キャンピーは過酷な道路状況と、ときに60kgほどになる荷物の荷重に耐えられず、何度も折れてしまった。旅のはじめは折れる度にショックを受けたけど、途中からパンクと同じくらいなにも思わなくなった。「次の町で溶接してもらおう」と考えるくらい日常茶飯事なトラブルだった。

キャリアはよく折れたが、すぐに溶接ができた Photo: Gaku HIRUMA

 海外では自動車がよく壊れるからか、小さな町でも自動車の修理工房のような店があり、持ち運べば簡単に溶接してくれる。ただし腕前も「とりあえず繋げたぜ」くらいのレベルが多かった。

 キャリアが折れてもその都度溶接すれば問題ないが、キャリアを止めているボルトが折れ、フレームのダボ穴に頭の取れたボルトの残骸が残ってしまうのは厄介だった。この時は予備のダボ穴に切り替えて走り出したが、再び折れてしまうのではという恐怖が常にあった。

キャリアとフレームを留めているボルトが荷重に耐えきれず折れてしまった。厄介なのはフレームのダボ穴にボルトの残骸が残ってしまうことだ Photo:Gaku HIRUMA

 自転車バックはオーストリッチのパニアバック特大を選んだ。1つ37Lの特大サイズで、左右セットで繋がっている。確かにこのほうがキャリアに負担は少ないかもしれないけれど、どうしてもキャリアの台座の横幅に合わず、左右のバランスを保つのが難しい構造だった。

 リアのパニアバッグの上にもうひとつバッグを積むのだが、左右のバランスが悪いと荷物が傾いて走行のストレスになる。見た目も素人さが丸出しになり、全く写真映えしない姿になるので、「これはどうにかしないと」とずっと思っていた。

 そして布バッグは防水バッグに比べて、やはりデメリットが多かった。レインカバーは付いてはいるが、長時間雨に打たれると中の装備まで水に濡れてびしょびしょになってしまう。バッグの中に防水バッグを入れて対応しなければならないなど、散々だった。

布バッグでは中身が濡れてしまうので、ほぼすべてのものをレジ袋に入れた。見た目も悪く手間も多かった Photo:Gaku HIRUMA
レインカバーをしても濡れてしまい、その都度中身を乾かす必要があった Photo: Gaku HIRUMA

 ただ、使えば使うほど味が出るのは布バッグのいいところだ。転んで穴があいても、強い日差しで色褪せていても気にならない。バッグに各地で買ったワッペンを貼り付けていると、言葉が通じない国の人たちでも、これがきっかけでコミュニケーションを取ることが多かった。

 色褪せたオーストリッチのバッグに継ぎ接ぎだらけのキャリアは、旅の自転車という趣たっぷりで、とても愛着が湧いた。これは旅をする上でのデメリットを大きく超えたメリットだと思う。ちなみにハンドルバッグは貴重品やカメラなどを入れようと思っていたので、出発時から防水のオルトリーブ製品を選んだ。

旅のスタイルで変化するキャンプ用品選びの難しさ

 自転車旅のキャンプ用品で揃えなければならないのは、テント、バーナー、クッカー(調理器具)、寝袋、スリーピングマットだ。このキャンプ用品を選ぶ基準は、本当にひとそれぞれの旅のスタイルで変わってくるので、出発前に判断するのは難しい。

 日本を出発する前は、自転車旅の装備は軽くてコンパクトに越したことはないと思いこんでいた。ただキャンプ生活が長くなるので、多少大きくても、いかにストレスなく快適に過ごせるかを考えることが必要だった。

 日本で走った経験が海外ではあまり生かされなかったのは、短期間で一気に走るのと、数年単位の海外ロングツーリングでは、全く異なる装備が必要になると気がつかなかったからだ。

 短期間で毎日早馬のような勢いで走っていた日本の旅では、コンパクト重視の装備で間違いなかった。しかし数年間単位の海外ツーリングでは、多少快適を求めることも重要。旅を始めてから気がついたのだが、コンパクト重視だと疲れが抜けず、ストレスが溜まってしまうのだ。

 ただ、何度もいうように、出発前に自分のスタイルを的確に見抜き、バランスよく装備を揃えていくのは相当難しい。その顕著な例はテントだった。

 自転車旅をするのにテントは軽いに越したことはないし、自分もテントは軽さとコンパクトさが最も重要だと思っていた。日本縦断の経験から一人旅では充分な広さだと感じて、PAINE(パイネ)の1~2人用ゴアライトテントを選んだけど、世界を旅するには居住性に問題があった。

 海外の治安が悪い地域では盗難の可能性を考え、荷物はできるだけテントの中に入れる必要があったし、その影響でキャンプ場で連泊することも多かった。

僕以外の人は2~3人用のテントを使っていた。テントやフライシートの色も目立たない色を選ぶべきだったと知った Photo:Gaku HIRUMA

 日本の旅の場合、雨が降っていればコンビニやスーパーに寄って、おにぎりでも買ってテントで食べれば済むけど、海外でそんな都合のよく店があるのはかなり稀だった。

 だからテントの前室で料理を作らないといけないことも多かった。1~2人用のテントでは、フライシートを張っても靴がかろうじて置けるくらいのスペースしか確保できない。だからかっぱを着て濡れながらラーメンをすするなんてこともあった。

クッカーは10年以上たった今でも現役

 テントは大きさ選びで失敗したけど、クッカーはMSRのブラックライトグルメクックセットを選んで正解だった。アルミ製で、鍋が2つとフライパンが1つがセットで、大きい鍋が2L、もうひとつが1.5Lと一人旅ではかなり大きいサイズだった。だけどインスタントラーメン2、3袋分を一気に茹でたり、大量のパスタを一気に茹で、2食分にして時間や燃料を節約できたりしてメリットが多かった。

 同じMSRのガソリンバーナーのウィスパーライトインターナショナルとも相性が良く、強火調理でも米を上手に炊くこともできたので、本当に重宝した。

 僕はこのブラックライトを旅の序盤から過酷に使用していたので、当初黒光りしていたコーティングが剥げて、ほぼアルミ色になってしまったが、10年以上たった今でも、現役で使えるほど丈夫だ。

2Lの大きいクッカーを買っていて正解だった。元々はテフロンのような黒い加工がしてあるクッカーだったが、過酷な使い方をしていたのでアルミ色になってしまった Photo: Gaku HIRUMA

 余談だが、現在MSRのブラックライトは廃盤になっており、プレミアがついているらしいことを後日知った。もっと綺麗に使っておけばとも少し悔やまれる。

マイナス10℃の寒さを乗り越えた寝袋

 寝袋はイスカのAir450 Shortを選んだ。最低気温マイナス6℃まで耐えられるスリーシーズン用の寝袋だ。流石に寒くてもマイナス6℃まであれば十分だろうと思ったけど、旅の序盤のアメリカで早くもテント内はマイナス10℃まで下がっていた。

 着れる服は全て着て、ナルゲンボトルで湯たんぽを作っても熟睡できない位寒かったが、命の危険が迫っているという感覚はなかった。走っているうちに冬に捕まり、気温がさらに下がったこともあるけど、テント内の気温はマイナス10℃くらいだったので、スリーシーズン用の寝袋でも乗り越えられた。資金があれば冬用の寝袋を選べば間違いないのだろうけど、全体的なバランスとしてはちょうどよかったように思う。

スリーピングマットは大きいものを

 最後にスリーピングマット。寝袋の最低使用温度を上回る寒さでもなんとか寝れたのは、しっかりとしたスリーピングマットがあったからだと思う。ウレタンマットとエアマットがあるが、僕はエアマット派だった。

 といっても出発前に購入したのは、国内メーカーの頭からひざ位までの大きさしかない少し小さいエアマットだった。少しでも軽量化しようとした結果だけど、エアマットは全身をカバーできる大きさを選ぶべきだった。ひざから下にマットを敷かなくても、寝るのに支障はないだろうと思っていたが、朝や冬の足元の冷えは相当きつかった。

 しかも、このエアマットはものの数カ月で穴が開き、使い物にならなかった。おかげで旅の序盤にサーマレストのエアマットに出合えたのは幸運だ。購入から6年間使ったけど、一度だけ表面剥離が起こって買い換えただけ。過酷な使用環境を考えると十分すぎる強度だった。サイクリストにとって睡眠はとても重要なので、しっかりとしたスリーピングマットを選んでほしい。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録

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