感染確認でチームの“除外”も異例づくしのツール・ド・フランス2020 新型コロナ関連のレギュレーションまとめ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 8月29日に開幕を迎えるツール・ド・フランス2020年大会。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中での開催とあって、過去に類を見ない厳戒態勢下でのレーススタートとなる。そして開幕前日の28日、今大会における新型コロナ関連の各種取り決めがまとまった。レースの運営に直接的に関係する項目が多く、観戦するうえでも押さえておきたいポイントがいくつも出てきた。そこで、このほど決まった各種レギュレーションを決定の経緯と合わせてまとめてみたいと思う。

新型コロナ対策で異例づくしの大会となるツール2020。感染を防ぎながらレースを進めていけるか(写真はイメージ) ©︎ A.S.O./Alex Broadway

7日間以内に2選手感染で大会から除外

 今大会のレース運営において最重要項目となるのが、「7日間以内に2選手が感染した場合、当該チームは大会から除外する」との特別ルールだ。

8月27日に行われたチームプレゼンテーション。この会場も隔離空間となっていた ©︎ A.S.O./Alex Broadway

 8月21日に決定し、主催者A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が通達した内容によれば、選手とチームスタッフ30人の中から、7日間以内で2人の感染者が出た場合、そのチームを大会から除外するとしていた。「選手とチームスタッフ30人」というのは、大会期間中にチーム本隊の一員としてスタート・フィニッシュ・チームピット・チーム車両・宿泊ホテルといった関連施設に出入りできる人員を指す。

 この関連施設を大会では「バブル」と呼び、1チームあたり30人(出走ライダー8人を含む)の集団は、その中で常時行動をすることが求められる。ちなみに「バブル」との言葉はアメリカのプロバスケットボールリーグ・NBAなどでも使われ、隔離地域や隔離空間を指すスポーツにおける共通語となりつつある。

マスクを着用してチームプレゼンテーションに臨んだ出場選手たち ©︎ A.S.O./Thomas Maheux

 加えて、バブル内では短いスパンでのPCR検査も実施される。開幕前には2度の検査を受けることが義務付けられ、うち2回目の検査についてはレーススタート72時間前に臨むこととされる。開幕後の検査については、2回ある休息日に行われる。

 ただ、開幕直前になって、この取り決めに一部変更が加えられた。「7日間以内で2人の感染者が出た場合、そのチームを大会から除外する」とのルールは、選手にのみ適用されることが決まった。チームスタッフが感染した際の対応については特に明らかにされていないが、選手に感染が広がらないよう最大限配慮しながら、チームはレース参加を続けていくことになるだろう。

 すでにツール関連で新型コロナウイルスへの感染例が出ている。大会前検査でロット・スーダルのチームスタッフ1人に陽性反応が出たほか、もう1人も感染が疑われる状況であることをチームが発表。このケースにおいては、両者のほかホテルで同部屋だったスタッフ2人も「バブル」から離脱する措置が取られ、代替のスタッフに入れ替わっている。

PCR検査陽性時の二次検査実施へ

 この決定に関連し、UCI(国際自転車競技連合は)はチームごとのレース除外や誤検出、偽陽性のリスクを回避できるよう、陽性反応時の二次検査を実施できるよう調整していくことを明らかにしている。

新デザインのジャージでツールに臨むボーラ・ハンスグローエの選手たち。ブルターニュクラシック・ウェストフランスでは新型コロナ陽性者が出たためチームごと大会から撤退する事態となった ©︎ A.S.O./Thomas Maheux

 ロードレース界における新型コロナウイルスの誤検出・偽陽性のケースとして直近では、25日に開催されたブルターニュクラシック・ウェストフランスで、ボーラ・ハンスグローエが出場予定選手の陽性によってチームごと大会から撤退。しかし、その後の再検査で陰性となり、チームマネージャーのラルフ・デンク氏が検査体制への疑問を投げかけるといった事態が発生していた。

 このような事例がツールでも発生しないよう、UCIはツール主催者A.S.O.や出場チームと話し合いを行い、「レース主催者が新型コロナウイルス感染によるチームの大会離脱を決定する前に、再検査によって陽性であることを確認する必要がある」ことを医療プロトコルに追記する決定を下した。

 再検査の結果は翌日のレーススタートまでに間に合わせることが前提条件となるが、レースディレクターのクリスティアン・プリュドム氏によれば「大会におけるPCR検査の結果は遅くとも2時間では出る。状況次第ではあるが1時間以内で出すことができる」と述べており、再検査の結果判明に関しても時間的な問題はないとしている。

セキュリティ強化で大会開幕へ

 開幕地ニースは新型コロナウイルス感染拡大の新たな波がやってきている。

 ニースが属するアルプマリティム県の保健当局によると、この1週間での新規症例数は10万人当たり97人に達しているとし、フランス政府も同県を感染拡大の「レッドゾーン」に認定。域内でのマスク着用が義務付けられた。

開幕直前まで各種の対応に追われた大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏(右)。未曾有のパンデミック下で大会を成功させられるか ©︎ A.S.O./Thomas Maheux

 こうした中で開幕を迎えるツール。大会の陣頭指揮を執るプリュドム氏は無観客でのレース実施を避けたい意向をかねがね述べていたが、さすがにこの状況では難しいと判断。第1・第2ステージのスタート・フィニッシュ周辺、さらにカテゴリー山岳では沿道でのレース観戦を厳しく制限する姿勢を示している。

 具体的には、登坂区間への一般車両の立ち入りを禁じるとともに、密着した状況でレース観戦をしないよう現地警察と協力して呼び掛けていくという。また、マスクの着用も必須。

 大会の盛り上がりに合わせて、不安が広がる感染拡大。ニース警察署長のベルナール・ゴンザレス氏はファンや街の人々に対して、「私からアドバイスできることがあるとするならば、山岳区間はテレビ観戦で楽しむことが一番だということ」とコメント。各所でセキュリティ強化の取り組みが進むが、それが奏功するかはレースが始まってから分かることになる。

フランス政府による感染拡大の「レッドゾーン」となったニース。開幕ムードが高まる一方で、感染拡大への緊張感も強まっている ©︎ A.S.O./ Pauline Ballet

 感染拡大の第2波がやってきているフランス。チームプレゼンテーションが行われた27日は、この時期最大の4998例の新規感染者が報告されている(世界保健機関のデータによる)。予断を許さない状況下で、異例のツールがスタートを切る。

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