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栗村修の“輪”生相談<186>男性「ロードバイク機材の身の丈の基準ってどこなんでしょう?」

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 初めまして、タロウと申します。

 機材の物欲を抑えるのに、お前は、マラソンの大迫傑選手かと言い聞かせています。

 ランニングシューズは、キロ何分ペースで、上級者、中級車、初心者、などの選別ができます。

 で、ロードバイクなのですが、自動車を選ぶように、カッコ良い機材、おじさんの見栄の物欲で…レーゼロ欲しいな~とか、カーボン、欲しいな~とか、手の届かない金額ではないので、物欲が止まりません。

 スポーツ機材なので、身の丈に合った基準が欲しいのです。

 中級・上級の判断は、どこですか。

(男性)

 ロードバイクの上級・中級の基準は何か、というご質問でしょうか。自分で機材を選べるホビーレーサーらしい質問です。

 ロードレースの特徴は、機材スポーツである点です。つまり、機材がパフォーマンスに影響を与えます。わずかな差かもしれませんが、一般に高い機材ほど速いわけですね。

 しかし、ロードバイクの高額化はとどまるところを知りません。今のハイエンドバイクなんて200万円近いじゃないですか。そういうものを、新しいモデルが出るたびに買える人はごく一握りでしょう。お金が続きません。だから、自分の中に基準を設ける必要がありますよね。

 その際に重要になるのが、価値観だと思います。ロードバイクと同じく金額が青天井になっているファッションに例えると分かりやすいと思うんですが、たとえば僕など、普通のおじさんが数百万円の宝石付き腕時計や、全身ブランド品などで身を包んだらどうでしょうか。格好いいでしょうか。ちょっと微妙だと思います。お金持ちっぽいかもしれませんが、なんというか、身の丈に合ってない感じがするんですね。

 この例をロードバイクに例えると、お腹の出た人がエアロなワンピースに身を包んで空気抵抗を極限まで減らした最新のエアロディスクロードに乗っている感じです。もちろん趣味ですから、何を買おうと本人の勝手ですし、揶揄されるいわれはないのですが、一般的にいって格好良くはないでしょう。しかしツールで総合争いをする選手が同じ格好をすると、ものすごく格好いい。それは身の丈に合ってるからです。

トッププロなら総額100万円以上のハイエンドロードバイクを普通の事のように乗りこなす Photo: Yuzuru SUNADA

 以上の例から分かるのは、ハイエンドが正義とは限らないことです。質問者さんもおっしゃるように、身の丈に合っていることが大事なんですね。

 ではその基準は何か、というのがご質問です。答えるのはなかなか難しいですが、一つの観点は、「持続可能性」があるかどうかをリソースと照らし合わせることではないでしょうか。

 年収1億円の人が200万のバイクを買うのは、金銭的に身の丈に合っています。しかし年収200万円の人が買うのは無理があります。持続可能性がないからです。要するに、お金というリソースが続かない。

 しかしリソースはお金だけではありません。モチベーションもリソースです。だから、仮に年収200万円でもレースに命を懸けている人が200万円のバイクを買うのは分かります。モチベーションという観点からは身の丈に合っているからです。

 でも、別にそれほど熱心ではなく、稼ぎがいいわけでもない人が高級バイクを買うのはなんだかちぐはぐです。あらゆる意味でリソースの量とバイクの値段が合致していないからですよね。この、「手持ちのリソースにふさわしいか」が一つの観点です。

 もう一つは、これは基準とは別なのですが、同じ金額でも投資の仕方によって格好良さやパフォーマンスは変わってくることです。

 またファッションに例えますが、上手な服の買い方に「一点豪華主義」がありますよね。目立たないものは安価に済ませて、靴とか時計とか、重要なアイテムだけにセンス良く(ここが重要!)集中的に投資するやり方です。これなら目を引くものが良いモノなので安っぽいイメージを与えませんし、しかし投資額は最小限で済む。賢いやり方です。

 同じように、自転車の機材でも一点豪華主義は可能です。ただし、「一点」の選び方が大切です。ミドルグレードのバイクだけど、走りに大きく影響を与えるホイール(あるいはタイヤ)だけは最高級品にする。これは賢いやり方ですし、「分かっている」感じがするので格好良くもありますよね。

 しかし逆に、ハイエンドのロードバイクなのにタイヤが廉価版だったらどうでしょう。ちぐはぐです。これではバイクの性能を引き出せません。

 つまり、投資額が同じでも、コストパフォーマンスがいい所にお金をかけているバイクは格好いいし速いのです。これはかなり重要なポイントじゃないでしょうか。

 というわけで機材を選ぶ時には、①身の丈に合っているか、②投資する価値がある機材か、の二点をチェックしてみてください。安いのに効果ばっちり、しかも格好いい…という機材だってあるのです。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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