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つれづれイタリア〜ノ<149>未来のチャンピオンたちに支援の手を! UCI“改革”の影響でイタリアU23チームが危機に

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 自転車競技といえば、ヨーロッパが本場。レースの歴史が長く、イタリア、フランス、スペイン、ベルギーなどから次から次へ新しいチャンピオンたちが生まれてきています。しかし、本場かといって、決して安堵できない事情があります。UCI(国際自転車競技連合)が進めている改革の影響で、若者が育ちにくい環境が生まれつつあります。今回はその変化と対策について見ていきたいと思います。

イタリアのジュニアチームの地方大会。その中で今年からコンチネンタルに初挑戦するチームもある Photo: Marco Favaro

波乱をもたらした2020年問題

 中国生まれの新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大の影響は、地球規模で社会や経済に深刻な影響を与えたのはいうまでもありません。しかし、この大惨事がなくても自転車競技において、もともと2020年は大きな変革の年となりました。

地方大会とはいえ、100人以上の選手が参加 Photo: Marco Favaro

 UCIは競技の質を高めるという名目で、定期的にルール変更を行ってきました。しかし、今年からレースやチームの資格取得がより一層厳しくなり、本場のヨーロッパでさえ、多くのチームの消滅や合併をもたらしました。

 トップカテゴリーのワールドツアーチームも資金難に落ち、UCIプロチーム(昨年までのプロコンチネンタルチーム)とU23チームの場合、状況はもっと深刻です。たとえば、レースオーガナイザーに与える「ワイルドカード枠」が減少されただけでなく、その基準も厳格化されました。ツール・ド・フランスやジロ・ディタリアの参加が「命」というチームにとっては存続問題に繋がっています。

大人たちはワインを楽しみつつレース観戦 Photo: Marco Favaro
将来のチャンピオンを目指す若者たちがしのぎを削る Photo: Marco Favaro

 未来のチャンピオンを育てる役割を果たしていたU23チームにとっても、状況が深刻さを増しています。国際レースに参加するためにコンチネンタルチームに昇格するものの、コスト増につながり、収入源はスポーサーや寄付に頼る構造により破綻寸前です。

ヴェローナを拠点とするU23チーム、General Store EsseGiBi Fratelli Curia(ジェネラル・ストア 〜 エッセジビ 〜 フラテッリ・クリア)。今年からコンチネンタルチームへ転身。日本人の若手選手、前原直幸も所属 Photo: General Store EsseGiBi F.lli Curia

 私の生まれ故郷、イタリアではさらにプロになりにくいもう一つの事情があります。利益を確保するため、イタリアの経済を支える自転車関連企業の多くは、市民グランフォンドに積極的に参入しています。10年前から始まり、今ではビアンキ、ボッテッキア、カンパニョーロ、コルナーゴ、ピナレッロ、サンティーニ、スポルトフルなどがイタリア国内だけでなく、世界中で市民大会のメインスポンサーを務めているようになりました。

 新型コロナウイルスの影響がなければ、イタリアだけで年間100以上の「ツール・ド・おきなわ」と同規模のグランフォンドが開催され、この市場が持つ意味と規模は無視できません。その代わりに、自転車のプロチームへの予算は減りつつあるように見えてきています。

若者に支援の動き

 事情を重く見たイタリアの自転車競技連盟(FCI)は、若者の支援のために様々な対策に乗り出し始めました。その一つは、自転車が好きな人に直接に呼びかけて寄付を募ることです。

 そもそもこのような考え方は、自転車競技イタリア代表監督のダヴィデ・カッサーニが3年ほど前から考案したものです。彼がイタリア中のグランフォンドの参加料金から数ユーロを徴収することを考案し、若者の育成に役立てることを提言しました。今回のプロジェクト「2+ Milioni di Km」(200万キロメートル)という企画につながりました。

2+ Milioni di Kmの公式サイト。イベントまでのカウントダウンが表示され、寄付された金額も順次にアップされている

 具体的にどのようなものか。

 ミラノを拠点とし、バーチャルトレーニングアプリを展開するBIKEVO(バイクイーボ)は、寄付を募るサイトを作り、9月26日から10月4日にかけて、企画に賛同した参加者が全員合わせて200万キロメートルを走りきる目標を掲げています。ちょうどジロ・ディタリアのスタートに合わせる形です。

イタリア自転車競技代表チーム総合監督ダヴィデ・カッサーニ。このイベントの火付け役として大きな役割を果たした Photo: Marco Favaro

 エントリー費は2ユーロ(約250円)と格安。エントリー時に特別ゼッケンがもらえます。その後、走った距離に応じて、1キロメートルあたり0.1€から1€まで寄付できる仕組みです。使用する自転車も距離も自由で、個人でもグループでもイタリア国内に住む人なら誰でも参加できます(現在、海外での参加はできませんが、寄付は可能)。

 集まった参加費と寄付金は、イタリア自転車競技連盟と身体障害者のスポーツや野外活動を支援する非営利団体Dynamo Camp(ダイナモキャンプ、https://www.dynamocamp.org/)に半分ずつ寄付されます。
すでに4万人以上がエントリーし、目標参加数はすでに達成しているようですが、これから参加者はもっと増えると見込まれています。8万5000ユーロ以上(約106万円)が集まり、若者の未来を支援したい人の輪が広がりつつあります。

 2020年は例外づくしの一年になりましたが、自転車競技の構造を考え直すためのきっかけになればいいと願っています。

2+ Milioni di Km

公式サイト:http://2milionikm.com
協力:RCS Media Group、RCS Sport、RAI Sport
後援:CONI(イタリアオリンピック委員会)

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