“そっちとターキ”一家の自転車旅・準備編イタリア600km、夏休みロングライド初挑戦① 自転車不足で160kmを4往復してバイク購入

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 新型コロナウイルスの影響で自転車を活用したサイクルツーリズムは改めて世界各国で注目を浴びています。今回は、パンデミックの影響で夏休みに日本に帰国せず、イタリアで初めての長距離サイクリング旅に挑んだ日本人一家の挑戦を紹介。ロックダウン後の自転車事情からファミリーでも楽しめるイタリアのサイクルツーリズムの詳細を3回に渡ってお届けします。第1回はイタリアのロックダウン下の状況からバイクを購入するまでの準備編です。

◇      ◇

イタリア自転車旅に初挑戦した11歳のそっち(右)と8歳のターキ兄弟  Photo: Daisuke YANO

 2人はイタリア、トリノに住む11歳(そっち)と8歳(ターキ)の日本人の兄弟。

 2020年3月、私たちが住んでいるイタリア共和国のコンテ首相は非常事態宣言を発令するとともに、全国民に対し不要不急の外出を控えるよう訴える。ついには恐れていた“ロックダウン”が宣言された。

9週間のロックダウン、オンライン通信だけが外との接点

 ロックダウン生活に入り、最初の1、2週間くらいは、突然舞い降りてきた春休みを謳歌するように、朝からのんびりできるその環境に、そっちもターキもまんざらではない様子だった。しかし2週間が過ぎたあたりから、慌ただしくオンライン授業が始まるようになり、大好きなサッカーや公園遊びは元より、外出すら許されない日々が続くと、2人の表情は次第に曇っていった。

 あり余るエネルギーのやり場を見つけることができず、コンピューターゲームのオンライン通信でそれぞれの友人とコミュニケーションを図ることだけが、彼らにとって唯一残された外部との接点であり、息抜きの場となった。

ゲームを楽しむターキ Photo: Daisuke YANO
オンライン授業を受けるそっち Photo: Daisuke YANO

 新型コロナウイルスによるパンデミックは、我々が住んでいるイタリア北部に大きなダメージを残していった。そして“ロックダウン生活”は、延べ9週間にも及んだ。その間に、運動不足の子供達を連れ出し、自宅の下でサッカーのパス交換をしていたところを地元警察に指導され、罰金を受けるという事件も起きた。

 「パパ大丈夫? ごめんなさい」

 そう謝る子供たちを横目に、やりようのない怒りと情けない気持ちが入り混じった感情が込み上げてきた。何よりも、9週間の間に、あれだけ活発だった男の子たちがゲームの世界に没頭し、そこからなかなか抜け出せない状況を目の当たりにするのがとても辛かった。

「自転車でイタリアを一周しよう」

 ロックダウン生活が終了したとはいえ、サッカーをはじめとする接触のあるスポーツや、団体で行うサマースクールなどにも通えない日々が続いていたある日の夕食、家族を前に私はこう宣言した。「自転車でイタリアを一周しよう」と。一同、驚きを隠せない表情だった。

 可能な限り自然に触れ、一緒に冒険をしたい、共に何かを達成したい、ロックダウンで溜まっていたエネルギーを全て吐き出したい、という気持ちから生まれた提案だった。一番に返事をしたのはママだった。「え?やだ…。それ私も行くの?」

 うん。気にしない。気にしない。聞かなかったことにしよう。こうして、我が家のイタリア自転車周遊旅行が決定した。

第一関門は「自転車購入」

 自転車でイタリア周遊旅行を決めたとはいえ、そもそも我が家には自転車が2台しかない…。1台は、そっちのBMX、そしてもう1台はターキの幼児用自転車だ。

 どう考えても、これで長距離の移動をこなせるわけがないし、そもそも2人の体に合っていない。我々(両親)の自転車も揃える必要があるので、計4台を新調する事になる。

 お恥ずかしながら、正真正銘完全ビギナーサイクリストの我々は、そもそも自転車をどこに買いに行ったら良いのかすら分からない…ということで、“あそこなら何でも揃うでしょう!”と、近所のデカトロンに出向いた。デカトロンには、子供から大人用まで幅広い選択肢があると思っていたが、なんだか種類や在庫が心許ない気がする、そして週末のせいか店内は沢山のお客さんで賑わっていた。

 “きっとロックダウンが終わり皆スポーツをやりたいんだろう”

 その時は、そんな風に思っていた。そっちもターキも目星の自転車を見つけ、私も妻も各々の好みを相談しながら自転車売り場を徘徊するも、あまりの混雑具合に疲弊してしまい、「また日を改めて、平日にでもゆっくり買いに来ようよ」と店を後にするのでした。この判断が、後に大問題につながることは、この時知る由もなかった。

2度目に訪れた際のデカトロン店内・自転車売り場の様子 Photo: Daisuke YANO

政府の自転車購入補助制度でソールド・アウト

 それから数日後、今日こそ購入しようと意気揚々とお店に出向いた我々は一瞬で言葉を失った。自転車売り場の在庫がほぼゼロで、買える自転車が一台もない…。慌てて店員さんに事情を確認すると、「先日、政府から“自転車購入代金の約半額を補助金で賄える制度”が発表されたんですよ。それから連日大賑わいでsold outです」とのこと…。

ヘルメットもほぼ完売。。 Photo: Daisuke YANO
自転車売り場には物がなさすぎてビックリしました Photo: Daisuke YANO

 嘘でしょ? 旅、行けないじゃん…。

 正直、言い出しっぺの責任も感じますし、引き下がるわけにはいきません。それから必死に探しました。デカトロンのHPで在庫を逐一チェックする日々が続き、自宅から80km離れた穴場店舗を発見。定期的に在庫が入る度に速攻電話予約をし、往復160kmをかけて引き取りに行くという作業を4台分、つまり4回続けました。こんなに苦労して物を買ったの、“たまごっち”以来20年ぶりです…。

トリノ王宮とそっち Photo: Daisuke YANO
何度も通った80km先のデカトロン店内。ママの自転車とターキ Photo: Daisuke YANO

 結局デカトロンでは、寝袋や簡易テントも買い揃えまして、最後の方は、店員さんとめちゃくちゃ仲良くなりました。“また来たの?って言わないで…” いつも心の中でそう呟いておりました。何はともあれ、ようやく出発の準備は整ったのでした。

荷物は必要最低限を心がけました Photo: Daisuke YANO
家の中でテントをたてる練習 Photo: Daisuke YANO

 自転車でイタリア周遊旅行を決意し、補助金ブームにも負けず自転車をなんとか揃えることができました。

自宅内を自転車で回るターキ Photo: Daisuke YANO

旅の計画を友人マルコに相談

 次は旅の具体的な計画です。

 何度も言いますが、私は完全なるビギナーですので、専門家にアドバイスを請いましょう。自転車をこよなく愛するサイクリストの友人マルコに連絡をし、色々教えてもらいます。

「自転車でイタリアを一周しようと考えているんだけど、どう思う?」

マルコ「何日くらいで考えているの?」

「うーん、大体3週間くらい」

マルコ「コースにもよるけど結構大変だと思うよ。ってか子供連れてくの?」

「うん」

マルコ「いや。普通に無理でしょ…」

「じゃあ、8歳の子供が1日無理なく行ける距離ってどのくらいかな?」

マルコ「初心者だよね? 大体30km〜40km程度じゃない」

「どこかオススメのコースある?」

マルコ「アドリア海沿いに新しいサイクリングコースが出来るって聞いたよ」

「ありがとう。そもそも自転車って電車に載せて行けるの?」

マルコ「フレッチャロッサ(新幹線)に載せる場合には、分解&パッキングしなきゃいけないんだけど、レジョナーレ(鈍行)だったらそのまま乗せて行けるよ。電車によって、自転車置場のスペースに限りがあるみたいだけど」

「そうなんだ。じゃあちょっとアドリア海沿いのコース調べてみる!Grazie!」

 知らない時は、素直になるのが一番。

マルコの教え通りに決めたこと

① 走行距離は1日30km-40km
② アドリア海沿いのルート
③ 自転車の分解&パッキングはできないので、スタート地点までは、鈍行で移動

 以上の3つを即決し、アドリア海沿いのコースについて調べることにしました。

 アドリア海コースというのは、南北に総距離1300km! 北はイタリアとスロベニアの国境の町トリエステから、南はイタリアの踵の一番下の街、レウカまで貫通する縦断コースとのこと…。

 いやいやマルコ…普通にハード過ぎるでしょ…。

友人マルコが提案してくれたコース(赤線部分)
実際に私たちが走ることに決めたルート

 しかし読み進めて行くと、マルケ州、アブルッツォ州の大部分はサイクリング専用コースになっていて、一見の価値ありとのこと。自転車専用道路であれば、子連れの我々でも安心だし、ずっと海岸沿いを行くルートにすれば、疲れたら海にも入れて楽しそうだなと思い、マルケ州の州都であるアンコーナという街をスタート地点に決定。ゴール地点は単純にそこから30km/日×20日=600km地点にレッチェという大きな街があり、一度も行った事がなかったのでレッチェをゴールに決めました。

 ちなみに我が街トリノからレッチェまでは、車で行くと1150kmになります。

 ホントに行けるのかな…。

 正直、不安しかありません。

   その2“そっちとターキ”一家の自転車旅・旅の醍醐味編に続く➡

そっちとターキと父
そっちとターキファミリー

イタリア在住の11歳と8歳の兄弟。ロックダウンの影響を大いに受け、ゲームにハマり過ぎて父親からイタリア自転車周遊旅行の旅に駆り出される。トンカツ好きで几帳面な兄とうどん命で天真爛漫な弟。趣味は、ポケモンカード収集、ゲーム、スキー、サッカー。揃って大のユベントスFCファンでアイドルはパウロ・ディバラ。筆者である父は、トリノで広告代理業に従事するスポーツをこよなく愛するサラリーマン。

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“そっちとターキ”一家の自転車旅 サイクルツーリズム ツーリング

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