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栗村修の“輪”生相談<185>10代男性「他のスポーツの動きや経験はロードバイクで生きてきますか?」

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 現在高校1年生で、2年前からロードバイクを始めました。

 僕はペテル・サガン選手が憧れです。「登れるスプリンター」と紹介されることもあります。下りもとても速い選手です。脚質はもちろんですが、サガン選手が過去にMTBをやっていたこともあると思います。

 少し話は変わりますが、僕がこれまで出会ってきたスポーツの中で一番、才能やセンスが大事なスポーツだと思います。もちろんそれだけでは勝てないと思いますが、今、ワールドチームで活躍している選手たちは努力と才能を兼ねそなえた選手たちだと思います。

 話を戻しますと、自転車と言う大きなくくりでは同じですが、全くと言っていいほど違うロードとMTB。ですが他のスポーツの動きや経験はロードバイクで生きてくるのでしょうか?

(10代男性)

 他のスポーツの経験がロードバイクに生きるか? とのご質問ですが、答えは時間尺度によって変わります。

 短期的には、答えは「NO」です。たとえば来週末のロードレースでいい成績を出したいなら、他のスポーツをやっている場合ではありません。ロードバイクに乗って、ロードバイクのトレーニングをしましょう。

 しかし、長期的に見ると答えは変わってきます。すなわち「Yes」、絶対に他のスポーツもやったほうがいいでしょう。

 それは、今のヨーロッパの選手たちを見れば明らかですよね。先日出したトレーニング本(『栗村修のいちばん身につくロードバイクトレーニング』、宝島社)にも記しましたが、今の強豪選手には他競技出身者がとても多いんですよ。パッと思いつくだけでも、エガン・ベルナル、ゲラント・トーマス、レムコ・エヴェネプール、プリモシュ・ログリッチ、ジュリアン・アラフィリップ、マチュー・ファンデルプール、ワウト・ファンアールトらは、トラック競技やシクロクロス、MTB、あるいは非自転車競技出身者(経験者)です。

サッカーのジュニア代表選手だったレムコ・エヴェネプール。けがで自転車に転向し現在20歳にして早くも世界のトップ選手に Photo: Yuzuru SUNADA

 細かい議論は著書に書いたので端折りますが、ちょっと逆説的な話ですけれど、さまざまな能力を問われるロードレースで本当に強くなるためには、ロードレースのトレーニングばかりやっていてはダメらしいのです。アスリートとして、あるいは人間として大きくならないといけない。

 もちろんパワーがどうこうとか、○○社の新型フレームは空力が…みたいな話も大切なのですが、それ以前にやるべきことが山ほどあるということです。長期的にはね。

 質問者さんはまだ高校1年生ということですから、どう考えても長期的な視点が必要です。つまり、ロードバイク以外のスポーツもどんどんやってください。長期的にはそちらのほうがずっと強くなれるはずです。

 ただし重要なのは、「長期的に」という視点を忘れないこと。これも先ほどの著書に書いたことですが、もし質問者さんが自由に使えるお金を10万円手に入れて、それで強くなろうとしたら何に投資すべきでしょうか? ホイール? それともエアロワンピース?

 いいえ、そんなものよりも、中古でいいですからMTBやシクロクロスバイクを一台買ってください。そっちのほうがずっと効果があるはずです。長期的には。

 でも短期的にはロードバイク用機材に投資したほうがいいんですよ。明日のレースに備えて急にMTBに乗り始めても一向に強くなれないと思いますが、ホイールをアップデートすればただちに0.05㎞/hくらいは平均速度が上がるかもしれません。

 でも、質問者さんにとって大事なのは長期的な視点です。1年後、2年後に飛躍するためには近視眼的にならず、たとえばMTBに乗ったりシクロクロスで遊んだりして、ロードバイクでは決して体験できない体の使い方を覚えてください。質問者さんの身体の潜在能力を引き出せるはずです。

テレマークポーズがおなじみのプリモシュ・ログリッチ。元スキージャンパー Photo: Yuzuru SUNADA

 自転車競技でなくてもいいんです。エヴェネプールはサッカー、ログリッチはスキージャンプ出身ですが、他のスポーツでもいい。とにかく、体に色々なことを経験させるべきです。細かく言えば左右対称で、かつ有酸素運動の要素があるスポーツがいいですが、難しく考える必要はありません。なんなら、野山を走り回ったり、木登りをするのでもいいんです(そんな年齢ではないとは思いますが)。

 急がば回れ、といういい言葉があります。この言葉は、少なくともロードレースには当てはまるようです。様々な能力を問われるロードレースでは、常に視野を広く持ち、長い時間軸でものを考えることが必要なんです。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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