国内ロードシーズンも再開JBCF群馬大会で聞いた「withコロナ」のレース活動 関係者各自の感染予防がカギに

by 小森信道 / Nobumichi KOMORI
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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴いその動きが止まっていた国内自転車レース界が、少しずつではあるが動き始めた。しかし、新型コロナウイルスの脅威が残されたままであることに変わりはなく、レースを開催する際にも細心の注意を払わなければいけない。そこで今回は、7月23〜25日に開催されたJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)主催の「第54回JBCF東日本ロードクラシック群馬大会」の会場で、大会主催者、出場チームの監督・選手にインタビュー。「withコロナ時代」を迎えた、国内自転車レース界の感染予防対策について話を聞いた。

レース前の検車と出走サインは接触を避け、距離をとって目視で実施 Photo: Nobumichi KOMORI

主催者「できるだけ開催したい」

 主催者の目線での話を聞いたのは、JBCF専務理事の丸田貴之氏。スポーツ界に逆風が吹く難しい社会情勢の中、どのような感染予防対策を施してレース開催に漕ぎ着けたのか。

 丸田氏によると「JBCFとしてはできるだけ多くのレースを開催したいという意向のもと、開催にあたってご迷惑をおかけすることがないよう、最初にガイドラインの策定をしました。このガイドラインは各種スポーツ大会や各行政が出しているガイドラインを参考にしてまとめてあります。今後もおそらく、ガイドラインを基準に最新の情報や対策をアップデートしていきながら開催していくことになると思います」ということだ。

 JBCFが策定したガイドラインで定められている取り組みの中で、全者に共通する項目として、以下の2項目が設けられている。

① レース開催の2週間前からの体温測定を義務付け、レース前日0時から20時の間に「健康に関する申告書」を提出する

② 下記に該当する場合は、何人も大会会場に入ることができない。選手はレースに参加することができない。
【平熱を超える発熱(おおむね37.5℃以上)、咳や喉の痛みなど風邪の症状、だるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)、臭覚・味覚の異常、身体が重く感じる・疲れやすい等、新型コロナウイルス感染症陽性とされた者との濃厚接触がある、同居家族や身近な人に感染が疑われる者がいる、過去14日以内に政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国・地域への渡航者または該当者との濃厚接触がある】

 また、大会運営に関しても当面は無観客での開催とし、感染の広がりや重症度をみながら必要に応じて規模の縮小、来場予定者へ事前の注意喚起(体調管理、手洗い、うがい、マスク、咳エチケット)、大会会場内の定期巡回・確認、感染予防のためのアルコール消毒液等を準備し手指消毒を実施、非接触型体温計による会場入り口での全入場者検温の実施、などが定められている。

通常であれば大勢の観戦客がいる心臓破りの坂も、無観客開催のため無人 Photo: Nobumichi KOMORI

 このガイドラインのもと、群馬サイクルスポーツセンターではライセンスコントロールや検車では審判は全員マスクと手袋を着用したうえで、参加者と審判が対面する場所にはビニールカーテンが設置され、待機列にも適切な距離を取れるよう目安となるテープが貼られるなどの対策が施されていた。また、出走サインは行わずに審判によるボディゼッケンの目視確認のみで、複数人が同じペンを触らないような配慮もされていた。

 そのほかにも、密になるシチュエーションを避けるようにミーティングやリザルト掲出などを控える、会場内では十分な距離が確保できる場合を除いてマスク着用を原則とする、大会に関わるすべての者に新型コロナウイルス接触確認アプリのインストールを呼びかけるなど、現時点ででき得る対策に最大限で取り組んでいる印象を受けた。

会場の入り口にはビデオカメラ式の体温測定器が置かれ、来場者の体温が測定された Photo: Nobumichi KOMORI
会場では、レース時以外は選手も含めてマスク着用が原則 Photo: Nobumichi KOMORI

各チームの感染対策は?

 レースに出場する側のチームは、どのような感染予防対策を施して今回の開幕戦を迎えたのか。

 広島県から群馬県まで、およそ1000kmを移動してきたヴィクトワール広島の中山卓士監督は「チームとしてできる最大限の感染予防対策は、今回のシマノレーシングやチームブリヂストンサイクリングのように出場しないという選択」としたうえで、チームとして行ってきた感染防止対策を教えてくれた。

 まず、緊急事態宣言下ではトレーニング、食品や日用品の買い物など必要な場合を除いて、食事も含めて外出は自粛。また、外出する際はマスク着用と手洗い、アルコール消毒を義務付けていたという。今回の移動でも「サービスエリア内では必ずマスクを着用、食事の際にはアルコール消毒を徹底して移動してきました」と中山監督。「レース活動で動いてしまっている以上、感染リスクは決してゼロではありませんが、その中で細心の注意を払ってやっていくしかないと思います」とも話してくれた。

表彰式もソーシャルディスタンスを考慮して行われた Photo: Nobumichi KOMORI

 群馬県のお隣、栃木県からの移動となった那須ブラーゼンも、緊急事態宣言発令前の3月下旬から、チームトレーニングの中止を決定。同時に外部との接触がある外食、スポーツクラブの利用を禁止し、選手たちには体調報告や体温測定を義務付けてきたという。緊急事態宣言解除後は1週間ほど待ってチームトレーニングは再開したが、外食などの外部との接触は現在も自粛している状態だという。

 話を聞いたチームの運営会社であるナスポの若杉厚仁代表取締役よると「1人が感染してしまうと、チームの活動自体を停止せざるを得ない可能性があります。また、チームの地元の那須エリアは比較的感染者数が少ないので、那須にウイルスを持ち込まないという意識、緊張感を高く持ってレースに来ています」とのこと。今回の移動に関しても「マスクの着用や手洗い、アルコール消毒など、基礎的なことにはなってしまいますが、チームの共通認識として意識を高く持ってやっていこうと話しています」と教えてくれた。

今できる最大限を

 最後に、レースを走る選手の立場での感染予防対策を聞かせてくれたのは中島康晴選手(キナンサイクリングチーム)。「緊急事態宣言中は、まずは感染しないということを大前提に、免疫力を下げないようにトレーニングをしていましたし、家族もいますのでマスクを着用する、手洗いうがいをする、3密を避けるなど、基本的なことをしっかりと行っていました」とのこと。

 チームとは別に個人でとなった今回の移動も「サービスエリアやパーキングエリアの利用は極力短くすることを心がけていました。食事に関しても大事をとってレストランなどは利用せずササっと済ませたりして。電車が好きなので鉄道での移動という選択肢もあったのですが、やはり今はリスクを考えて車で移動してきました」とのことだった。

細心の注意を払って会場へ移動してきたという中島康晴(キナンサイクリングチーム)が、メイン集団の先頭をけん引する Photo: Nobumichi KOMORI

 また、今回の感染予防対策を施したレース会場に関しては「競技の特性上、密になる部分というのはありますが、会場に入るまでに検温があったり、2週間のチェックシートの提出義務があったりと、今できる範囲での最大限のことはやっていただけていると感じています。ただ、しっかりと感染防止対策をしていただいていることに安心し過ぎずに、選手たちも各々で感染防止対策をしっかりすることが重要だと思います」とベテラン選手ならではの話を聞かせてくれた。

◇      ◇

 今回レース現場を取材して感じたのは、いまだにワクチンや有効な治療薬がないため、感染症予防の基本的な行動(マスク着用、手洗いとうがい、アルコール消毒)をとる以外の対策法はないということ。その中で、主催者であるJBCFも感染リスクを高めてしまう要素をできる限り排除してレース運営に取り組んでいる。あとは、会場に集まるすべての人が、日常生活も含めて感染予防に取り組めるか。再び動き出した国内自転車レース界は、そこに集まる人たちの行動ひとつで決まる。

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