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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<349>ベルナルらコロンビア勢がヨーロッパへ アラフィリップらドゥクーニンクのキャンプ動向も

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 本来であればツール・ド・フランスが終わり、東京2020五輪へと向かっていたはずのこの時期。選手・チーム、さらには大会の主催者などがありとあらゆる趣向を凝らして、バーチャルレースやその他アクティビティによって実際のロードレースに替わる楽しみをファンに提供してきた。ただ、そんな日々もそろそろ終わりに差し掛かろうとしている。早ければ7月下旬からトップチームが参戦するレースが開催される見込みとあり、選手たちは急ピッチで準備を進行。国外移動が不安視されていたコロンビア人ライダーが特例でヨーロッパへの各拠点へと戻ったとの朗報や、有力選手・チームのキャンプの情報が寄せられ、自然と明るい話題が増えてきた。今回はロードシーズン再開間近を感じさせる、うれしいトピックを厳選してお届けしよう。

ロードシーズン再開後の活躍が期待されるコロンビア勢が特別機で出国。セルジオ・イギータ(左端)が選手を代表してイバン・ドゥケ大統領(左から2人目)、エルネスト・ルセナスポーツ大臣(右から2人目)との記念撮影に収まる(写真はアビアンカ航空Twitterから)

コロンビア人ライダーたちがヨーロッパへ 無事シーズン再開へ

 昨年のツール・ド・フランス覇者、エガン・ベルナル(チーム イネオス)ら、トップレベルで走るコロンビア人ライダーの多くが同国首都のボゴタからの特別機で、スペイン・マドリードへと移動を果たした。

 ヨーロッパで活動するコロンビア勢の多くは、新型コロナウイルス感染拡大への対応としてシーズン中断とともに帰国を選択。自国での休養やトレーニングに時間を費やしてきた。一方で、同国では3月23日に国際線の運行をすべて凍結。現時点では、8月31日を最長として国境封鎖措置の真っ只中で、自転車選手を含む多くのスポーツ関係者が原則として出国できない状況となっていた。

機内で過ごすナイロ・キンタナ、リゴベルト・ウラン、アルバロホセ・ホッジ(左から)。乗組員の厳重装備が目を引く(写真はアビアンカ航空Twitterから)

 ただ、国を挙げてスポーツを支援するコロンビアらしく、国境封鎖の延長措置をとった5月段階で、イバン・ドゥケ大統領やエルネスト・ルセナスポーツ大臣がトップ選手のためにチャーター便を出すことに前向きな姿勢を示していた。あとはいつそれが実現するかが焦点となっていたわけだが、7月19日に同国のフラッグキャリア・アビアンカ航空の特別機でマドリードへ飛ぶことが許可された。

 同国のスポーツ記者やサイクルメディアがTwitterに投稿した動画では、緊張感漂う空港内でナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)が手洗いする様子や、マスク・フェイスシールドといった感染防止アイテムの装着について説明を受けている姿、ベルナルが出国手続きを行っているところなどが収められている。また、同国スポーツ省も選手たちを見送る場面を投稿。ドゥケ大統領とルセナ大臣が立ち会い、ソーシャルディスタンスを守りながら記念撮影を行う姿も収められている。

 同国スポーツ省の発表によれば、特別機で出国する全員が搭乗前にPCR検査を受けて陰性である証明を提出済みだとし、スポーツ選手・関係者合わせて185人が搭乗。ロードレーサーが48人を数えるほか、ロンドン五輪女子BMX金メダリストのマリアーナ・パホン、テニス、サッカー、柔道といった競技の選手・スタッフが同乗。柔道関係者の中には、同国ナショナルチームの早川憲幸監督も含まれているという。

 ヨーロッパへの渡航が無事にかない、ツール2連覇を目指すベルナルや、覇権奪取をもくろむキンタナ、若手有望株のセルジオ・イギータ(EFプロサイクリング)ら有力選手たちのシーズン再開への道筋は明るくなってきた。マドリード到着後は検疫期間が設けられるため、引き続き慎重な活動が求められるが、8月からの本格的なシーズン再開へ向けて彼らは準備を進めていくことになる。

コロンビアを出国したロードレース選手(UCIワールドチーム、同プロチーム所属選手)

・チーム イネオス
エガン・ベルナル、イバン・ソーサ、セバスティアン・エナオ、ブランドン・リベラ

・アスタナ プロチーム
ミゲルアンヘル・ロペス、エルナンド・ボオルケス、ロドリゴ・コントレラス、アロルド・テハダ

・EFプロサイクリング
リゴベルト・ウラン、ダニエル・マルティネス、セルジオ・イギータ

・ドゥクーニンク・クイックステップ
アルバロホセ・ホッジ

・バーレーン・マクラーレン
サンティアゴ・ブイトラゴ

・モビスター チーム
フアンディエゴ・アルバ、カルロス・ベタンクール

・UAEチームエミレーツ
セルジオ・エナオ、アンドレス・アルディラ、クリスティアン・ムニョス、フェルナンド・ガビリア、フアン・モラノ

・ミッチェルトン・スコット
エステバン・チャベス

・アルケア・サムシック
ウィネル・アナコナ、ダイエル・キンタナ、ナイロ・キンタナ

・アンドローニジョカットリ
ミゲル・フロレス、ダニエル・ムニョス、ヨナタン・レストレポ

・ブルゴス・BH
フアン・オソリオ

・カハルラル・セグロスRGA
ホアン・ガルシア、フアンフェリペ・オソリオ、フアンフェルナンド・カージェ

アラフィリップ、エヴェネプールらが順調な仕上がり

 8月からのシーズン本格再開へ向け、有力チームの多くがヨーロッパ各地でトレーニングキャンプを実施中。整った環境で、改めてのコンディション調整、そして選手間の連携面などを確かめている段階だ。どのチームもでき得る限りの感染防止対策を施しながら、目標とするレースへの準備を進めている。

 そんな中から、今回はドゥクーニンク・クイックステップの動向をお伝えしよう。現在、チームは北イタリアの山岳地帯ヴァル・ディ・ファッサで18日間に及ぶトレーニングキャンプの真っ最中。主要なメンバーが参加しているが、エースクラスを中心に脚質や目的別に活動が大きく異なっている点が特徴的だ。

タイムトライアルバイクでジロ・デ・イタリアのコース試走を行うレムコ・エヴェネプール © Wout Beel

 再開後のシーズンも当初の予定と変わらずにジロ・デ・イタリアを目指すと宣言した若きエースのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。このキャンプではジロ中盤以降に控える山岳やタイムトライアルステージを見据えて強化に励む。先ごろは、33.7kmの丘陵での個人タイムトライアル(第14ステージ)と、翌日の第15ステージで上るピアンカヴァッロ(登坂距離14.5km、平均勾配7.8%)を試走したという。

 パンデミックによって、ハンガリーでの開幕が来年へと持ち越されたジロ。現時点でも3週間のルートは正式発表されていないが、全体を通しては予定とほぼ同様のセッティングとなる見込み。試走を完了したエヴェネプールは、「レースにおける2つの重要ステージを確認し、続く大会第3週のメニューがどうなるか見通すことができたのは個人的にもチームとしてもよかった」とコメント。自信を深めて迎えるリスタートのシーズンは、7月28日開幕のブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン)からとなる。

トレーニングで石畳の上りをこなすジュリアン・アラフィリップ © Wout Beel

 ツールとクラシックでチームリーダーを務めるジュリアン・アラフィリップ(フランス)も元気な様子を見せた。昨年は3月のストラーデビアンケで勝利して以降、破竹の勢いでビッグタイトルを次々と獲得。UCIワールドツアー再開の8月1日に予定される今年のレースは、再開後最初のミッションともなる。

 チームを通じて、今後のレースプログラムを発表したアラフィリップ。ストラーデビアンケの後は、これまた2連覇がかかるミラノ~サンレモ(8月8日)、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(8月12~16日)、フランス選手権(8月23日)、そして8月29日からのツールに挑む。

 いずれも目的は明確。ドーフィネはツールに向けた最終準備の場とする構えで、フランス選手権では「(フランス国旗をあしらった)トリコロールを獲得することはすべてのライダーの夢」にチャレンジ。イタリアでのトレーニングの日々については、「準備はここまで順調。ヴァル・ディ・ファッサでみんなと過ごすことができてうれしい。チームとは自分の目標について話ができており、シーズン再開後に自分の気持ちやできることを確かめていきたい」と明るい。

ドゥクーニンク・クイックステップのスプリンター陣も調整は順調。ファビオ・ヤコブセンも調子を上げている © Wout Beel

 山岳でのトレーニングがメインになっているが、スプリンター陣も集合している。チームトレーナーのクーン・ペルグリム氏は「クライマーに限らず、上りをこなすことによってコンディションの構築に非常に役立っている」とし、「スプリンターにとってもそのメリットを享受できる理想的なトレーニングの場所」であると目的を説明する。交通量も少なく、トレーニングメニューに幅が生まれていることも理由として挙げられるようだ。

 そうした中で調子を上げているのが、オランダチャンピオンでもある23歳のファビオ・ヤコブセン。2月から3月にかけて3勝を挙げている点で、シーズン再開後へのプレッシャーがないことを喜ぶ。日々のトレーニングではコンディション調整を最優先しているとし、自身の拠点に戻り次第、よりスピードに特化したメニューをこなしていくとビジョンを述べている。その成果を発揮する場として、8月5日からのツール・ド・ポローニュ、そしてグランツールはジロを目指していくことになる。

今週の爆走ライダー−アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 このほど、現チームと2年の契約延長に合意。2022年まで、フランス伝統チームの一員として走ることが決まった。

今シーズン序盤はパリ〜ニースに出場したアントニー・テュルジス =2020年3月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 フランス国内のメディアでは大きく報じられた。昨年は北のクラシックの1つ「ドワーズ・ドール・フラーンデレン」で2位と一躍注目を集めると、初出場のパリ~ルーベも18位とまとめた。少人数でのスプリントや細かな起伏のあるコースで力を発揮するタイプとあり、派手さこそないが自国では期待のワンデーレーサーの1人として数えられる。

 シーズン再開に向けて、より一層自覚が高まっているところ。エースのニキ・テルプストラ(オランダ)がけがで離脱。今季中の復帰が難しいとあり、彼にかかる期待は自然と膨らむ。すっかり自信をつけたパヴェ(石畳)は「常時目標になる」とし、チームリーダーとして走る意志は強い。あとは、最終候補に残っているツールのメンバー入りがかなえば、今年のターゲットはすべて定まる。ここまで調整は順調だが、メンバー選出の確約を得ているわけではないだけに決して油断はしない。

 少し前までは、「テュルジス3兄弟」として知られるところだったが、昨年からB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトで走っていた兄・ジミー、兄2人よりも才能豊かといわれていた弟・タンギーがともに心臓の問題によって引退を余儀なくされた。アントニー自身は健康に問題はまったくないようで、競技を終えた2人について問われた時は「命が一番大事」だと答える。ただ、「2人の分も自分が…」といった考えは特にないそうで、いまは自分とチームのために全力を尽くすことにフォーカスしているという。

2022年までトタル・ディレクトエネルジーで走ることが決まったアントニー・テュルジス。ツール・ド・フランスと北のクラシックにターゲットを据えている Photo: Total Direct Energie
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

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