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「自転車“応用”栄養学」<2>「たんぱく質だけ」で筋肉を作るのは非効率 多量摂取は疲労の原因にも

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 筋肉を作るためにたんぱく質を積極的に摂取するのは良いことですが、最近はたんぱく質だけをたくさん摂れば筋肉がつくと思っている方が多く、たんぱく質高含有であることが表記された食品を摂って安心している方が多く見られます。「たんぱく質だから太らない」とか「たんぱく質だけ摂れば痩せやすい」など、根拠のない噂で食品を手にとっていませんか? たんぱく質を体内に取り入れる(吸収)ためには、その量に応じたエネルギー補給が必要であることと、体への負荷がかかることも認識しておく必要があります。

たんぱく質の摂り方、間違っていませんか? Photo:gettyimages/ MurzikNata

プロテインの消化吸収には糖質が不可欠

 サイクリストの皆さんならご存知だと思いますが、筋肉量をアップさせるには、前提として筋肉への刺激が必要であり、そのためには負荷がかかる運動が必要となります。運動をせずプロテインを飲んだりするだけでは、筋肉は大きくなりません。

 たんぱく質をたくさん摂る目的で、食事に加えてさらにプロテインサプリメントを活用するとなると、たんぱく質を体内に吸収するためにたくさんの消化酵素や消化液が動員され、たんぱく質の消化を主に担当する臓器である胃の動きが活発化します。

 この消化活動にエネルギーが必要となり、体内に蓄えられていたブドウ糖(グリコーゲン)等が使われることになります。つまり、プロテインの消化吸収には炭水化物などの糖質が必要不可欠で、同時に摂取した方がたんぱく質単体で摂取するよりも吸収効率が良くなります。

たんぱく質は胃と腸で消化される。消化に使われるエネルギーには主に体内に存在する糖類が使われるため、普段から炭水化物を摂って体内にブドウ糖やグリコーゲンを貯め込んでおくことが重要 提供: 小川静香

たんぱく質の摂り過ぎは内臓疲労のもと

 また、糖質を制限しながらたんぱく質を多量に摂取することは、筋肉への負担も大きくなります。エネルギーが枯渇しているので、筋肉を分解してそのエネルギーを作る可能性が高まるためです。近年では、こうした「エネルギーの相対的不足」(※)が課題となっており、運動量に見合った適切なエネルギー量をしっかりと確保したうえで筋肉量アップへのプロテインサプリメントを取り入れることが重要といわれています。

※減量系や審美系(フィギュアスケートやバレエ等)の女性アスリートに多いといわれていた相対的エネルギー不足は、実は男女関係なく、成長期の男子や糖質制限をされている男性などにも起こっていることが近年報告されています。エネルギー不足により、集中力の低下や免疫力の低下、易疲労状態になりやすくなります。

 運動後、筋肉のダメージが大きいと考えられる場合や、疲労回復を早めたい場合は、胃腸に負担のかけない炭水化物の補給食(例えばゼリー状エネルギー飲料やおにぎりなど)に加えて、BCAAやEAAなど、すでにたんぱく質が分解された状態のアミノ酸サプリメントを活用することをおすすめします。食事がしっかりと摂れる環境では、ご飯や麺類などの主食を抜かずにたんぱく質がしっかりとれる主菜を用意し、栄養が偏らないように工夫していきましょう。

 また、プロテインサプリメントを活用する際は摂り過ぎに注意して、腎臓や肝臓の負担を軽減してあげましょう。たんぱく質は一度に大量に摂ると、消化を担当する臓器に負担が大きくなりますし、体にとって害のあるアンモニアの発生も増やします。肝臓がすぐに解毒してくれるので、肝臓が元気なうちは大丈夫ですが、トレーニングなどで疲労した臓器にとっては負担が大きくなる可能性があります。

 運動疲労が抜けない場合はこうした内臓疲労が原因となっていることも考えられます。体を休める休養も大切ですが、内臓の負担も軽減できる食事のあり方を検討してみましょう。

小川静香 小川静香(おがわ・しずか)

公認スポーツ栄養士、管理栄養士、博士(医学)。食アスリートジュニアインストラクター。日本女子大学卒業後、東北大学大学院医学系研究科運動学分野を修了。3歳から水泳を始め、国体も経験。大学院在学中にトライアスロンにハマり、2009年に念願の日本選手権に出場。同年佐渡国際トライアスロンAタイプで優勝を果たす。スポーツトレーナーを目指す学生の指導にあたる他、スポーツ栄養の知識を自ら実践し、栄養教育活動や栄養セミナーで伝える。現在はアイアンマンレースに向けた練習と共に筋トレにも精力的に取り組み、ボディメイクに奮闘中。

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