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昼間岳の地球走行録<59>自転車旅の国境越えで注意すること 世界60カ国を旅して得た経験

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 自転車旅とバイク(オートバイ)旅では多くのことが違うけど、国境の越え方が大きく異なる。オートバイで旅をしている人に聞いただけなので詳しくは分からないが、オートバイの場合、車検証や保険などの基本となるものにくわえて、国によって様々な書類の提出が求められるらしい。

コスタリカのイミグレ。鉄格子が入り物々しいが自転車を係官から見えるところに置き、明るくにこやかに手続きをお願いする Photo: Gaku HIRUMA

中央アジアは荷物検査が厳しい

 一方の自転車は国境を越えるのに特別な書類は必要ない。むしろ自転車旅と分かるとフレンドリーに対応してくれることが多かった。だから自転車をこれみよがしに係員から見える位置に置いたり、ヘルメットをカウンターに置いて、笑顔で旅の概要を話してスムーズに入国できるように工夫していた。

 とは言いつつも、国境越えは毎回緊張する。どこの地域の国境だろうと旅人からの情報収集は欠かさずにしなければならない。入国管理(イミグレーション、以下イミグレ)の審査の厳しさから、そこの国境は両替商がペテン師ばかりなので、政府公認の両替屋を使った方がいいとか、国境で取得できるアライバルビザの料金や、国境を越えるための手数料の有無などを調べる。たった数ドル程度の金額だったとしても、皆に平等に徴収する手数料と賄賂とでは大きな違いがあるので事前の下調べは重要だった。

 入国審査の厳しい国境は体力と気力を消費するので、国境の町で一泊してから午前中に気合を入れてイミグレに向かう必要があった。正直ツーリストが多い国ではそこまでではないが、アフリカや中央アジアなどは入国スタンプを押して貰えるまで気が抜けない。

 特に中央アジア諸国は審査や検疫のチェックはとても厳しい。こちらがフレンドリーに「自転車で旅をしてるんです」とにこやかに話しかけても、冷徹な顔は眉一つ動かさず、「あっそ」と言わんばかりに淡々と質問と荷物チェックをしてくる。さらにいくら後ろに行列ができていようとお構いなしで、全てのバッグの中身を開けてのチェックが入る。

トルクメニスタンからウズベキスタンへ入国待ちするトラックの列。数km続いていて何時間待っているのだろうと考える。その横を悠々と走れる自転車は優れものだ Photo: Gaku HIRUMA

 あの威圧的な雰囲気は取り調べを受けているような気分だった。不審なものを持っていないにも関わらず、心臓が高鳴り、冷汗が出てくる。無事に入国スタンプ押してもらったパスポートを無造作に投げ渡されても、こちらは笑顔を崩さず逃げる様にイミグレを抜けた。

 国によっては陸路でも出国のチケットが無いと入国できないところもある。その際、チケットを取れるときは取って、自転車旅の概要を伝えて入国させてもらおうと気合を入れる。だが、一度も「出国チケットを見せろ」と言われたことはなかった。やはりその辺は自転車旅という事情を多少は考慮してくれていたんだと思う。

厳密な検疫体制のチリ

 これまでの自転車旅で60の国に入国したけど、チリは検疫が非常に厳しいので注意が必要だ。通常どの国でも、入国する際に入国カードを記入しなければならない。検疫のチェック欄には、動植物をはじめその国に持ち込んではいけない物のリストがあり、申告をしなければならない。

 他の南米の国がラテンの国らしくあまり厳しいチェックを受けないので、そのままの感覚でチェックして行ってしまうと痛い目にあう。当然だが旅人が個人で消費するくらいの少量でも、生の野菜・果物類を持って検疫を通過することができない。もし申告せずに荷物チェックで見つかった場合、リンゴ1個だけでも破棄しなければならないし、高額な罰金も科せられてしまうのがチリの特徴だ。

パタゴニアにあるチリとアルゼンチンの国境のアルゼンチン側。なんと泊まれる。暖房とコンロまであある。ありがたくて涙が出そうだった Photo: Gaku HIRUMA

 チリに行く際は事前に検疫内容の最新情報をチェックしてほしいのだけど、動植物・乳製品・ハチミツ・果物・野菜・肉などが旅人が持ち込みそうなものとして該当しそうだ(ちなみに米やパスタは持ち込んでも大丈夫だと聞いた)。

 ただ何を持ち込んではいけないのか、細かいところまではよく分からなかったので、旅をしていた2011年当時は、検疫のチェック欄の「持っている」にチェックを入れて自己申告した記憶がある。こうすることでチェックは厳しくなるが、もし処分を忘れて見つかっても罰金に科されず、その場で食べるか破棄すれば大丈夫だった。

 もちろん自己申告するとは言え、事前に果物や生野菜など、入国の際検疫に引っかかると考えられるものは全て食べて行った。チリ入国前日に食べきれなかった野菜を調理し、タッパーに入れてお弁当にしたのでチェックしてもらったが、「これは大丈夫だ」と言われた。

チリに入国前夜。検疫が厳しいので生野菜は全て調理して、食べきれない分は翌日のお弁当にして国境を越えた Photo: Gaku HIRUMA

 ところがおやつ用に買っておいた少量の干しレーズンを指摘された。こんな少量でもと驚いたがその場で食べて事なきを得た。申告していなかったら罰金だったと思うと恐ろしい。

入念にお札を確認されたジンバブエ

 またアフリカのジンバブエ入国の際にはこんなことがあった。ジンバブエはハイパーインフレーションに耐えられず、2015年に自国の通貨を捨て米ドルを使うと決めた国だが、僕がアフリカを走っていた2013年でも既に誰も自国の通貨を使っていなかった。皆当たり前の様に米ドル札にランド硬貨(南アフリカの通貨)を使っていた。

100兆ジンバブエドル。2015年の流通停止時の価値は0.3円ほどの価値しかなかった。インフレの激しさを物語る。流通していないが、お土産として数ドルで取引されていた Photo: Gaku HIRUMA

 いつもの様にイミグレで入国カードを記入して、事前の情報通りアライバルビザ料金の30ドルを支払ったが、渡したドルを念入りにチェックしている。それはもう念入りに。透かしたり仲間の係官に渡したり手元の札と比べてみたりだ。

 ちなみに渡した紙幣は日本で両替して持っていた新札の10ドル札3枚。だから偽札なはずは絶対にないのだけど、ここまでされると不安になってくる。海外では偽札をつかまされることが稀にある。偽札と知って使っていても知らずに使ったとしても当然罪に問われる。

 しばらくして、係官がこう言った。「これはジンバブエドル(米ドル)か?」

 「もちろんだよ。本物だからね」と答える。

 「これはどこでプリントしたんだ?」

 一気に冷汗が流れる。これはもしかしたら強請られてるのかもしれない。こういう時は動揺してはだめだ。冷静に毅然と対応しなければ。

 「いや、プリントじゃないよ。本物だからね。両替は日本でしたんだけどね」

 すると係員は、「そうか、日本か。さすが日本だな。グットクオリティなプリントだ」

 ねだれてるのかと思いきや、実はとても日本びいきなフレンドリーな係官で肩の力が抜けた。ビザ発行中もスマホでしきりに「日本の車はいいよなぁ」とサイトを見ては日本の話を聞きたがった。

 無事にジンバブエに入国して街でお金を使うと、係官が新札を何度もチェックした理由が良く分かった。ジンバブエで流通している米ドルは、みんなそのままポケットにぐしゃっと突っ込むものだから、それはそれはボロボロな札ばかりだったのだ。逆によくこんなに柔らかくなるのかと思うほどだった。パリッとした新札が相当珍しかったのも頷ける。だけど新札で疑われるとは思わなかった。

 ちなみにジンバブエで流通している米ドルはボロボロすぎて他の国では受け取ってもらえない可能性があるので、必ず使い切って出国したい。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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