福光俊介の「週刊サイクルワールド」<347>サンウェブ、ディレクトエネルジーがツールメンバー発表 優勝候補キンタナの動向はいかに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ロードレースのシーズン本格再開は間近。この時期の大きな話題は、やはりツール・ド・フランスに向けた各チームの動きだ。このほど、チーム サンウェブとトタル・ディレクトエネルジーが出場予定のメンバーを発表。本来であれば熱戦が展開されていたこの時期、いつもとは違った形ながらも、やはり盛り上がるのはツールにまつわる情報だ。また、ツールでマイヨジョーヌ獲得を目指すナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が事故に遭い負傷。本番に向けた彼の動向も押さえておきたい。

シーズン再開後のレースプログラムを発表したチーム サンウェブ。グランツールを中心に主要メンバーを振り分ける対応を行う © Team Sunweb | Patrick Brunt

チーム サンウェブはステージ優勝を目標にツールへ挑む

 シーズンの本格再開に向けて準備を進めるトップチーム。その多くが高地でのトレーニングキャンプを経て、レースへと戻る公算だ。そうした中、ツールなどグランツールを軸にする形でレースプログラムを発表したのがチーム サンウェブだ。

シーズン再開からは白基調のジャージで戦うチーム サンウェブ © Team Sunweb | Patrick Brunt

 まず、ツールまたはジロ・デ・イタリアを最大目標とするグループを設定。ツールを見据えるグループは、ストラーデビアンケ(8月1日開催)とミラノ~サンレモ(8月8日)、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(8月12~16日)、10月に予定される北のクラシックがプログラムされる。一方、ジロ組はツール・ド・ポローニュ(8月5~9日)、イル・ロンバルディア(8月15日)、高地キャンプを経てティレーノ~アドリアティコ(9月7~13日)に臨み、10月3日のジロ開幕を迎えることになる。

チーム サンウェブのエーススプリンター、マイケル・マシューズはジロ・デ・イタリアを目標にする =パリ〜ニース2020第1ステージ、2020年3月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 それぞれに目標は明確で、ツールはスプリントや逃げからのステージ優勝を狙っていく。また、上りに強いメンバーをそろえたジロは総合成績を求めていくという。エーススプリンターのマイケル・マシューズ(オーストラリア)は、ジロ組にラインナップ。シーズン当初はツールとクラシックをターゲットとしていたが、情勢の変化によって目標を再設定。マシューズ本人はジロ組に入ったことへのチームからの説明がなく困惑しているとのコメントを残しているが、同時にチーム方針に従う意向も示しており、大きな問題にはならないとみられる。グループは異なるものの、ミラノ~サンレモには“特例”でメンバー入りが内定しており、与えられたチャンスで最大の仕事をしていく構えだ。

 なお、10月20日開幕のブエルタ・ア・エスパーニャに関しては、ジロやクラシックレースが重なる時期であることを考慮し、グランツールデビューとなるライダーを含めた若手育成の場にすると表明している。

チーム サンウェブ ツール・ド・フランス出場選手

セーアン・クラーウアナスン(デンマーク)
ニキアス・アルント(ドイツ)
ティシュ・ベノート(ベルギー)
ケース・ボル(オランダ)
マルク・ヒルシ(スイス)
ヨリス・ニューエンハイス(オランダ)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド)
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ)

※選手名の表記はチームの発表順による
※ストラーデビアンケ、ミラノ~サンレモ、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、ツール・ド・フランス、北のクラシックに出場予定

チーム サンウェブ ジロ・デ・イタリア出場選手

ニコ・デンツ(ドイツ)
クリス・ハミルトン(オーストラリア)
ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア)
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)
マイケル・マシューズ(オーストラリア)
サム・オーメン(オランダ)
カスパー・ピーダスン(デンマーク)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ)

※選手名の表記はチームの発表順による
※ツール・ド・ポローニュ、イル・ロンバルディア、ティレーノ~アドリアティコ、ジロ・デ・イタリアに出場予定。マシューズはミラノ~サンレモ出場予定

チーム サンウェブ ブエルタ・ア・エスパーニャ出場候補選手

アスビャアン・クラーウアナスン(デンマーク)
テイメン・アレンスマン(オランダ)
アルベルト・ダイネーゼ(イタリア)
マーク・ドノヴァン(イギリス)
フェリックス・ゴール(オーストリア)
チャド・ハガ(アメリカ)
ロバート・パワー(オーストラリア)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド)
マーティン・セルモン(ドイツ)
マイケル・ストーラー(オーストラリア)
フロリアン・ストーク(ドイツ)
イラン・ファンワイルダー(ベルギー)

フランスの雄 トタル・ディレクトエネルジーも最終候補選手発表

 フランスの伝統チーム、トタル・ディレクトエネルジーも地元ビッグイベントのツールに向け、最終候補選手9人をSNSを通じて発表している。

トタル・ディレクトエネルジーのエーススプリンター、ニッコロ・ボニファツィオ =パリ〜ニース2020第5ステージ、2020年3月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 7月4日に明らかにされたのは、9人のライダー。エーススプリンターのニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)やステージ優勝経験のあるリリアン・カルメジャーヌ(フランス)らが順当に選ばれている。

 チームによれば、6月10日にチーム内で行ったオンラインミーティングで選手たちへの通達がなされたとのこと。7月11日からは、ピレネー山脈のフォン=ロムー=オデイヨ=ヴィアで高地トレーニングを実施。実際にスタートラインにつく8選手への絞り込みが行われる。

 トタル・ディレクトエネルジーは、昨年のUCIワールドランキングで第2カテゴリーにあたるUCIプロコンチネンタルチーム(現・UCIプロチーム)で最上位になったことから、規定により今年のUCIワールドツアー各レースへの参加資格を自動的に獲得。いずれのレースも実際に出場するかは任意であることから、チーム方針のもとエントリーを判断している。ちなみに今年のグランツールは、ツールとブエルタに参戦する。

 なお、チームリーダーでもあるニキ・テルプストラ(オランダ)は、6月中旬にトレーニング中の事故で複数個所を負傷。戦線復帰まで時間を要する状態にあり、今年のツールは欠場する。

トタル・ディレクトエネルジー ツール・ド・フランス最終候補選手

ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)
リリアン・カルメジャーヌ(フランス)
ジェローム・クザン(フランス)
ファビアン・グルリエ(フランス)
ロメン・シカール(フランス)
ジュリアン・シモン(フランス)
ジョフレ・スープ(フランス)
レイン・タラマエ(エストニア)
アントニー・テュルジス(フランス)

キンタナは事故で負傷もツールに影響なしか

 心配なニュースも届いている。今年のツールでマイヨジョーヌ争いの有力候補であるナイロ・キンタナが7月3日、自国でのトレーニング中に交通事故に遭い、全治2週間のけがを負った。

今季序盤好調だったキンタナ兄弟。ツール・ド・フランス総合優勝を目指すナイロ(右)がコロンビアでのトレーニング中に事故に見舞われるトラブル。左は弟のダイエル =パリ〜ニース2020第1ステージ、2020年3月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チームの発表によれば、弟・ダイエルと普段のトレーニングコースを走行中、後方から来た車が2人の20m後ろを走っていた随行車両を追い越した直後にナイロに接触。その勢いで転倒し、右膝と肘を負傷したという。接触した車はそのまま逃走を図ったが、すかさず随行車両が追いかけたこともあり停止。その後、国家警察が対応にあたったとしている。

 幸いレース活動に支障がきたすけがには至らず、帰宅後に主治医の診察を受けて骨折がないことを確認。打撲や擦過傷がの回復を優先させるため、2週間の安静が必要とのことだが、SNSを通じて元気な姿を見せている。

 今年はシーズン序盤にステージレースの総合2勝を含む5つの勝ち星を挙げ、選手・関係者から「この春ナンバーワンのクライマー」との声も多かったナイロ・キンタナ。シーズン本格再開が近づくこの時期に、思わぬ形でトレーニングがストップになったが、ツールを含むレースプログラムには影響がないことを強調している。

 現在コロンビアでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため出入国を禁じる措置が講じられている最中だが、プロの自転車選手に限り特例で7月中旬にヨーロッパへのチャーター機が用意される見通し。キンタナ兄弟も搭乗し、ツールに向けた準備を加速させていく予定になっている。

今週の爆走ライダー−ライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 7月4日に開幕した“仮想ツール”こと「バーチャル・ツール・ド・フランス」。世界最大の自転車ロードレースによる新たな取り組みは、多くのファンがオンラインで観戦するとともに、世界中のメディアも注目する一大イベントとなっている。

バーチャル・ツール・ド・フランス男子部門で記念すべき最初の勝者となったライアン・ギボンズ(画像はストリーミング映像から)

 そんな新たな取り組みにあって、男子レースで栄えある最初の勝者となったのが、ライアン・ギボンズ。レース後のインタビューで「ツール・ド・フランスの歴史を少しだけだけど作ることができてよかったよ」と謙遜しつつコメント。2月に獲ったばかりの南アフリカチャンピンジャージが、彼の名を世界中に知らしめるのに十分なインパクトを与えた。

 実際のところ、バーチャル・ツールへのモチベーションは高いという。下部組織がバーチャルレースを通じて有望な選手をスカウティングしていることもあり、トップチームのライダーたちも普段から積極的にトレーニングに導入している。今シーズンが中断してからも、次々と企画されるバーチャルレースイベントに参戦。バーチャル・ツールを迎える時点で、誰よりも戦い方は知っていた。

 シーズンの再開が見えてきて、バーチャルでの成功をリアルのレースにも反映させたいと意気込む。「実際のツールでもこうして勝てるとよいのだけれど」とはレース直後の本人の弁。本来であれば、ツールが開催されていたこの時期。実はメンバー入りの当落線上にいたそうで、バーチャルの勝利が「メンバー入りの決定打になることを祈るよ」とも。

 マウンテンバイクのビッグレース「ケープ・エピック」で活躍した両親を持ち、自身も12歳でマウンテンバイクから自転車の世界へと飛び込んだ。「もっと目立ちたい」との思いで転向したロードレースは、25歳になって大きな転機が訪れようとしている。2020年の自転車界を象徴するであろうバーチャルレースのシーンから、飛躍する選手が出てきても決して不思議ではない。その可能性を秘めた1人が、ギボンズであることは間違いなさそうだ。

シーズン中断の間、バーチャルレースで大活躍のライアン・ギボンズ。“リアル”のツール・ド・フランスはメンバー入り当落線上というが、バーチャルでの走りから一気の飛躍を目指す =ツアー・ダウンアンダー2020 チームプレゼンテーション、2020年1月18日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2020 ロードレース

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