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おすすめな汎用工具と使い方<5>元自転車店員が教える「ニッパー」の使い方・選び方とおすすめ製品紹介

by 村田悟志 / Satoshi MURATA
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 自宅で自転車整備をする際に欲しい汎用工具のお話。第5回目は整備や組み上げの完成度を上げる「ニッパーの仕組みや使い方、おすすめの製品をご紹介します。

タイラップのカットや、バリの除去に便利なニッパーの使い方とおすすめ製品を紹介します Photo: Shusaku MATSUO

ニッパーってなに?

 ニッパーは銅線とか配線を切るための、挟み部が直線の握り工具です。プラモデルの各パーツをランナー(枠)から切り取る時に使うアレ。と説明した方がイメージしやすいかもしれません。

 ロードバイクでニッパー? と、思う方もいるかもしれませんが、上手く使うと仕上がった際の完成度が異なります。当然、ケーブルカッターとは別に用意し、補助的に使用しましょう。 

 その用途ですが、主にバリ取りなど、余分をカットして整える作業に使います。整備作業以外にも、車体や部品の梱包を解くときなど、さまざまな場面で役に立つアイテムなので持っていて損はありません。というか、無いと困る必需品のような感じですね。

 さて、そのニッパーですが、想定されるカット対象の堅さによって、刃の形状や厚み、素材の違いなどで多くの種類があります。それこそ、プラモデル専用からピアノ線が切れるほど強いタイプまで多種多様に存在しますが、自転車整備で欲しいのはざっくり2種類。

 アウターケーシング(ワイヤーアウター)のエンド処理や金属バリの除去などをするために、中くらいのサイズで頑丈な両刃の硬い素材用。そして、樹脂やゴム系の柔らかい素材バリを綺麗に切り取るための、小さめサイズで片刃の切れ味重視の精密作業用の2つです。

ニッパーの概要はこちらの記事を参照 

ニッパーを選ぶポイントは?

①刃と挟み部の形状を選ぶ

 ニッパーと一口に言ってもさまざまな形状が存在しますが、なんだかんだで普通のカタチがオススメ。JIS規格で言うと「強力ニッパ(2型)」という呼称です。なお、製品には準拠規格の記載が無い場合も多いのですが、まぁ有名ブランド製品なら大丈夫。当たり前のように、JISやISOより厳しい自社基準規格で作っている場合がほとんどですから。

 なお、海外メーカーに多いISO規格の製品は若干基本形状が違いますが、切れ味などは遜色ありません。サイズ感も大きな違いはないのですが、ISOモノは刃先まで厚く、ゴツいモノが多いので、使い慣れている形状が無ければJIS規格の日本製がおすすめです。

硬いモノを切るのに便利な両刃タイプ Photo: Shusaku MATSUO

 刃の形状も重要です。まずは「両刃」タイプ。特徴としては、刃の両面に刃付け(傾斜付け)がされており、厚みが出せるため挟み部分が頑丈に作れます。そのため、硬い物を切るのに優れている反面、刃の形状から切断面は山型に残ってしまい、断面を整えるのは少々苦手です。

 もう1つが「片刃」タイプ。こちらは刃の片面(内側)にのみ刃付けがされており、挟み部分は薄くなります。刃の強さは両刃に劣りますが、片面が平らなので、切るだけで切断面も綺麗に整えられます。

ニッパーの刃形状の違い ©RAMON’s SNAKE PIT

 硬い素材用のニッパーですが、こちらはアウターケーシングのエンドを均したり、メタルパーツのバリなどを取るのに使ったりするので、頑丈な両刃タイプがおすすめです。刃先はある程度厚く、幅が広過ぎないモノが良いでしょう。サイズが小さすぎると対象が切れず、大きすぎると切りたい部分を上手く挟めなかったりするので注意。薄刃も避けた方が良いです。

精密作業が得意な小ぶりで薄刃なタイプ Photo: Shusaku MATSUO

 次いで精密作業用ニッパー。メタルなど硬い物は切りません、タイヤのヒゲや合成樹脂のバリ、カーボンのささくれなどをカットするのに使うので、切れ味重視、切り口の綺麗さ重視。小ぶりで鋭い、片刃や薄刃のモノがオススメです。挟み部分両側が切刃、ストレート刃で、キャッチャーは付いていないモノが良いですね。

②サイズを選ぶ

 ニッパーのサイズは、JIS規格で125〜160mmと数種類の呼び寸が規定されていますが、あまり大きい物はラインナップされていません。というか、大きいモノは片手で使えなくなってくるほか、操作方法も形状も変わってしまうため、別種の工具として扱われる感じですね。

サイズは125mm~160mmが一般的 Photo: Shusaku MATSUO

 ガッツリとグリップに力を入れる硬い素材用は「160mm」前後の中くらいのサイズを、精密作業用は「125mm」の小ぶりながモノがオススメです。

③精度と強度で選ぶ

 ラジオペンチの時と同じで、JIS・ISOと工業規格で本体の強度、切断力などの規定がありますが、商品の説明やパッケージには、どの規格に準拠して製造されたかなどの記載は無い場合がほとんどです。そのため、やはり安心なのは名の知れたブランドの製品がおすすめ。

 正直、使用している鋼材の詳細なんか書かれたって判断できないし、僕もわかりません。「硬いだけでなく粘りがあって壊れにくい素材」的な、最適な性能のモノを各社が独自に研究・採用しているはずなので、実績を見て製造会社で選ぶのが間違いありません。

使用上の注意点

①明らかに強い対象物を無理に切ろうとしない。

 サイズと刃の形で、切断可能な強度の指定があります。無理すると、最悪の場合刃が折れて飛んできたりしてとっても危ないので、簡単に切れないモノは諦めて、もっと大きい、または強いニッパーを用意しましょう。

②切断対象を掴んでネジらない、コジらない

 刃の構造上、挟む方向以外の力が掛かると結構簡単に壊れます。しかもやっぱり最悪の場合、刃が折れて飛んできたりします。切れなかったらすぐ諦めましょう。あなたが根性入れても工具の強度はどうにもなりませんから。

③保護めがねを着けて作業しよう

 切った対象物や、もしくは工具が欠けて飛んでくる場合があります。必ず保護めがねやゴーグルなどのアイウェアを着けて作業しましょう。飛んでくる油脂から目を守ると言う意味では、整備全般、何をやるにも着けておくのが吉ですね。

用途

 サイクルコンピューターやライトなどのマウントを固定するのに使用するタイラップがあります。その固定した後の余り部分のカットや、タイラップ自体を切って排除するにはニッパーが最適です。他にも新品の部品を買ったらタイラップで固定されていた、なんてことはよくあります。自転車業界は梱包出荷から実走行まで、タイラップの使用率がとても高いので、ニッパーの出番も多いですね。そんなに整備しなくても1本は持っていたいトコロ。

余りのラバーやタイラップなどのカットに向いています Photo: Shusaku MATSUO

 ちなみに、タイラップの余分は綺麗に切っておかないと、鋭利な出っ張りが車体から飛び出たままの状態となり、これが結構危ないのです。たかがプラスチックと思ってると、皮膚など簡単に切れます。服が引っかかってコケたりする危険もありますので、精密ニッパーを使用し、切断面が平になるよう切って整えましょう。

 タイヤのヒゲを切るのにも便利です。タイヤのサイドに無数に飛び出ているヒゲですが、タイトな作りのバイクだと、チェーンステーとヒゲが干渉して、不規則に音鳴りする場合があります。その場合は精密ニッパーでヒゲを全部落としてしまいましょう。クロスバイクなどでよく発生する症状です。

これはNG例。インナーケーブルは専用の工具でカットしましょう Photo: Shusaku MATSUO

 アウターケーシングのエンド処理にも使用します。ケーブルカッターでアウターワイヤーをカットした際、ケーシング内部の(骨格に相当するスパイラル構造の部位)金属素材が潰れたり変形して、中の樹脂チューブに干渉する場合があります。その際に、変形した部位を除去するのに強力ニッパーが活躍します。余分な部分をカットしたらヤスリで表面を均し、千枚通しで潰れたチューブの開口部を開いて、中を通るケーブルとケーシングのメタル構造部が干渉しない様に処理しましょう。

専用工具と使い分ける

 ニッパーは先述の通り、整える作業でのみ使います。ロードバイクの整備における切る作業には各々専用の工具が用意されているので、メイン作業はそちらを使いましょう。

 例えばリムブレーキや機械式変速機のケーブル切断専用工具「ケーブルカッター」が挙げられます。

ケーブル切断専用工具「ケーブルカッター」 Photo: Shusaku MATSUO

 まずインナーケーブルは、細いメタルワイヤーを編み込んで縄状に作られています。また、アウターケーシングは(ブレーキとシフトで構造こそ違うものの)、インナーケーブルを通すための合成樹脂チューブの周りに、金属素材で筒状の補強を成し、外周をやはり樹脂でカバーして、柔軟かつ強度のあるホース状の構造となっています。これらを切る場合は、インナーは束ねてあるワイヤーがバラけない様に、アウターは切り口が平に潰れてしまわない様に切る必要があるため、湾曲形状の刃で包むように挟み切る専用工具のケーブルカッターが最適です。

 しかし、湾曲刃はケーブル自体を挟むのには適した形状ですが、細かい突起や小さいバリなどを根本から掴むは苦手。そこで、刃の合わせ面が一直線で細かい部位に使用でき、切り面が綺麗なニッパーの出番です。組み合わせて仕上げると効率的ですね。

 お次は、ブレーキやドロッパーポストなどの油圧ホース切断専用工具「ホースカッター」です。

 油圧ホースのエンド部には、「コネクターインサート」というメタルパーツを圧入する必要があるのですが、ホースエンドの切り口が水平かつ綺麗に整っていないと密閉ができず、液漏れや油圧抜けの危険性があります。ホース自体は合成樹脂製なので普通のカッターでも切る事はできますが、専用工具であれば確実に適切なカットができるため、やはり専用のホースカッターが最適。

油圧のホースをカットする「ホースカッター」。ニッパーはこの作業後に活躍します Photo: Shusaku MATSUO

 なお、ホースは樹脂製ですが、中途半端に硬度があってしかも中は空洞なので、ヘタに潰してしまうと変形やひび割れを起こす可能性があり、やはり密閉性に問題が出ます。そのため、ホースを分断する作業自体には、ニッパーを含めたはさみ形状の工具は使用しない方が良いでしょう。

 ホースカット後、外皮のナイロン樹脂などのバリが残っている場合は、精密ニッパーでそれら細かい異物を除去し、断面と周囲を綺麗に均しましょう。要は「コネクタインサート」や「オリーブ」といった中継部品を圧着させて密閉しなければいけないので、隙間を生んでしまう危険がある異物や突起は、可能な限り綺麗に取り除く事が重要です。こういう場面では、小回りのきく精密作業用ニッパーが生きます。

 繰り返しになりますが、工具毎に得意としている場面が違います。無理に使い回すと、良い結果が得られないばかりか部品の破損や作業の失敗につながりますので、上手く使い分けましょう。

まとめ

 自転車整備でのニッパーの役割は、専用工具での作業を補完するための道具です。見栄えを良くするだけでなく、部品同士の合わせ部分を整えることで、スムーズな動作を促してバイク本体の性能を引き出します。ヤスリも同様ですが、メーカーの整備マニュアルには基本載っていません。ですが、あると無いとではできる作業の幅が変わりますし、あるとなんだかんだでメチャ便利。使用頻度はとても高いのでぜひ揃えておきましょう。

おすすめ製品

 「よくわかんないけどとりあえず1本良い物を、頑丈でよく切れる万能なニッパーを買いたい!」という場合にはコレ買っておけば間違いなし。刃の先と中で角度が違う複合構造になっており、硬いモノでもガッツリ切れる強さと、先端の切れ味の良さを両立した逸品。僕も3年ほど、毎日のように結構荒く使ってきましたが、まだまだ現役。さすがのKTCと言った感じですね。大きすぎず小さすぎずサイズ感も丁度良く、とにかく使い易い。強力ならコレ。おすすめです。

 ドイツを代表する質実剛健な工具ブランドといえばこのクニペックスです。正直、ISO規格のニッパーは刃先まで厚くゴツいモノが多く、自転車には正直オーバースペックな場合が多いので、サイズ的には160mmが限界かな。頑丈さ、切れ味共に文句のつけようがない。同サイズでも更に効率カットできる「X-CUT」や「ツインフォース」など、ラインナップも多彩。まあ、そこまで強くなくても充分。スタンダードで十二分。超強力。

 日本が世界に誇る金属加工の街、新潟県は燕三条に本社を構えるプラモ特化型工具メーカー「ゴッドハンド」。名前からしてユニークですが、切れ味と切り口の美しさから内外のモデラーに高い評価を得ている実力派ブランド。自転車整備用にケーブルカッターなんかもラインナップしてるので、それもオススメ。バリ取りやタイラップのカットがメインなら、普通のニッパーが最適です。商品名そのまんまですね。

■ラモーン 村田悟志(むらたさとし)

プリートことホアキン・ロドリゲス氏が来日した際、一緒に鎌倉で遊び歩いてたらなんか適当につけられたあだ名がラモーン。理由はまだ無い。元はモーターサイクル雑誌の編集者、なんか色々あってロードバイクの輸入代理店勤務ののち、秋葉原のバイクショップ【ラモーンバイクス】(現U2バイクス)でついこの間までメカをしていた。スシドラゴンこと小林海選手の飲み仲間、たまに日本でのメカを担当したりもする。所属:(株)オールトラスト(株)オールトラスト

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