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おすすめな汎用工具と使い方<4>元自転車店員が教える「ラジオペンチ」の使い方・選び方 プロショップで使われるオススメも紹介

by 村田悟志 / Satoshi MURATA
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 自宅で自転車整備をする際に欲しい汎用工具のおはなし。第4回目は、普通のペンチよりスリムで長くて使いやすい「ラジオペンチ」をご紹介します。

掴む、潰すと活躍する「ラジオペンチ」について使い方とおすすめ製品を解説! Photo: Shusaku MATSUO

プライヤー?ペンチ?

 一般的に「ペンチ」と呼ばれているのは、挟み部分が短くて幅があり、根本には刃がついている「コンビネーションプライヤー」という銅線とか電線を掴んだり切ったりする挟み工具の総称です。色々な機能を持ったモノが存在するので、用途を絞って選ぶと良いでしょう。

 主にロードバイクへ対して使うのは、挟み部分が長細いタイプの「ロングノーズプライヤー」通称“ラジオペンチ”。名前の通り、ラジオなど小型の機械整備用の電工工具で、奥まったところにある小さい部品を掴む・曲げる・挟むなど、用途が自転車にも最適です。なお、掴むことに特化した類似の工具「テレフォンプライヤー」等でも大丈夫ですが、個人的にはラジオペンチの方が使い勝手が良いので、そちらを中心にご紹介します。1本持っていると色々と役に立ちますので、是非使って欲しい工具です。

ラジオペンチを選ぶポイントは?

①サイズを選ぶ

 ラジオペンチの標準サイズは、JIS規格で唯一規定されている全長160mm。このサイズが恐らく製品数が一番多いです。他にも規定されていないだけで多種多様なサイズ、特殊形状などが存在します。が、スタンダードサイズが抜群に使いやすいので、最初の1本は150~160mmがオススメです。

最初の1本はスタンダードな150~160mmがオススメ Photo: Shusaku MATSUO

②形状を選ぶ

 ラジオペンチは先すぼみの形状が基本ですが、さらに狭い場所での作業に適した細身のピンセット形状の物や、先端まで同幅で掴む作業に特化したストレート形状、他にも先端に角度が付いている形状なんてのもあります。各種持っていれば便利ですが、やはり標準の先すぼみ形状の物が汎用性に優れていますので、これも標準が良いでしょう。

③精度と強度で選ぶ

 JIS規格では本体の強度などの規定があります。有名なメーカー製の工具は当然のようにこの規定を超える性能を持たせているわけですが、安物は大抵その限りではありません。ラジオペンチは細身の工具ですので、素材自体に十分な強度がないと、すぐに先端が曲がったり、開いたりして壊れますし、酷い物だと最初からまともに掴めない場合もあります。信頼できるメーカーの製品を選びましょう。

使い方と注意点

■使い方

①物を掴む時は、滑り止めの溝が刻まれているはさみ部の範囲内で掴む

②細身のワイヤー等を切る場合は、中央部のカッター部で挟む

③様々な部位が付いた万能タイプ等は説明書の指示に従う

■注意点

①ラジオペンチははさみ部が細いので、部品の中心を意識して掴む

②頑丈ではあるものの、基本的には精密作業用なので過剰なトルクを掛けない

③切断作業をする際は保護めがね等を使って目を守る

④カッター部はほとんどの場合は両刃なので切断面は山形に。切断面を平坦に均したい場合は片刃のニッパーと「使い分ける」こと
代表的な切る工具「ニッパ」 硬さに合わせて「片刃」と「両刃」を使い分け』(連載:工具はともだち)

⑤細かい部品を掴む場合は、部品を落としてもなくならないようにトレー等を準備し、「その上で作業をする」こと

使用例

 一言で言うとラジオペンチは万能選手で、作業補助工具として役に立つアイテムです。基本は、狭い場所でものを掴むための工具ですが、他にもさまざまな作業で役に立ってくれます。

①狭い所での作業

 まずは、フル内装式のフレームを用いた作業や、カーボンハンドルにアウターケーブルを通す作業。正直、カーボンパーツの内壁は見えない部分のため、有名ブランドのフレームでも全然綺麗じゃなかったりします。頑張ってアウターを通して「あと少しでイケる」なんて時に引っかかって動かなくなったりするんです。そんな時でも、端が見えていたらしっかり掴めるわけですね。

 また、固着しかかっているワイヤーガイドやグロメット類なども、ギリギリな範囲で掴めるという場合が多いので、軽くつまんでえぐらない程度に多方向へ力を加えることにより、周りを傷つけずに外せたりもします。塗装面を傷つけないためにもマスキングを忘れずに。

掴んだワイヤーにテンションをかける際に便利 Photo: Shusaku MATSUO

②ケーブルテンションの調整

 機械式変速機や、キャリパーブレーキの調整時にもあると便利ですね。主にインナーケーブルの張力調整でよく使います。というのも、インナーケーブルを交換せずに、調整や清掃・グリスアップだけして再度固定する場合など、再利用ケーブルは、固定部から先端までの余り部分しか掴む場所がないので、その短い場所を確実につかんで引っ張るにはラジオペンチがちょうど良いのです。

 ワイヤーの張りが緩めでも、テンションアジャスターで調整すれば良いのですが、ライド中には何が起きるかわかりませんので、なるべくアジャスト範囲は残しておきたいところ。そこで、ラジオペンチで余剰部分を掴んで軽く引っ張り、ケーブルにテンションを掛けつつ固定することで、アジャスターに余裕を持たせつつ初期テンション高めで固定できます。

 また、シマノのフロントディレーラーの「ロングアーチ」と「トグル機構」のタイプを使っている方にもオススメ。これらは特に初期テンションを高めに固定する必要があるのですが、微調整をしながら狭い場所でケーブルを取り回す作業になるので、ラジオペンチの取り回しの良さが生きます。

 ケーブルに引っかけてテンションを維持する「インナーワイヤープライヤー」という専用工具もありますが、微調整しながら作業ができ、また汎用性が高いラジオペンチが個人的には好みだったんですよね。ただ、苦手な人もいるでしょうから、工具箱と予算に余裕がある方はこちらの専用工具を一度使ってみるのも良いかもしれません。

③ワイヤーエンドキャップのカシメ

ワイヤーのエンドキャップをかしめる時にも活躍 Photo: Shusaku MATSUO

 ワイヤーの先っぽがバラけないようにカシメるシルバーのフタ、アレです。ワイヤーを差し込んだら、はさみ部の滑り止めの溝より少し下の滑り止めのない平らな部分で、キャップの開口部を平たく潰します。その後、カッター部分」で中ごろを挟み、切断しない程度に平行に2本ほど潰しを入れます。コレで簡単には抜けません。

まとめ

 ニッパーとペンチでも合わせれば似た感じには仕上げられますが、ラジオペンチなら1本で済みます。作業中の様々な場面で役に立つので、作業エプロンのポケットにはラジオペンチを1本放りこんでおくととても便利です。

 細身の工具ですので、素材の品質、製造精度によって耐久性と使い勝手が大きく変わってきます。品質の悪い謎メーカーの工具のせいでバイクやパーツを壊すなんてこともありますので、長く使える良い工具を選んでくださいね。

 国産のペンチメーカーと言えば「フジ矢」。ペンチのJIS規格はフジ矢製を基に規定されたほど、わかりやすく高品質・高耐久な日本製品。現在も職人による刃入れや、各製品の品質管理を厳格に行っているガチブランドで、もう男らしさしかない。とりあえずいいプライヤーを一つ手に入れるならココで決まり。この350-150は規格で定められたそのものの内容で、飾りっ気も特殊な機能もないが、徹底的に基本性能を突き詰めた「質実剛健な作り」が潔い。渋い。なぜか実全長160mmのJIS規格なのに表記は150mm、でも最高。

 海外ブランドで握りモノと言えばドイツの「KNIPEX」。こちらも、長期の愛用に耐える高い耐久性、しっかりと対象を捉える精度の高さ、カッター部の鋭い切れ味を誇り、世界中で多くのファンを抱える定番ですね。独自のミキシングレシオから生まれる強靱な鉄素材を、丁寧に加工して作られる製品の質の高さに定評有り。グリップ部分には「硬度が異なる」赤と青2種類の樹脂を使用。しっかり握れて、滑りも良い、良いとこ取り仕様。こっちも最高。

 最後は大阪に本社を構える工具メーカー「エンジニア」の特殊コンビネーションプライヤー「ネジザウルス」。この工具、「錆びたりナメてしまったネジの、頭を掴んで回す補修作業専用工具」という、一見ニッチな特殊工具。しかし、安価で低品質なネジが連日トラブルを起こしまくる自転車屋業界においては、常にどこかで大活躍している超人気工具。工具箱に1本入っていると安心感が違う。ラジオペンチとは違う意味で必須。

ラモーン 村田悟志(むらたさとし)

プリートことホアキン・ロドリゲス氏が来日した際に適当につけたあだ名がラモーン。理由はまだ無い。元はモーターサイクル雑誌の編集者、なんか色々あってロードバイクの輸入代理店勤務ののち、秋葉原のバイクショップ・ラモーンバイクス(現U2バイクス)でついこの間までメカをしていたモジャモジャな人。スシドラゴンこと小林海選手の日本での活動時にメカを担当したりもするが、実際は飲み仲間。昨年の全日本では雨の駐車場で半泣きでタイヤ交換していた。いつか仕返ししてやる。所属:(株)オールトラスト

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