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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<346>2020年ツールのメンバー、スーダル、トレック・セガフレードが発表 レースを取り巻く動きが活発に

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2020年7月に入り、世界各地でのレース活動が解禁になる。タイミングを同じくして、有力チームがビッグレースに向けたトレーニングキャンプを実施するするなど、動きが一気に活発になってきた。そんな中、ロット・スーダルとトレック・セガフレードがどこよりも早く2020年のツール・ド・フランスの出走予定メンバーを発表。開幕まで約2カ月ある段階での発表には、相応の目的があるという。今回は、両チームが明らかにしたメンバーとともに、早期発表のねらいについて押さえる。

8月29日開幕のツール・ド・フランスに向けて、いち早くメンバー発表を行ったロット・スーダル。エーススプリンターのカレブ・ユアン(右)、ベテランのフィリップ・ジルベールともにそろって出場を果たす =パリ〜ニース2020第1ステージ、2020年3月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

ユアンはツールとジロでスプリントエースを務める

 シーズン再開に向けたこの時期に先陣を切ってツールのメンバー発表を行ったのは、ロット・スーダル。いまやプロトンではナンバーワンスプリンターの呼び声も高い、カレブ・ユアン(オーストラリア)が絶対的なチームリーダーとなって本番に挑むことになる。

 チームは6月24日、SNSとオンラインでメンバー発表を実施。選出されたのは以下の通り。

ロット・スーダル ツール・ド・フランス出場選手

ステフ・クラス(ベルギー)
カレブ・ユアン(オーストラリア)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー)
ロジャー・クルーゲ(ドイツ)
フィリップ・ジルベール(ベルギー)
ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)
ティム・ウェレンス(ベルギー)
トーマス・デヘント(ベルギー)

・リザーブ
トーマス・マルチンスキー(ポーランド)
フレデリック・フリソン(ベルギー)

※選手名の表記はチームの発表順による

 チームオーダー的には、昨年の大会でステージ3勝を挙げたユアンを中心としながら、“プランB”としてデゲンコルプも状況を見ながらチャンスをうかがう構え。また、前回の第8ステージで逃げ切り勝利を飾ったデヘントは、今年も“逃げ屋”としての地位を保つべく積極的に動いていくことが期待される。

シーズンインから絶好調のカレブ・ユアン。ツール本番では昨年のステージ3勝を上回る活躍が期待される =UAEツアー2020第5ステージ、2020年2月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チームのゼネラルマネージャー、ジョン・ルランゲ氏は「8月のレースまで待つ意味がないので、現時点でのツールメンバー発表になった」と理由を説明。広範囲での移動による感染リスクを抑えるため、高地トレーニングを避けて、ベルギーの丘陵地帯・アルデンヌ地域での集中トレーニングを実施するなどしてメンバー間の連携を深めている段階だという。本番へ向けたビルドアップの機会として、ストラーデビアンケ、ツール・ド・ポローニュ、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、ツール・ド・ワロニーといったレースを活用していく計画も明らかにした。

 この方向性によって、その他ビッグレースのシフトも順調に編成できている様子。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで個人総合8位になったカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー)は、今年ジロ・デ・イタリアで総合エースを務めることが内定。ツアー・ダウンアンダーのウィランガヒル(第6ステージ)を制したマシュー・ホルムズ(イギリス)、コービー・ホーセンス(ベルギー)もイタリアでグランツールデビューを果たす。さらにはユアンがツールに続いて参戦する見込みとあり、強力メンバーで臨むことになりそう。

 また、ブエルタにはデヘントのほか、マルチンスキー、サンデル・アルメ(ベルギー)、トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー)、ハーム・ファンフック(ベルギー)が出場する予定だ。

トレック・セガフレードはモレマとポート中心にツールを戦う

 6月26日にはトレック・セガフレードがツールとジロの最終候補選手を発表。ツールはバウケ・モレマ(オランダ)とリッチー・ポート(オーストラリア)、ジロはヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が総合リーダーとして走る見通しだ。

トレック・セガフレード ツール・ド・フランス最終候補選手

バウケ・モレマ(オランダ)
リッチー・ポート(オーストラリア)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)
ニクラス・エイ(デンマーク)
アレックス・キルシュ(ルクセンブルク)
トムス・スクインシュ(ラトビア)
エドワード・トゥーンス(ベルギー)
マッズ・ピーダスン(デンマーク)
ケニー・エリッソンド(フランス)

※選手名の表記はチームの発表順による

トレック・セガフレード ジロ・デ・イタリア 最終候補選手

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
ジュリオ・チッコーネ(イタリア)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア)
ニコラ・コンチ(イタリア)
ジャコポ・モスカ(イタリア)
アントニオ・ニバリ(イタリア)
ピーター・ウェーニング(オランダ)
ジュリアン・ベルナール(フランス)
クーン・デコルト(オランダ)

※選手名の表記はチームの発表順による

 両レースともにこの中から1人を外す形で本番へと向かうことになる。これら最終候補選手をメインにしたトレーニングキャンプも組まれることになっている。ツール組は7月12日から28日まで、イタリア国境に近いプロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方のイゾラ2000で実施。ジロ組は7月10日から25日にかけて、イタリア・ドロミテ山塊のパッソ・サンペッレグリーノでのプログラムが組まれている。これらはいずれも、UCI(国際自転車競技連合)や各国が設定する新型コロナウイルス感染対策に完全準拠して行う。

 なお、ブエルタについては今後のチーム動向にしたがいながらとなるが、モレマが総合エースとなることは決定しているという。チームは早急に他のレースプログラムの出場メンバーも決めていくとし、女子チームについても近日中に計画発表ができると述べている。

トレック・セガフレードでグランツール路線の中心的存在のバウケ・モレマ。ツールとブエルタで総合成績を狙っていく =ジャパンカップ サイクルロードレース2019、2019年10月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

脚質に沿ったグループ分けで目標レースへの意識を高める

 ロット・スーダルやトレック・セガフレードに限らず、多くのチームが数人ずつに分けてのグループトレーニングの実施やキャンプ計画を明らかにしている。感染防止の観点から大人数での集団走行を避けるとともに、脚質別にグループ分けを行って目標レースを意識したメニューを消化していくこともねらいとなっている。

アージェードゥーゼール ラモンディアールは脚質や目的に合わせて少人数のグループでトレーニングを実施している(写真はイメージ) © Vincent Curutchet

 実際に脚質別グループを編成しているチームを例に挙げると、6月下旬からキャンプを進めているアージェードゥーゼール ラモンディアールは、ロマン・バルデ(フランス)を中心にツールを目指す選手たちが集合。7月に入り、クラシックレースが目標になる別グループがトレーニングを進めていく予定だ。

 本来の6月下旬または7月上旬開幕のツールであれば、前哨戦といわれるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネやツール・ド・スイスが終わった段階で出走メンバー発表を行うチームが大多数だが、シーズン中断とそれにともなうレーススケジュールの大幅な変更、さらには感染防止対策を施しながらのレース活動とあり、今年に限ってはどのチームにもこれまでにないイレギュラーな対応が求められている。

 ツールのみならずビッグレースがひしめくシーズン再開後のスケジュールを考えると、ルランゲ氏の「8月のレースまで待つ意味がない」という言葉にもあるように、早い段階でメンバー選考を行ったうえで、選手たちには目標に向かって進んでいけるよう環境設定していくチームが多くなるものと予想される。

 この先しばらくは、主要レースに向けた有力選手・チームの動向に注視していくと、よりシーズン再開への期待が高まっていくはずだ。

今週の爆走ライダー−ステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 このほどチームが発表したツールのメンバーに名を連ねた24歳。実際のところ、自転車王国ベルギーでもそれほど名を知られる存在ではないそうで、当の本人も「ツール出場は想定外だった」と出場決定に驚く。

初のツール出場を決めたステフ・クラス。自身でも驚きのメンバー入りの一方でチームが重視する役割が与えられている =UAEツアー2020第4ステージ、2020年2月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その一方で、チームは彼に全幅の信頼を置く。首脳陣が「ツールを戦うにあたって欠けていたパズルの最後のピース」と表現する彼に与えられている役割は、プロトンのコントロールである。

 この役割、昨年まではマキシム・モンフォール(ベルギー)が担ってきた、スプリントメインのチームにとっては大事な仕事の1つ。ユアンが前回のツールで3勝を挙げ、大成功した背景にはモンフォールのレース構築が大きなウエイトを占めていた。モンフォールが引退したいま、今季チームに加わったヤングライダーがその役目を引き継ぐ。

 逃げグループとのタイム差を一定に保ちながら、集団のペーシングや他チームの動きに目を凝らす。スプリントのように華やかではないが、誰もができる仕事でも決してない。チームの勝利に向けた第一波を託されるのは、適性のある選手だけである。

 カチューシャ・アルペシンで走った昨年、ブエルタでグランツールを経験。それも、けがでほとんどトレーニングを積まずして走ったといい、そんな状態でも3週間を走り切ることができ大きな自信になったという。

 「まるで夢のよう」というツールデビューに向けても、ビジョンは明確。「山岳ステージでも常にカレブ(ユアン)と一緒に走るよ」。ユアンがスプリントでどれだけの勝ち星を得られるか、そのカギを自らが握っていることをすでに理解している。

初のツールを前にモチベーションが高まるステフ・クラス。エーススプリンターのカレブ・ユアンのお目付役としても重責を担う =UAEツアー2020第2ステージ、2020年2月24日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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