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栗村修の“輪”生相談<182>17歳男性「スタートラインで強豪校の雰囲気を醸し出す方法を教えてください」

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 こんにちは、17歳男子です。

 スタートラインに並んだ時に、強豪校ですよっていう雰囲気を醸し出すには、どうすればよいのでしょうか?

 私は、自転車競技部として高体連で走っているのですが、スタートラインに並んだ時に周りの速そうな人に圧倒され、最前列にいることを躊躇してしまいます。せっかくのレースなのでかっこよく写真に写りたいのでどうか教えてください。

(17歳男性)

 とても17歳とは思えない、的確なご質問です。なにが的確かって? それは、質問を寄せた相手がです。

 そう、なにを隠そうこの僕は「スタートライン評論家」でもあるのです。僕が「ガッツポーズ評論家」であることは良く知られていると思いますが、実は他にも研究を進めていたということです。思い出しますね。スタートラインに並ぶヨーロッパの選手の写真を、穴が開くほど眺めていた子供のころを。

 そんな僕ですが、長年の研究の結果、美しいスタート待ちには3つの要素があることに気づきました。雰囲気、視線、そして「斜め」です。順に解説していきましょう。

 まず雰囲気ですが、強豪プロの醸し出す空気感には共通点があることにお気づきでしょうか。それは「けだるさ」です。

 ああ、今日のレースも圧勝しちゃうんだろうな…。どこかに自分を本気にさせてくれるヤツはいないかな…という、勝つことが日常になってしまっている、超強豪選手ならではのけだるさです。具体的に言うと、家のリビングでリラックスしているような雰囲気ですね。加えてため息のひとつもつけば満点です。

2018年の全日本選手権ロード・男子ジュニアのスタートライン。強そうなのは誰? Photo: Ikki YONEYAMA

 次に、視線。強い選手の目は一点を見つめています。キョロキョロしません。そうですね、イメージとしてはあなたが1位でくぐるであろう、はるか彼方のゴールラインを眺めやる感じでしょうか。

 そして最後に、姿勢。強い選手は左右非対称の、どこか斜めの姿勢でスタートを待ちます。直立不動じゃありません。具体的にお伝えすると、トップチューブをまたいだ状態で片足だけペダルにステップインし、トップチューブの上にお尻を乗せ、ハンドルに肘をつくといいでしょう。これで、スキのない強豪選手の出来上がりです。最前列に並んでも周囲に一目置かれるでしょう。

 念のため付け加えると、この姿勢は立ちごけのリスクもありますから、十分に練習してください。最前列で立ちごけをして周囲を巻き込むと引退に追い込まれかねません。

 逆にいいますと、上記の逆を行ってしまうのがNGパターンということです。すなわち、質問者さんとチームメートが揃って冷や汗を流し、気を付けの姿勢で視線を泳がせていたら、どこからどう見ても弱小校でしょう。

片足ペダルの斜め姿勢は強そうの基本!(ツール・ド・フランス2018) Photo: Yuzuru SUNADA

 ただし、です。今回のご質問に関しては、これだけではダメです。なぜなら質問者さんが高校生だからです。

 勝手な話ではありますが、大人たちは質問者さんのような若者に純真さやひたむきさを求めがちです。そんな大人目線からすると、頬杖をついてダルそうにしている質問者さんは、ちょっと不真面目に見えちゃうんですよ。若者らしくない! とか。

 かといって、美しいスタート待ちの姿勢の法則は変わりません。このジレンマには僕も長年悩まされてきましたが、やがて解決策を見出しました。心の中で「感謝」すればいいんです。

 レースの準備をしてくれた皆さん、ありがとう。練習に付き合ってくれたみんな、ありがとう。今日、僕と一緒に戦ってくれるみんな、ありがとう…。そんな感謝の気持ちを持つだけで質問者さんの目は澄み渡り、並々ならぬ大物感を醸し出せるでしょう。カメラマンからも激写されること間違いなしです。

 最後にいちおう補足しておきますと、ここまでの強豪選手感を振りまいた以上、1周目からちぎれることは許されません。圧勝を目指してくださいね。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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