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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<345>ミッチェルトン・スコットは新スポンサー契約交渉が白紙に 活性化するロード界動向

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 7月に控えるロードシーズンの本格再開に向け、日ごとに活発になるロード界の動向。この1週間で、あらゆる話題がシーンをにぎわせている。なかでもビッグトピックとなるのは、ミッチェルトン・スコットの新スポンサー交渉の決裂。今回はその実情を詳しくお伝えしたい。また、どこよりも早く国内選手権を開催したスロベニアをリポート。プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)やタデイ・ポガチャル(UAE・チームエミレーツ)らが大活躍している。

新スポンサー契約発表から急転、ミッチェルトン ・スコット(集団先頭の選手たち)は現体制のままシーズン再開に向かうことになった =ブエルタ・ア・アンダルシア2020第1ステージ、2020年2月19日 Photo: KARLIS / SUNADA

ミッチェルトン・スコットは体制変更なくシーズンを駆ける

 前回のこのコーナーで報じたミッチェルトン・スコットの新スポンサーだが、その後情勢は急転。チームを運営するグリーンエッジサイクリングが6月18日に、新たなパートナーとして迎える予定だったスペインのマヌエラ財団との契約を白紙撤回することを明らかにした。

「チーム マヌエラフンダシオン」として新たなデザインのレースジャージも発表していたが、幻のプロジェクトに終わる ©︎ GreenEDGE Cycling

 チームは5日に同財団との契約を結び、12日に正式発表。同時にチーム名を「チーム マヌエラフンダシオン」とすることと新デザインのジャージを披露していた。しかし、その後契約の細部を詰めていく段階で問題が発生。結果として交渉が決裂したとみられる。

 これに関して、チームオーナーのゲーリー・ライアン氏はリリースの中で「最初の発表(12日)以降、交渉に動きがあり、(マヌエラ財団との)関係が進展しないとの結論に至った」と説明。今後は、ライアン氏が財政面と技術的なサポートを行い、現在のミッチェルトン・スコットの名のままシーズンを送るとしている。一部報道では新型コロナウイルス感染拡大の影響で選手・スタッフの賃金が7割減になっているとされているが、これに関してもUCIワールドツアー再開の8月以降には全額払えるよう取り組んでいくと述べている。

 この混乱について、欧米のサイクルメディアの報道を総合すると、スポンサーとしてだけでなく2021年以降のチーム所有権も求めたマヌエラ財団に対して、グリーンエッジサイクリング側は所有権の維持を主張。この点で双方の考えの相違が発生し、交渉がまとまらなかったというのが大筋の見方だ。マヌエラ財団側の交渉人として、かつてのジロ・デ・イタリア王者のステファノ・ガルゼッリ氏が席に就いていたが、「すでに正しい手続きが行われ、マヌエラ財団によって専門的に処理されたことが確認できる」と契約の有効性をアピールしており、この問題がどのような形で収束するかはまだ見えていない。

UAEツアーをアダム・イェーツが制するなど、シーズン序盤は好調だったミッチェルトン・スコット =2020年2月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 こうした中、ミッチェルトン・スコットのお膝元、オーストラリアのサイクルメディアでは、新契約がまとまったとした12日の発表直後から、同財団の不透明性を報道。代表であるフランシスコ・フエルタス氏について、スペイン南部のグラナダに拠点を置き、自動車販売店や建設会社のオーナーを務め、スポーツのスポンサーシップにも積極的だと紹介。そのうえで、過去にはサッカーチームへのスポンサー料支払いが滞ったり、同地のお祭りへの出資で多額の負債を抱えたことに触れ、今回のケースにおいても活動実態のない非営利団体によるスポンサー着任に多くの謎があるとレポートしていた。

 「シーズン再開に向けて可能なかぎり最高のサポートを提供していくことを決意している」とライアン氏が述べるように、現体制のままレースへと戻る決意を固めたチーム。マヌエラ財団とどう折り合いをつけていくのかが気になるところだが、ひとまずはこれまでと変わりなくレースシーンを駆けていくことになる。

スロベニアで国内選手権開催 ログリッチが新王者に

 日本では先ごろ、8月開催を目指していた国内選手権(全日本選手権ロードレース)の中止が発表されたが、スロベニアでは21日に同大会のロードレースが行われた。2020年の国内王者を決める戦いは、ログリッチがポガチャルとのマッチレースを制して優勝。同国のチャンピオンジャージを獲得している。

6月21日に行われたスロベニア選手権でプリモシュ・ログリッチが優勝 Photo: Team Jumbo-Visma

 東欧の一大勢力となっているスロベニア。このレースにもUCIワールドツアーを主戦場とするライダーが9人参戦した。146kmで争われたレースは、ヤン・トラトニク(バーレーン・マクラーレン)ら4人の逃げが最終の6周目まで先行したが、最後に控えた平均勾配7.9%・登坂距離8kmの上りで、追走していたログリッチとポガチャルが先頭へ。現在のトッププロトンが誇る大物2選手による勝負は、残り2kmでアタックを成功させたログリッチに軍配。ポガチャルに10秒差をつけてトップでフィニッシュラインを通過した。

 勝ったログリッチは、「この状況でようやくレース再開ができ、自分たちのベストを尽くして走れることは本当に素晴らしい。シーズン再開初戦で国内タイトルを獲得できとてもうれしい」とコメント。ポガチャルとの一騎打ちについては、「最後の上りが非常にタフなレースだった。春のレース結果だけ見れば、タデイ(ポガチャル)が優勝候補筆頭で、彼に勝つことは容易ではなかった。この数日間は上りをどう攻略するか考えていて、その通りに攻撃する必要があった」と振り返った。

早い段階で新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めていたスロベニア。当初予定していた日程で国内選手権開催が実現した Photo: Team Jumbo-Visma

 スロベニアは、イタリアなどの周辺国と比較しても新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いており、5月半ばにはヨーロッパ諸国では最も早いタイミングでのロックダウン(都市封鎖)の解除がなされていた。こうした措置の甲斐あって、国内選手権も当初の日程通りの開催が実現した。

 国内選手権の開催に関しては、UCI(国際自転車競技連合)が8月22日から23日にかけて行うよう設定。大多数の国が同日程でのレース実施を目指しているが、最終的な開催判断は各国の情勢にゆだねられるところが大きい。優勝者に贈られ、おおよそ1年間着用が義務付けられるチャンピオンジャージの扱いなども、今後の検討事項となってくるものと考えられる。

今週の爆走ライダー−ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAE・チームエミレーツ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ベルギー・フランドル地方出身の選手らしく、常に石畳系のレースが傍らにあるような環境でサイクリングへの愛情を育んできた。だから、自分が石畳を制することを夢見るし、その日が来ることを誰よりも信じている。

ツアー・ダウンアンダーを走るジャスパー・フィリプセン。スプリントや石畳で将来を嘱望されている =2020年1月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、今年に限ってはその機会が失われた。クラシックシーズンを前にレースシーズンが中断。石畳系レースの延期が決まるたびに、「いつ本番がやってきても対応する」と口にしていたが、どうやらそれもかなわない見込みだ。なぜなら、シーズン再開後の最大目標はブエルタ・ア・エスパーニャ(10月20日~11月8日)に決まりそうだから。同時期に開催されるツール・デ・フランドルやパリ~ルーベは、チームメートに託すことになる。

 チーム事情は理解しており、不満はないという。何より、グランツールのスプリントステージで力を発揮できると評価されていることを前向きにとらえる。昨年はプロ1年目ながらツール・ド・フランスのメンバー入りを果たし、3度のトップ10フィニッシュ。ステージ優勝への手ごたえはつかんでいる。

 ジュニア時代から石畳とスプリントでトップを走ってきた22歳。その才能は関係者の誰もが認める。プロ入りにあたっても争奪戦となった中から現チームが契約に結び付けたことを、“勝利”と報じたメディアもあったほど。今年に関してはスプリントで、その可能性を広げていく。

 彼にとってのスターはトム・ボーネン。出身地が同じとあり、「次世代のトム・ボーネン」と称されることや、同年齢時のボーネンと比較されることはいつものこと。ジュニア時代には彼のトレーニンググループに「紛れ込んだ」ことも多々あったという。関係者いわく、レーススキルや意識の高さ、話す内容までもがボーネンのようとの評。どうやら、大物になる下地は固まりつつあるようだ。

ツアー・ダウンアンダーではポイント賞を獲得したジャスパー・フィリプセン。シーズン再開からはブエルタ・ア・エスパーニャを最大目標に走ることが決まった =2020年1月26日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

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