新作ホイール3種をインプレッショントレックだけではもったいない! ルックの性能を引き出したボントレガーの新「アイオロス」の走り 

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 新登場したボントレガーのホイール「アイオロス」シリーズ。車種やブランドに縛られない純粋なスペックを追求したホイールとして今季デビューした。果たして従来から根強いイメージの「ボントレガー=トレック専用」という図式を崩すことは可能なのか。自転車ライターの安井行生さんと編集部の松尾修作がルックのバイクで意欲作を試した。

ボントレガーの新型「アイオロス」シリーズをルックのバイクでインプレッション Photo: Masami SATOU

バイクメーカーが本気で作るホイール

 トレックの新型エモンダとともに発表となったアイオロスは全部で3グレード。ハイエンドモデルの「アイオロスRSL37」、ミドルグレードの「アイオロスプロ37」、コストパフォーマンスに優れた「アイオロスエリート」という住みわけだ。

軽さとエアロを両立した「エモンダ」と同じアプローチで開発された新型「アイオロス」 ©TREK

 RSLに採用された新設計の37mmリムは、他社のハイトが高いリムと比べても空気抵抗値が低いうえ、ハイトが低いリムのモデルよりも全体の重量を抑えた実験結果もある。素材はもちろん、同社が誇るOCLVカーボンを使用。ディスクブレーキ専用設計となった結果、リムにシューとの摩擦熱を放熱させる構造を取り入れる必要がなくなったため、剛性と強度を落とさずに更なる軽さを実現させたのである。

ハイエンドモデルの「アイオロスRSL37」 Photo: Masami SATOU
レーザーエッジングで施されたロゴはシンプルかつ高級感のある仕上がりに Photo: Masami SATOU
フリーには伝達効率を高める「Ratchet EXP」ハブを採用 ©TREK

 ミドルグレードのプロはRSLと同じリム形状であるが、素材のグレードと製造方法の簡素化によって大幅なコストダウンを実現し、前後セットで18万円台と手の届きやすい価格を実現した。重量は1505gと、ディスクブレーキモデルのホイールとしては申し分ない軽さである。

ミドルグレードの「アイオロスプロ」 Photo: Masami SATOU
リムは上位モデルのRSLと同形状 Photo: Masami SATOU
スポークはDT「エアロライト」で構成。前後共に24本組 Photo: Masami SATOU

 エリートは35mmと50mmのリムハイト2種をラインナップ。共にカーボンホイールでありながら、前後セットで12万円台というプライスを付けた戦略的なモデルで、エントリークラスの車体からのグレードアップに最適な製品だろう。チューブレスタイヤにも対応している。

優れたコストパフォーマンスを誇る「アイオロスエリート」 Photo: Masami SATOU
ロゴはステッカータイプを採用。デザインは上位モデルを踏襲したモノトーン基調に Photo: Masami SATOU
Grand Stradaのバテッドスポークを採用 Photo: Masami SATOU

 どのモデルも空力と軽さを追求する新型エモンダと同じ開発アプローチで設計されており、トレックが技術の粋を集めた最新のホイールである。また、今年発売された各社の有力なカーボンホイールは、フックレスで専用タイヤが必要だったり、クリンチャー専用だったりする一方で、新型アイオロスシリーズは全てチューブレスレディ。クリンチャーで運用することもできるし、容易にチューブレス化することも可能な仕様としている。

 これまではホイールの専業メーカーが時代を牽引し、常に新しいトレンドを作り出してきた。ユーザーはその確かな技術を信頼し、自らの愛車へ目的に合った製品を選択してきた実績がある。一方で、バイクメーカーが作るホイールは以前から存在しているが、そのバイクブランド以外のマッチング事例が多いとは言えない。バイクメーカーが作るホイールの実力はどのようなものか。安井さんが解説する。

バイクメーカーが作るホイールとは

安井:トータルインテグレーションの一環として、バイクメーカーがホイールまで自社で手掛けるようになってかなりの年月が経つ。かつてはバイクメーカー完成車の専用ホイールというイメージだったが、最近はホイール単体としても注目されている。

リムの新形状と性能について思案をめぐらす安井行生さん Photo: Masami SATOU

 スポーツバイクの設計開発が技術力勝負になりつつあるという昨今の事情も、それに拍車をかけた。

 各種シミュレーション、風洞実験、最新の素材に最新の製法に最新の規格、そういう技術力が高性能バイク作りには不可欠になった。かつてのように経験と勘と職人技によって成り立つ世界ではなくなったのだ。そして、技術力は自然とビッグメーカーに集結する。

バイクメーカーがホイール専業メーカーの技術を凌駕するのは必然なのか Photo: Masami SATOU

 開発力・人材ともに豊富な主要バイクメーカーが手掛けるホイールが、ホイール専業メーカーを凌ぐほどの実力を付け始めたのは、なにも不思議なことではないのだ。

 そんな状況を鑑み、ボントレガーの新作ホイールを、トレック以外のバイクで乗ってみることにした。選んだバイクはルックの795ブレードRSである。このバイクはルックのエアロロードで、UCIプロチームの「NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス」もメインバイクとして採用した純レーシングモデル。ボントレガーのハイエンド、ミドルグレードを試すに相応しいフレームである。

ルックのエアロロード「795ブレードRS DISC」に「アイオロスRSL37」を組み合わせた Photo: Shusaku MATSUO

 前述のとおり、ボントレガーの新型アイオロスは3グレードからなる。松竹梅の順に、アイオロスRSL37、アイオロスプロ37、アイオロスエリート35&50である。フレーム価格とのバランスを考え、795ブレードRSではアイオロスRSL37とアイオロスプロ37の2モデルを乗ってみる。

795ブレードRS×アイオロスRSL37

安井:フランス×アメリカというあまり馴染みのない組み合わせだが、相性のよさに驚いた。経験則として、しなやかなフレームと高剛性ホイールという組み合わせはいい走りになることが多いのだが、この仏米コンビもその例に漏れず。俊敏性と脚当たりの良さが非常に高いレベルでバランスされている。軽さ・剛性・しなやかさの絶妙なるブレンドによって、パワーをかけた際の加速性能、ヒルクライム能力も一級だ。ルック×ボントレガーをここまで褒めるとは思わなかったが、パッケージとして非の打ちどころがない。試乗ホイールは28Cのクリンチャーのタイヤを履いていたが、25Cあたりのチューブレスにすればさらにレベルが上がるはずだ。

「軽さ・剛性・しなやかさの絶妙なるブレンド」と「アイオロスRSL37」を評価した安井 Photo: Masami SATOU

松尾:ルックの伝統ともいえる“しなやかな速さ”を体現しているのが795ブレードRS。エアロフレームながらウィップを生かした軽快さが癖になるレーシングモデルだ。そのリズムにドンピシャにハマったのがアイオロスRSL37だ。ホイールに不快な硬さはなく、踏み込むと一瞬「柔らかいのか?」と思わせるが、絶妙なハリとコシが素早い反応となってバイクを進ませる。28Cでも重量的な違和感は全くない。“かかり”も巡航性能も非常に優秀だ。特に上り返しでは失速させまいと乗り手を鼓舞するように足運びを鈍化させないホイールの軽やかさが目立った。巡航性能だけでなく、登坂性能も求められる日本のレースシーンにおいてアドバンテージとなる逸品だ。

軽快でリズミカルな反応で、ブレードRS DISCと抜群のマッチングだった「アイオロスRSL37」 Photo: Masami SATOU

795ブレードRS×アイオロスプロ37

安井:アイオロスRSL37とアイオロスプロ37ではそれなりの重量差があるため、ホイール外周部の重さが影響しやすい初期加速や上りでは、RSL37に比べるとやや重さを感じる。しかし違いはそこまでで、負荷や速度域が高まると差は小さくなる。おそらくこれは、縦剛性、横剛性、駆動剛性のバランスをアイオロスRSL37とアイオロスプロ37で揃えてあるからだろう。よって795との極上のバランスは健在だ。巡航性能もかなり高い。

「アイオロスプロ」を上位モデル譲りの高いバランスだと感じ取った安井 Photo: Masami SATOU

松尾:リムは上位モデルのRSL37と同形状のアイオロスプロ37。平地の巡航性能は両者ほぼ変わらないと言える。素材のコストを落としているため、重量が増し、上りではRSLに歩があるのは確か。しかし、RSL37譲りの優れたバランスは健在。また、リムが上位モデル比で重い分、踏みごたえがあり、高速スプリントではトップスピード付近の伸びを感じた。ガツンと力をかけたいパワーライダーはあえてこちらを選んでもいいかもしれない。

体重が70kg台の松尾は、ハイスピード域での伸びと、パワーをかけた際の踏み応えに魅力を感じた Photo: Masami SATOU

アルミフレームに釣り合うホイールか

安井:さらに今回は、低価格アルミフレーム完成車とカーボンホイールという組み合わせでも試乗してみた。新しい規格の導入と加工技術の向上により、アルミフレームはかつてとは比べものにならないほどの性能を手にしている。

 ハイドロフォーミングによるチューブの基本性能アップ、大径BB採用によるチェーンステー周りの設計自由度アップ、上下異径フォークによるヘッド周りの基本性能アップ、ディスクブレーキ化による足周り強化…それらによって、アルミらしい価格のまま、アルミらしからぬ性能を実現しているモデルが多いのだ。そういう現代のアルミフレームに、カーボンホイールを組み合わせたらどうなのか。

「エモンダALR」に「アイオロスプロ37」の組み合わせ Photo: Shusaku MATSUO

 試乗バイクはトレック・エモンダALR5ディスク。アルミフレームに、シマノ・105ディスクを組み合わせた完成車で、純正ホイールはボントレガー・アフィニティというアルミホイールである。

エントリーレーサーモデルとは思えないスタイリッシュな外観に Photo: Masami SATOU

 このエモンダALRというアルミバイクには何度か試乗しているが、フレームセット12万円強、完成車17万円強という価格ながら、信じがたいほどよく走る一台である。

 とはいえ、フレームとホイールのコスト配分にはセオリーがある。低価格帯ならフレーム価格の半額程度のホイールを、高価格帯ならフレーム価格と同額程度のホイールを、といった感じだろうか。今回の試乗ではそれを崩してみたい。

エモンダALR×アイオロスプロ37

安井:かつては低価格アルミフレームに高性能ホイールを組み合わせると、明らかにバランスが崩れたものだが、現代のアルミフレームはそんな弱音は吐かない。さすがに高級車ほどの洗練された乗り味はないものの、共に基礎体力のあるアルミフレームとカーボンホイールが相まって、パワーロスが少ない走りをしてくれる。

ルック「ブレードRS DISC」でも試した「アイオロスプロ37」。アルミフレームの「エモンダALR」でもバランスは崩れない Photo: Masami SATOU

 性能には直接関係ないが、カーボンホイールを履いた立ち姿もいい。見た目が安っぽいアルミフレームにカーボンホイールを履かせると「若者が背伸びして高級スーツを着てる感」が出てしまうものだが、このエモンダALRはフレームの形状とカラーリングに安っぽさがなく、カーボンホイールを堂々と履きこなしている。

エモンダALR×アイオロスエリート35

安井:エモンダALRに新型アイオロスシリーズの末弟、エリート35を組み合わせるとどうなのか。エモンダALR×アイオロスプロ37よりは俊敏性が陰りはするが、思ったほどの差はない。重量はあるものの、フレームもホイールも芯がしっかりしているためか、トラクションがよくかかる。決してガチガチではなく脚当たりが悪くないのは、快適性を重視したフレーム設計の賜物だろう。

レベルの高い現代のアルミバイクには、カーボンホイールも申し分なく釣り合う。カスタマイズ候補として「アイオロスエリート」は良い選択肢ではないだろうか Photo: Masami SATOU

  現在の商品構成のヒエラルキーを考えると、アルミフレームの完成車価格を大きく上げるわけにはいかない(カーボンホイールをスペックインするわけにはいかない)のだろうが、レベルの高い現代のアルミフレームの真価を引き出すには、最低でもこのくらいのホイールがおすすめだ。

(提供:トレック・ジャパン)

■ボントレガー「アイオロスRSL37」

税抜価格:29万4500円(F: 13万8000円、R: 15万6500円)
重量:前後で1325g
リム高:37mm
ハブ:DT Swiss 240
フリーボディ:Ratchet EXP

■ボントレガー「アイオロスプロ37」

税抜価格:18万4000円(F: 8万4000円、R: 10万円)
重量:前後で1505g
リム高:37mm
ハブ:DT Swiss 350
フリーボディ:シマノ 11速

■ボントレガー「アイオロスエリート35/50」

価格:12万5000円(F: 6万円、R: 6万5000円/税抜)
重量:35が前後で1665g、50が前後で1730g
リム高:35mm/50mm
ハブ:ボントレガー
フリーボディ:シマノ 11速

インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

松尾修作

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。

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