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教えて! 安井先生<6>アルミフレームは今後どのように進化していくのでしょうか?

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今回のお題

私はアルミフレームが大好きです。安いしよく走るし頑丈だし。これからもアルミフレームを乗り継ごうと思っていますが、アルミフレームは今後どのように進化するのでしょうか?

 2000年くらいのロードバイクカタログを見てみると、アルミフレーム&アルミ/カーボンバックフレームがズラリと並んでいます。

 当時はアルミが最先端素材。アルミは軽いんですが、スチールより弱いので、強度と軽さを両立させるには大径化するしかない。大径化した結果、剛性が上がりすぎて快適性が低下してしまいます。

2004年のジロ・デ・イタリアでダミアノ・クネゴが乗っていた「CAAD8」。カーボンロードバイクが台頭してきたなか、アルミのロードバイクでグランツール総合優勝を果たした Photo : Yuzuru SUNADA

 「アルミはガチガチ」というイメージはこの時代に定着したもの。その後、インテグラルヘッドとカーボンバックが登場し、ハイドロフォーミングによって外形も工夫できるようになり…と、快適性と動力性能の両立が試みられます。当然コストが投入され、フレーム価格35万円なんていう高級アルミバイクがたくさんありました。

 しかしすぐにカーボンの時代が到来します。アルミはエントリーグレードを担当する素材として、コストをかけてもらえなくなりました。各社のアルミフレームは、分厚く、重く、再びガチガチになってしまいます。例外だったのはキャノンデール。最後までアルミフレームでレースを続け、トップモデルがカーボン化したあともアルミを進化させ続けました。ご存じ「CAAD」(キャド)シリーズです。

 そして現在。インテグレーテッドBB、上下異径ヘッド、コンパクトリア三角、カムテール、ディスクブレーキなど新しい規格が続々と投入され、しかも加工技術が進化したのか、チューブの造形自由度がさらに増します。その結果、かつてアルミが輝いていた頃の「洗練」と「上質さ」を再び手にし始めていると感じます。しかも、あの頃とは比べものにならないくらいに安価で。

 ここ数年で感銘を受けたのは、トレックの「エモンダALR」、キャノンデールの「CAAD13」、そしてアンカーの「RL6」でした。これらはどれも、アルミとは思えないほどのしなやかさを持ち、しかも力強く走ってくれました。新世代アルミフレームとでも評すべき3台です。

トレック「エモンダ ALR 5」 ©TREK
キャノンデール「CAAD13」 ©Cannondale
ブリヂストンアンカーRL6 ©BRIDGESTONE CYCLE

アルミフレームの魅力とは?

 さて、アルミフレームの歴史を軽く振り返ったうえで、質問の答えです。今後、アルミフレームはどのように進化するのか。

 個人的には、高性能アルミフレームの進化はどんどん緩やかになっていき、いずれは止まってしまうのではないかと思います。何年後なのか十何年後なのかは分かりませんが。それは、素材の限界というわけではなく、カーボンフレームの低価格化によるもの。

 カーボンフレームの製造コストがどんどん下がり、高性能アルミフレームとの価格差がなくなりつつあります。となると、メーカーにとっては「開発費を投入してアルミフレームを進化させる意味」がなくなってしまう。同じ価格でアルミフレームとカーボンフレームがあったら、ほとんどの人がカーボンフレームを選ぶでしょうから。完成車10万円前後の低価格帯ではアルミが生き残ると思いますが、中級以上のアルミフレームはそのうちなくなってしまうかも…。

 実はこれは僕が考えたことではなく、大先輩ライターである吉本司さんの受け売りなんですが、十分にあり得ることだと思います。

 ただし、現在でも高価なスチールフレームの愛好者が少数ながら存在し、彼らの想いに応えるようにチューブメーカーが新銘柄を発表したり、ビルダーが腕を振るったりしています。それと同じように、アルミフレームもそういう存在(嗜好品)として生き残るかもしれません。

 CAAD10が発表されたとき、担当エンジニアに「アルミフレームの魅力とは?」と聞くと、「もちろんコスト。そしてLively feeling!」と答えてくれました。ライブリー・フィーリング。和訳すると「生き生きとした感じ」でしょうか。

 そう、良いアルミフレームに乗っていつも感じるのは、生々しいペダリングフィール、骨太な剛性感、グイグイと進む濃厚なトラクション、リアルな走行感、そういう“アルミフレームらしさ”です。これは、カーボンフレームにもスチールフレームにもない、アルミの味です。それを支持するアルミ乗りが絶滅することはないような気がします。

 現在、オーダーフレームというとほぼスチールしか選択肢がありませんが、そこにアルミが入ってくるかもしれません。

 アルミフレームの未来、明るくはないが、決して真っ暗でもない、といったところでしょうか。

インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

 大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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