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つれづれイタリア〜ノ<145>新型コロナで変わるイタリアの通勤スタイル 「自転車+電車」で快適&便利に

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 前回のコラムでイタリア政府が打ち出した「Bonus mobilità」(移動対策補助金)と呼ばれる自転車、電動スケートなどの購入補助金制度について話しました。イタリア政府は新型コロナウイルス拡散防止と環境保護の対策として、自転車購入額の6割(上限500ユーロまで)を補助するもので、1100ユーロ前後の自転車は瞬く間にショップから消えました。急増する自転車に対し、都市部や公共交通のインフラ整備は急務となっていますが、まさにその“過渡期”の問題が浮き彫りとなりました。

全国的に電車を運用しているTrenitalia(トレニタリア)社の最新の通勤車両 Photo: Marco Favaro

自転車で溢れる公共交通機関

 6月5日、自転車購入補助金の影響で国内の自転車業界が歓喜に沸く中、あるニュースが大きな話題を集めました。ミラノ周辺の鉄道路線を運営しているTrenord(トレノルド)社が、車内への自転車の持ち込みを禁止したのです。理由は「自転車が多すぎて乗客の安全が保障できなくなった」とのことです。

 確かにトレノルド社の公式Twitterアカウントや乗客たちのSNSを見る限りでは、自転車が増えすぎて出入り口を完全に塞いでいる様子が映し出されています。しかしインターネット上でトレノルド社に対し非難の声が多くあがりました。

 「せっかく自転車を買ったのに、電車に乗れないなんて!ひどい!」「世界的に自転車がエコだというのにトレノルドは何もしてくれない!」「相変わらずの低レベルのサービスだ!」─と、 誹謗中傷合戦に発展しました。さらに駅前で抗議デモを行う団体も現れる始末。

駅前で抗議活動を行うサイクリスト達 © Fiab

 そもそもなぜ自転車をそのまま電車に乗り入れることができるのでしょうか。それはイタリアと日本の自転車に対する扱いが大きく異なる点にあります。ヨーロッパのほとんどの駅では改札口がなく、誰でも立ち入ることができます。自転車は「手荷物」として定義されますので駅のホームまで直接に持っていくことができます。電車に乗る時には2つの方法があります。

・輪行袋に収納するか、折りたたむ方法(料金無料)
・そのまま、先頭車両にある自転車専用スペースに収めること(同有料)
 ①24時間自転車乗車券:3ユーロ
 ②年間パスポート:60ユーロ

通勤や観光で自転車をそのまま電車の中へ ©Fiab
過剰な設備もなし ©Fiab

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月からイタリア国内で厳しい外出禁止令が実施されましたが、公共交通は減便しながらもサービスを継続。通勤客が減った反面、急増したのが食料などを配達するサイクリスト達です(イタリア国内だけで4つの団体が存在)。

 電車が空いていたことから、トレノルド社は専用スペース以外での自転車の収納を黙認してきましたが、6月に外出令が解禁となり、一般の通勤客の自転車も急増しました。その結果、電車の安全な運行に支障が出始めたため、6月5日以降、自転車そのままの形での乗り入れを禁止しました。

増える自転車積載ニーズに鉄道会社が対応

 トレノルド社の広報担当Irene Fusani(イレーネ・フザーニ)氏に、これからの対策について話を聞いてみました。

 フザーニ氏によると、トレノルド社はもともと通勤者フレンドリー、そして自転車を通勤や観光などで使う人にフレンドリーなるように様々な対策を取ってきました。しかし今回政府が打ち出した補助金の効果が想像をはるかに超え、想定外の自転車の急増に対応することができなかったそうです。

 ただ、この緊急対策(座席使用50%まで、通路・共有スペースなどの使用15%まで)は一時的なもので、国が定めた感染防止対策指針を遵守するため発動したに過ぎないそうです。一方、80×120×45cmの範囲に収まる折りたたみ自転車、電動スケートなどは依然として無料で乗車できます。

 これから確実に増える自転車に対し、トレノルド社はすでに対策に乗り出しています。自転車専用スペースの活用と確保のため、三つの対策が実施されます。

①予約専用アプリ
電車に乗る前に、自転車スペースが空いているかどうかを確認・予約するためのアプリ開発(もうすぐ運用開始)

②駐輪場の建設
駅周辺の駐輪スペースが確実に不足しているので、駐輪場の設置場所を検討

③新型通勤列車の導入
老朽化を迎える車両を引退させ、多くの自転車が収納できる新型通勤列車、カラヴァッジョ号(Hitachi Rail Italia製)の導入が進められています

新型車両、カラヴァジョ号。ルネッサンスの巨匠、カラヴァッジョから名前が付けられた。Wifiと充電用USBが利用できる ©Hitachi Rail Italia
通勤列車は2階建構造となっている。各車両に6台の自転車スペースを完備 ©Hitachi Rail Italia
自転車ラックのイメージ図 ©Hitachi Rail Italia

 各車両に自転車専用スペースが完備されているだけでなく、電気も供給され、移動中に電動スケートなどが無料で充電可能。すでに176車両が購入済みです。新型車両は確かに格好いい。イタリアの老舗車両メーカーAnsaldo Breda社を買収した日立グループの自信作としても期待されています。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、イタリアは確実に変わろうとしています。次の進化が楽しみです。

Marco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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