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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<343>CCCがスポンサー撤退 活動再開に向け見えてきたコロナ禍でのチーム運営の明暗

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新型コロナウイルス対策を進めながら、活気が戻りつつあるロードレース界。そんな中、トップシーンでビッグチームの1つに数えられるCCCチームが、2020年シーズン限りでタイトルスポンサーを撤退することが明らかになった。一方で、実質前倒しの形で所属選手との契約延長をまとめるチームの様子も見られるように。ここへきて、運営面での明暗が分かれている各チームの状況。今回は有力チームの現状についてお伝えする。

タイトルスポンサーの撤退が発表されたCCCチーム。7月のシーズン再開後は新たなパートナー探しをかけたレース活動になる =ツール・ド・フランス2019第2ステージ、2019年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

CCCが1年残してタイトルスポンサー撤退

 CCCチームのタイトルスポンサー撤退は、6月8日にチームが配信したプレスリリースの中で明かされたもの。ゼネラルマネージャーであるジム・オショウィッツ氏の言葉で、「2021シーズンに向け、CCC社はタイトルスポンサーを継続しないため、新しいタイトルスポンサーを積極的に探している」とした。

CCCチームのゼネラルマネージャー、ジム・オショウィッツ氏 Photo: Yuzuru SUNADA

 チームはシーズン中断期間中、欧米のサイクルメディアでとりわけ運営状況が報じられており、その内容としては選手の給与の一部カットや、非常勤のチームスタッフの一時的な解雇といったものがほとんど。ポーランドで靴やファッションアイテムを製造・販売するCCC社のコロナ騒動による業績悪化が、大きな理由に挙げられている。

 実際、CCC社は拠点のポーランドにおいて複数の直営店が閉店に追い込まれているとされ、ロードレースチームへの多額の投資も同社の経営を圧迫。この結果、2021年まであるタイトルスポンサー契約を1年残して降りるという苦渋の決断に至った。

 オショウィッツ氏といえば、2018年にBMC社の撤退によって存続の危機にあったチーム(BMCレーシングチーム)をギリギリのところで踏みとどまらせたことが記憶に新しい。そのときは、なかなか後継スポンサーが決まらず、所属していた有力選手たちが次々と同年限りでの離脱を決断。ツール・ド・フランス期間中にCCC社との翌年からのタイトルスポンサー契約をとりつけ、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)を軸とするチーム再建を発表したのだった。

 2年前に続いてのタイトルスポンサー探し。前回は早い段階でスポンサー撤退が分かっており、先々を見越してのアプローチを各所に行いながらの新規企業探しだったが、今回は想定外のパンデミックをきっかけに大幅な軌道修正を余儀なくされることとなる。それでもオショウィッツ氏は「前例のない時代に身を置いているが、ここ数カ月の世界的な自転車人気の高まりを考えると、サイクリングに投資したいと考える企業があることを確信している」と楽観的。何より、2007年にコンチネンタルチームからスタートした現体制がここまで成長してきたことに胸を張り、「新しいスポンサーシップのもとで継続するつもりだ」と現在のスタンスを強調する。

CCCチームのリーダーであるグレッグ・ファンアーヴェルマートはチーム状況を当面静観する構え =オンループ・ヘットニュースブラッド2020、2020年3月1日 Photo: STIEHL / SUNADA

 また、ベルギーメディア・スポルザの取材を受けたファンアーヴェルマートは、「5月の時点でCCC社の撤退は聞かされていた」ことを明かしながら、「一定期間はチームに残るつもりでいたい。このチームとは約10年(BMC時代の2011年に加入)の付き合いだ。簡単に別れを告げるのは残念なこと」とコメント。最悪の場合は「プランBもやむなし」と述べつつも、スポンサー確保が難航した2年前を知る1人として、しばらくはチームと寄り添うことを表明した。

 そんなチームは、EU内の移動制限緩和が見込まれる今月中旬から再始動。ベルギーに置かれるサービスコース(チーム拠点)が動き出し、7月には高地でのトレーニングキャンプを実施すると発表。同月28日からのブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン)で、レース活動が再開する予定になっている。

ナーセン、コヌフロワらが契約延長

 アージェードゥーゼール ラモンディアールは5月下旬以降、4度にわたって所属選手との契約延長を発表。この間に、6選手が来季以降も同チームで走ることが決まった。

アージェードゥーゼール ラモンディアールと契約延長に合意したオリバー・ナーセン =パリ〜ニース2020第2ステージ、2020年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 先陣を切って合意が明らかになったのは、北のクラシックでは絶対的なエースのオリバー・ナーセン(ベルギー)。29歳と、いま一番波に乗る時期にある彼は、2023年までフランスチームのリーダー格として走り続ける。交渉にあたっては、クラシック班のさらなる強化が約束されたようで、ビッグタイトル獲得を目指す石畳系クラシックや、過去2回優勝しているブルターニュクラシック・ウェストフランスのような得意とするレースで最大限のサポートを受けて戦うことができそう。

 ナーセンに続いては、アレクシー・ヴィエルモ(フランス)が2021年まで、ジョフリー・ブシャール、ドリアン・ゴドン、オレリアン・パレパトル(いずれもフランス)が2022年までの契約延長を発表。直近では気鋭のワンデーレーサー、ブノワ・コヌフロワ(フランス)が2023年まで現チームで走ることでまとまった。

2023年までの契約延長に合意したブノワ・コヌフロワ(左)。右はチームマネージャーのヴァンサン・ラヴァニュ氏 Photo: AG2R La Mondiale

 2017年のアンダー23世界王者であるコヌフロワは、昨シーズンだけで5勝を挙げた成長著しいヤングライダー。エリートカテゴリーでもフランス代表に選出され、「第2のジュリアン・アラフィリップ」との呼び声も高い注目株。

 今年もシーズンイン直後の2戦で優勝を飾り、「アルデンヌクラシックでの優勝が夢」という彼に対しては、チームとしてもしっかり戦える状況を作り出すことを明言。シーズン再開後の走りが楽しみだ。

 コロナ騒動によって混乱が生じたチームが多かった中で、アージェードゥーゼール ラモンディアールは「比較的無傷」だったチームの1つとされる。所属選手に対しての早めのアプローチによって、現在の主力にとどまらず、将来的にチームを支えるであろう若い力の流出を阻止するあたりは、整った運営基盤あってこそといえるだろう。

 そうなってくると気になるのは、今年が契約最終年のロマン・バルデ(フランス)の動向。グランツールレーサーの獲得を目指すチーム サンウェブが興味を示しているとの噂も挙がっているが、実情は果たして…。ここ数年はツールのマイヨジョーヌ争いからも遠ざかり、環境の変化を勧める声がある中でどんな動きをみせるのか。同じく、総合系ライダーのピエール・ラトゥール(フランス)も今年で契約切れとあり、チームはこの2選手に対しても全力で引き留めを行うはずだ。

今週の爆走ライダー−ドリアン・ゴドン(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 チームとの交渉を早々と終わらせ、2022年まで所属できることが決まった。パリ近郊で生まれ、5歳からはリヨンで育ったという都会っ子にとってあこがれだったというアージェードゥーゼール ラモンディアールのサイクルジャージ。現実のものとした今は、地に足をつけてチームの主力になることに注力する。

アージェードゥーゼール ラモンディアール期待のライダー、ドリアン・ゴドン Photo: AG2R La Mondiale

 6歳で出場したマウンテンバイクレースでの優勝がきっかけで飛び込んだ自転車競技の世界。ツールを戦うトップライダーのプロ意識にインスピレーションを受け、みるみるレースにのめり込んでいった。ジュニア時代には数多くのタイトルを獲得。アンダーカテゴリーに上がってからは、理学療法の研究を行うためレース活動から離れていた時期もあるが、年代別のトップを走ってきた選手を放っておくわけにはいかないと関係者がさまざまなサポート。2016年シーズン以降は競技に比重を置くようになった。

 2019年の現チーム入り後は、数少ないスプリンターの1人として勝利のチャンスをうかがう。プロローグのような短いタイムトライアルも得意。また、フランス人ライダーながらブエルタ・ア・エスパーニャ好きという一面も持つ。昨シーズンは、念願かなってブエルタでグランツールデビュー。シーズン再開が控える今年は、春から秋へスライドした北のクラシックも重要な任務となる。

 ジュニア時代は勝ち負けよりもチャレンジすることへの楽しみに傾倒していたというが、プロ入り後は「グループの一員」であることを意識。自らのモチベーションがチームの役に立てるよう従事する。それこそが、不足している経験を補う術だと考えているという。

 こうしてレース活動を続ける間も、理学療法の勉強は欠かさない。プロ入り前までは海外留学を本気で考えたほど。過去から現在まで、競技と学問の両立に迷ったことや悩んだことは一切ないのだとか。

チームでは数少ないスプリンターとして機能するドリアン・ゴドン。競技と理学療法の研究との両立も順調だ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第14ステージ、2019年9月7日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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