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つれづれイタリア〜ノ<144>イタリア政府が自転車購入費の6割を補助 密を避ける移動手段として推奨

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 イタリアから嬉しい悲鳴が上がっています。「自転車がない!」というのです。6月に入ってから自転車の売り上げが急増し、サイクルショップから自転車が次から次へと消えていくという珍しい現象が起きています。5月末に外出規制が解除されたとともに、人々は自転車ショップに殺到するニュースがイタリア国内から相次いでいます。まだ集計途中ですが、2019年と比べて2020年の自転車の売り上げはプラス60%(※)を超えているようです。何があったのでしょうか。

(※)経済新聞「Il Sole 24ore」調べ

ミラノの中心部にある老舗サイクルショップ、ビチクレッテ・ロッスィニョーリの前の行列 ©Bike Italia

自転車専用レーン整備と購入補助の2本柱

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、現在ヨーロッパの多くの国で公共交通機関の利用が厳しく制限されています。電車や地下鉄、バスでは座る位置が決められているだけでなく、下車後の殺菌作業が行われているので、本数は減り、通勤ができない状況が起きています。

 イタリア政府はこうした状況を打開するため、密集を伴わない自転車の利用を推奨し、具体的な対策に乗り出しています。自転車専用レーンの整備と、もう一つが「自転車購入時の補助金」(Bonus mobilità、移動対策補助金)の支給です。

移動対策補助金(Bonus mobilità)の内容

利用期間:2020年5月4日〜12月31日まで
対象車:自転車本体(電動アシスト、中古品を含む)、電動スケート、セグウェイ

対象の販売業者:自転車を販売する領収書が発行可能な店舗。ただし、オンラインショッピングの場合、環境省が認めた販売業者のみに限定

補助金上限金額:購入額の60%、最大で500ユーロ(現6万円)

対象者:人口5万人以上の自治体在住の18歳以上の住民

使用回数:1回のみ

請求期限:購入後60日以内

 補助金を受けるには、環境省が制作する専用のWebサイトまたはアプリ(現在開設準備中)による手続きが必要です。開設前・後の二つの段階に分けて紹介します。

専用サイト「開設前」の請求方法

1)購入者が自転車の購入後に販売業者から受け取った領収書を保管し、環境省の専用Webサイトまたはアプリが開設してから情報をアップロードし、補助金を確認する。その時、デジタルクーポンが発行される。

環境省が発行するデジタルクーポン ©Ministero dell’Ambiente


2)デジタルクーポンをダウンロードし、それを販売業者に直接渡して補助金の払い戻しを受ける。

専用サイト「開設後」の請求方法

1)購入者は補助金引きの金額を販売業者に支払う。

2)販売業者は環境省から補助金を受け取る。

過剰な需要にショップが悲鳴

 近年、健康向上や環境保全の意識が高まり、2019年のイタリアでは170万台の自転車が販売され、2018年より7%増加(※)。イタリア国内の総売上高だけで約13.5億ユーロに上ります。

(※)2020年Ancma、イタリア自転車・オートバイパーツ協会調べ

 ただ、今回の感染拡大の影響で密集を避けるために、自転車を使ってこなかった人まで自転車の購入に踏み切っています。結果として、ロックダウン中にサイクルショップは十分な台数を確保できず、コンポーネントも足りない状態が発生しています。深刻な供給問題が生じています。

自転車ショップの前の行列↓

ジェノヴァ市の前で修理を待っている自転車↓

 パドヴァにあるスポーツ量販店のDecathlon(デカスロン)担当者、エマヌエレ・ボッカラート氏によると、5月に入ってから自転車、特にマウンテンバイク、シティバイクやe-BIKEの売り上げは急増し、この1カ月だけで通常の4倍になりました。常に慢性的な在庫不足です。

 ボッカラート氏の説明によると、デカスロンの自転車の主要な製造ラインはイタリア北部クネオ市とポルトガルにあるため、ロックダウンや移動制限による生産性の低下が影響しています。自転車不足を補うため、デカスロンの一部の店舗でTrocathlon(トロカスロン)という中古自転車代行販売サービスを開始したそうです。自転車本体だけでなくジャージやパーツの売り上げも好調です。

現在、大型量販店には子供用自転車しか残っていない状態 ©Decathlon Padova

自転車の社会的役割

 補助金のおかげで自転車やパーツ、関連商品市場が活性化し、多くのメディアは経済的な面だけを注目しています。一方、元道路警察トップで現イタリア自転車競技連盟安全管理及びレースディレクター委員会会長のロベルト・スガラ氏は補助金の真の目的を見失わず、次のように述べています。

 「補助金は、都市部のモビリティに対する自転車の有用性を認識しているもので、単なる消費量を増やすことだけを目的としたものではありません。補助金は、都市の生活を改善するための国の重要な戦略です」─。

 菅義偉官房長官が6月3日の記者会見で言及した「自転車利用推奨」も頑張ってもらいたいです。

Marco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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