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おすすめな汎用工具と使い方<3>元自転車店員が教える「ドライバー」の選び方・使い方 プロショップで使われるオススメも紹介

by 村田悟志 / Satoshi MURATA
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 自宅で自転車整備をする際に欲しい工具のおはなし。第3回目は、締緩工具(ていかんこうぐ)の代表格「ドライバー」をご紹介します。

実は繊細で扱いが難しいスクリュードライバー Photo: Shusaku MATSUO

マイナスドライバーとは

 マイナスドライバーとは「スクリュードライバー」を指します。ねじ回し工具のことで、JISでは「ねじ回し」と言ったら「−ドライバー」です。英語でも「スクリュードライバー」と言ったら基本はこっち。一般的な呼称としては「フラットヘッド スクリュードライバー」とか。カッコイイけどちょっと長いですよね。
※JIS「日本産業規格」=日本の工業規格 / ISO規格「国際標準化機構」=国際規格

プラスドライバーとは

 日本における「+ドライバー」は、JISの呼称では「十字ねじ回し」。形状や寸法はJIS独自の規格で定められています。しかし、海外では+ねじと言えば、生みの親である「フィリップス社」。呼称も「プラス」ではなく、そのまま「フィリップス スクリュードライバー」です。

 寸法の規準もフィリップス(PH)規格をもとにしたISO規格なので(形容詞としては「クロス スロット」とかまあ色々あるみたいですが)固有名詞は「フィリップス」になっちゃうんですね。ヘッドや軸部分に「PH」と入っていたらフィリップスの略ですので、ISO規格品です。カッコイイけどちょっと主張が強いですね。殿下ですね。

注意:上記はあくまで「ねじ頭の十字刻み」部分だけのおはなし。下の螺旋部分は、昔はヨーロッパとアメリカと日本でそれぞれ独自規格があり、しかも輸出対象品以外では日本の独自規格もまだ現役だったり。その名残でISOが国際基準を設けた今でも、ねじの規格を調べるならISOよりも、JISのチャートを見た方が種類が多くて確実っぽいぞ。 とりあえず現在、ロードバイクで使用されるねじは基本的にメートルねじ(M4とM5が多い)で統一されているが、たまに謎の規格ねじが混じってたりするのでマジ地雷。謎メーカーのパーツは注意が必要です。というか、純正でないねじを使用する場合は、ピッチゲージとノギスを用意してしっかり調べましょう。頭の刻みと螺旋部分双方の規格をね。

珍しい「+」風味ねじ頭の規格

【ポジドライブ】
 IKEAの家具ジョイントに使われている事でボチボチ有名。メインの「+」刻みに重ねて、薄く「×」が刻まれているのですぐに判ると思います。

【フレアソン】
 アメリカのメーカーが作ったマニアックな規格、航空機用に使われてるらしい。溝が深くエッジの効いた刻みが特徴的。惹かれますね…見たことないけど。 双方共に、ドライバーヘッドの食いつきが良く、大きなトルクが掛けられるという面では優れているものの、普及しきっている「JIS」「ISO(PH)」とは互換性がなく、当然、工具も専用品を用意しなければいけないため、ほぼ広まっていません。まあ、ロードバイク部品に使われる事はまずないでしょう。

ドライバー選びのポイントは?

①ヘッドサイズを選ぶ「+」

 +ドライバーは、No.1〜No.4の4種類が基本サイズ(JISもISO⦅PH⦆も共通)で、この数字は寸法ではありません(番手として定めるための数字)。自転車に使われるサイズは小さい場合がほとんどなので、とりあえずで買っておくのなら、ねじ許容サイズがM3~M5のNo.2(ISO規格)ですね。少し前のシマノコンポを使っている方にはNo.1もオススメです。大きいサイズはほぼ使わないので、必要になった時に追加購入が良いでしょう。

柄の部分にもサイズが表記されている製品も Photo: Shusaku MATSUO

②ヘッドサイズを選ぶ【−】

先端に番号(サイズ)が記載されるメーカーもある Photo: Shusaku MATSUO

 −のドライバーはサイズの呼称が違い、3.0、4.5、5.5など先端の刃幅をmm寸で表記します。とりあえずのオススメサイズは3.0。こちらも、例えばシマノの「6800系」とか「9000系」シリーズのコンポーネントでは指定がありますので、上記コンポを愛用の方は特に持っていた方が良いでしょう。なお、ねじを回す以外にも、ストップリングやワッシャを外すのに使ったり、駆動系パーツの狭い部分の異物や汚れを取り除くのにも使えるので、1本工具箱に入っていると安心です。メイン用途以外での方が使うかも。

③軸の長さを選ぶ

 前述のJISで規定されたサイズには、軸長も含まれています。例えばNo.2だったら“+ヘッドは軸長100mm”なんて感じですが。この標準長が使いやすいので、長さに希望がなければとりあえずは標準が良いでしょう。ただ、車両の部品構成や車体のデザインなどで最適な軸長は変わりますので、良く吟味して選ぶと良いと思います。狭い場所がメインなら「スタビー」(軸とグリップが短い樽形ドライバー)タイプもオススメ。

④グリップ(持ち手部分)の形と素材を選ぶ

 木製やプラスチック製、メタル製と色々な素材があります。まあ、どれを選んでも問題はありません。が、作業中に周りの部品に干渉しないよう、グリップはあまり大きくないモノを選びましょう。また、表面処理にゴムや柔らかい樹脂を使用している滑り止め付きグリップもオススメです。他にはグリップの底部が球状になっているボールグリップ/ラウンドグリップも良いです。持ちやすく、滑りにくく、周りの素材を傷つけにくい形状を選びましょう。

メーカーによってさまざまなグリップの素材や形がある Photo: Shusaku MATSUO

⑤ヘッドの規格を選ぶ

 とりあえずは、コンポーネントがシマノならJIS、スラムやカンパならISO(PH)で良いと思います。正直、どちらを選んでも問題が起きることは希ですが、どうしても微妙に合わないねじが出てきしまったら、規格の話を思い出してください。単純にねじ頭の刻み精度が低いなんて可能性もありますので、友人が違う規格のドライバーを持っていたら、まずは貸してもらって試すなどしてから購入するのが良いかもしれませんね。

使い方のポイントと注意点

 ドライバーは普及率も高く使いやすい工具ですが、使用方法を誤るとねじを壊しやすく、部品もダメにしてしまうリスクもあります。ご存じかもしれませんが、もう一度、使用方法や注意点をおさらいしましょう。

■使い方のポイント

①ねじとドライバーヘッドのサイズを合わせる

②ねじに対してドライバーは垂直に差し込む

③−ねじの場合は、ねじとドライバーの回転中心を揃える

④ねじの刻みに対し工具を奥までしっかり差し込む

⑤工具に掛ける力配分は押す力70%:回す力30%

■注意点

①サビなどで、工具が奥まで差し込めない状態の場合は、サビ取り等の下準備を優先する

②いきなり全力で回さないで、少しずつ回転トルクを掛ける

③無理に作業を進めない諦めが肝心

 どうしても上手くいかない、スペースがないなどの理由で上記の使い方、注意点をふまえた作業ができない場合は、作業を強行しないで一旦中止し、やり方を変えたり手順を変えたりして、原因を取り除いてから作業をしましょう。

部品を壊さない確実さを重視した作業を行いましょう Photo: Shusaku MATSUO

扱いと作業に細心の注意が必要

 +と−のドライバーは普及率が高く、皆さんも馴染みのある工具だと思いますが、その扱いと作業には細心の注意が必要。実は怖いんですね、このタイプ。

 たしかに、家電や棚類などに使われている“規定トルクが低いねじ”が対象の場合には、工具のヘッドサイズや形状がマッチしていなくても、回すことができます。規格として、合わせの許容範囲が少々アバウトなおかげで「ねじの刻みに工具が引っかかっていれば、とりあえず回る」ため、適当な作業でも問題は起きにくく、正直簡単です。

 しかし、乗り物などに使われる“規定トルクが高いねじ”に対しては、一転してリスキーで面倒な作業になりますので、状況を問わず簡単な作業だ、とは誤解しないように気をつけてください。

 というのも、六角レンチ等と違い刻みが浅く、形状もアバウトな場合が多いのに加えて、微妙に違う規格2種が入り乱れた状態。そのうえ、+、−ドライバーと、同ねじの組み合わせは、セットするのが簡単な反面、差し込んだだけでは工具が固定されません。そのため、ポイントを押さえた使い方をしないと、工具に掛けた回転力がねじに上手く伝わらないため、ねじの頭を変形させて壊してしまう危険性が高いのです。

 たとえば、+の場合ねじ側の浅い刻みと、テーパー形状のドライバーヘッドの組合わせですので、ただ回転方向に力を加えるだけだと、ドライバーはねじから離れようとします。また、-の場合は、ねじ頭の刻みの幅が、大抵の場合、工具先端の厚みより広い場合が多く、更に回転軸の中心を合わせていなければ、ねじとの接点に均等に力がかかりません。

 そんな縦・横・奥行きなど、合わせ位置が中途半端な噛み合わせで、工具側にトルクを加えてしまうと、掛けたトルクがねじ回転に消費されず、強靱な工具先端からの応力にねじの刻みが耐えられなくなり、結果、ねじ頭を変形させてしまいます。

 これを避けるためには、回転方向にトルクを掛けている間、常に適正な位置で工具を固定しなければなりません。そのためには常に工具をねじ頭に押しつける必要があります。回転方向にかける力よりも、固定するために押しつける力を強くしなければいけないという、使い方の基本がとても重要になってくるわけです。

 また、工具のヘッド、もしくはねじ頭の刻みの精度が極端に低い場合も注意が必要。適切な作業工程を経ても、噛み合わせが悪いと、やはりねじ頭の刻みを破損してしまう場合があります。

作業時の心掛け

 +/−ドライバーと+/−ねじの作業は見た目より面倒で、難しい作業です。必ず精度の高い工具基本に忠実な方法で使用することを心掛けてもらえると良いと思います。

 自宅整備でもプロショップでも同じですが、作業の速度よりも、壊さない確実さのほうが重要。特に自転車の部品は繊細な作りが多く、高価なのに壊れやすい部品だらけですよね。ねじ自体も同じ物を用意するのが何気に面倒なので、できれば純正を壊さずなくさず使いたいトコロ。

 入荷数が少ない部品が多く、補修部品なんて半年で入荷すれば良い方、とかザラ。もうね、地雷除去作業みたいな感じだと思ってください。

 というわけで、元より時間が掛かるものと割り切って、慎重な作業をしていただければ、結果的に効率よく作業が進むと思います。外した部品を眺めて楽しむくらいの、時間的・心理的な余裕を持って作業してくださいね。

村田メカのオススメ工具

名門中の名門「ヴェラ」のPH(ISO)規格プラスドライバー。工具で迷ったらとりあえずココの買っとけば間違いなし。ドライバーヘッドはダイヤモンド粒子で特殊コーティングされ、ねじの食いつきを良くしたうえで、耐摩耗性も向上。製造精度もとても高くグリップの形状も絶妙。ヴェラは他種の工具でも独自形状や技術が多く、全般的な特徴は「食いつきが良く・精度が高く・カッコイイ」。とりあえず海外ねじ(ISO・PH)にはコレ。

日本のドライバー専門ブランド「ベッセル」のJIS規格+ドライバー。ねじ表面に食い込み、しっかりとトルクを伝えるヘッドの特殊加工が特徴。グリップはオイル汚れが付いた状態でも滑りにくいメッシュ状の加工が施される。ベッセルのフラッグシップ・ドライバーシリーズ「メガドラ」。当然、工具の完成度が高いのもオススメする理由なのですが、もうね、アレが好きだった人は名前だけで買ってしまいますね。日本製パーツ日本ねじ(JIS)にはコレ。

Made in Swissでお馴染みの「PB SWISS」の、収納ギミック付きスタビービットドライバー。狭い所での作業がし易いスタビー形のドライバーで、ドライバーヘッドはビット式(ヘッド交換式)。同梱のセットで6種類に交換が可能なうえ、外したビットはボディの中に収納できるというスグレモノ。ずんぐりむっくりボディのかわいい見た目に反して本格的な仕様。スペースを取らずスピーディな作業に向いているが、グリップが短くて力は入れにくいので注意。

日本のドライバー専門ブランド「ベッセル」の精密ドライバーセット。後端のキャップが回転するので、持ち替えなくても押し込む力を掛けながら回せるため使いやすい。少し世代が前のシマノコンポを整備する事が多いなら3mmのマイナスは必須。プラスもなんだかんだであると便利。最新コンポではあまり使わないかも。

■村田 悟志(むらた さとし)

ホアキン・ロドリゲス氏が来日した際に適当につけたあだ名がラモーン。理由はまだ無い。元はモーターサイクル雑誌の編集者、なんか色々あってロードバイクの輸入代理店勤務ののち、秋葉原のバイクショップ『ラモーンバイクス』(現U2バイクス)でついこの間までメカをしていた。スシドラゴンこと小林海選手の、日本での活動時にメカを担当したりもする。所属:(株)オールトラスト

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