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栗村修の“輪”生相談<180>10代男性「12kgの自転車でロードレースに出る人はいないと言っても親が信じてくれません」

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 自分は今高校生で、学校に自転車競技などはないので、1人で練習しては市民レースに出たりしています。

 質問したい内容は機材についてです。僕は今「TREK Checkpoint AL3」を使っています。かなりのオフロードも想定されたグラベルロードです。しかし僕はやはりレースに出るなら最低限105のコンポが付いていて9kg以下のスペックのものを使いたいと思っています。

 しかし親は「見た目がそんなに変わらないから一緒」という一点張りです。25C対応のホイールを用意してくれるわけではなく、現在コンポはSORA、28C、重量12kg。このスペックでレースに出てる人はほぼいないと言っても信じてくれません。「ある物で努力しろ」とは言いますが、これはあまりにもハンデが過ぎると思います。

 こういう時、ロードバイクに理解がない人でも値段の相場と性能、同じ見た目でも、使用用途によって全然違うということを理解させる方法はあるのでしょうか? またそういう人にはどう説明するべきなのでしょうか?

(10代男性)

 最近、このような質問が目立ちますね。本気で悩んでいる方が多いんでしょう。たしかに近年は機材の高度化・高価格化が進んでいますから、機材差は深刻な問題です。

 僕は、特に質問者さんのような若い世代が機材格差に直面せざるを得ない現実は望ましくないと思っています。すべての子供が150万円のエアロディスクロードバイクを買ってもらえるでしょうか? そんなはずないですよね。家庭の経済状況はさまざまです。機材制限があってしかるべきだと思いますよ。

 その上でお答えしますが、たしかにSORAで組まれた12kgのグラベルロード(最新モデルはカタログ値で10.5kgのようですが、それはともかく)と105で組まれた9kg以下のロードバイクとでは、若干の差があると思います。しかし、そもそも、大金を投じて新しい機材を買うべきなのでしょうか? 質問者さんがお持ちのロードバイクをネットで検索してみましたが、とてもカッコイイじゃないですか! 僕が自転車を始めた頃に買ったロードレーサー(当時はロードバイクという呼び方ではありませんでした)よりも性能は数段上だと思いますよ! でも、僕はそのロードレーサーでたくさんレースに出場していたのです。

 自分の実力を上げずに目の前のレースでどうしてもいい成績を出したいなら、質問者さんの考えはたしかに正解かもしれません。105のバイクに買い替えるべきでしょう。しかしもし、質問者さんがこの後も長くレースを楽しみたいなら、たぶん親御さんのご判断のほうが正しいのです。

機材スポーツであるロードレースは、機材による有利・不利は多かれ少なかれ発生してしまう(写真はジュニア時代のLLサンチェス選手) Photo: Yuzuru SUNADA

 なぜなら、これは機材についても、選手としての能力にも言えることですが、段階的な上昇の余地があるということは夢そのものだからです。世の中にもっと速いバイクがあるって素晴らしいと思いませんか? 105のロードバイクを買ってしまったら、その上にはアルテグラとデュラエースしか残されていないんですよ。

 質問者さんには夢を見る権利があります。僕が質問者さんくらいのころは、ツール・ド・フランスを夢見て高校を辞め、フランスに向かって飛び立っていました。そんなことができたのも夢があったからです。

 正直言って、少し残念に思います。ご質問がではなく、105で9kg以下のバイクが手に入らないというだけでモチベーションが落ちかねない今の機材関係の状況に対してです。本来であれば、初心者や若年層のレースには機材差をなくす「ワンメイクレース」的な取り組みをしたほうが、長い目で見れば市場の活性化につながると思うんです。実際に、ロードバイクの購入費や維持費が理由で自転車から離れてしまった人の数は少なくないように思います。

 だって、夢がないですよね。質問者さんが100万円のバイクを手に入れたらある程度は速くなるのでしょうが、そんなのは分かり切った話です。それよりも、たとえば今の自転車でインターハイを勝ったら、みんな大騒ぎですよ。そっちのほうが夢がありませんか? 夢を持つこと、与えることはスポーツの根本的な価値であり、目的でもあります。

 とりあえずは、質問者さんが出たいレースのルールを確認してください。今の自転車がそのルールに抵触していなければ、そのままレースに出ても何の問題もないということです。

 それでも性能差が気になるなら、まずは費用対効果が一番大きいタイヤとチューブだけ変えてみてはどうでしょう。その上で、親御さんにこう言ってみてはいかがでしょうか。「次のレースで〇位以内に入ったら、105のロードバイクを買ってほしい!」と。

 たぶん将来、質問者さんは高校生だったころの自分を振り返り、「あの頃は良かったな」と思うのではないでしょうか。速くなる余地がたくさんあるんですから。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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