自転車界トップが考える“withコロナ”④キャニオン・ジャパン石山幸風マネージャー「オンライン販売体制をさらに進化」

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 我々の生活においてさまざまな行動変容をもたらした新型コロナウイルス。その波は自転車業界にも影響を与えている。ピークを超え、日常を取り戻しつつある「アフターコロナ」もしくは「ウィズコロナ」の事業展開を業界はどう見ているのか。「自転車界トップが考える“アフターコロナ”」第4弾は、いち早くオンラインに限定した販売形態を展開していた キャニオンバイシクルズジャパンのマーケットマネージャー、石山幸風氏にコロナ前後の変化と今後の展開について話を聞いた。

キャニオンジャパンの石山幸風さん(写真右)と、モビスターチームのアレハンドロ・バルベルデ。世界最高峰のトップ選手たちやチームを積極的にサポートしているのも、キャニオンの特色だ Photo: Nobuhiko Tanabe

売り上げが伸びているのはグラベルバイク「グレイル」

──コロナ禍の前と後で変わったことはありますか?

 今回のコロナ禍においても、キャニオンのドイツ本社工場では感染防止対策を遵守してバイク組み立ての操業を継続できています。ただ今後はパーツ供給など影響が生じる可能性もあるため、生産計画やマーケティング施策を臨機応変に実行していきます。

 当社のオンライン販売のメリットは、スマートフォンで購入が完了するだけに止まりません。メーカー直販によって高性能なバイクを適正価格で提供できますし、どこのショップが安いというような価格差もありません。新製品の発売タイミングも、製品保証もグローバルで世界共通です(e-BIKEはしばしお待ちください)。

 またお客様へお届けするバイクはいわゆる「七部組み」と異なり、ドイツ本社工場で乗車可能な状態に組み立てを行い、変速やブレーキの調整も完了しています。一般のサイクリストでも組み立てが可能なように専用の梱包箱で配送されますし、工具メーカーHOZANさんとの組み立てコラボ動画も用意しています。

 アフターサービスについても、キャニオンジャパンサービスセンターがダイレクトに行っていますから、的確でスピーディな対応が可能になります。またキャニオンの持ち込みメンテナンスに対応いただけるプロショップさんも増えていますので、ますますお客様の利便性を高めることができています。

 現在、ドイツ本社工場から日本のお客様へのご注文品の配送にも大きな遅れは生じておらず、平均一週間ほどでお届けできていますので、そこは物流業者の方々の尽力には感謝してもしきれません。またキャニオンジャパンサービスセンターも通常通り、チャット・電話・メールによるカスタマーサポート、補修部品の販売、オーバーホールなどのメカニックサービスを提供できています。

 こうして培ってきた当社のオンライン体制はこのコロナ禍において変わることはなく、むしろ強みになっていると考えます。

──通勤での活用やサイクリングの有効性が見直されクロスバイクの販売が伸びていると聞きます。ロードやクロス、MTBなど各ジャンルの割合に変化はありましたか?

 「ロードライト」「コミューター」といったクロスバイク、街中でも使えるハードテールMTB「グランドキャニオン」が伸びています。ですが、実は一番伸びているのはグラベルバイク「グレイル」です。

石山さんの愛車、グラベルロード「グレイル」。「バイクロア」等のイベントや剣山スーパー林道でのツーリングから日常遣いまで幅広く活躍してくれているという(提供写真)

 コロナ禍においても通勤から近場のサイクリングまで、多用途に活躍できるのが選ばれている理由ではないでしょうか。普段通らなかった道や未舗装路をミックスすることで、短い距離のライドでも満足感が高くなります! エンデュランス向けのロードバイク 「エンデュレース」と比較検討される方が多いです。

──一般サイクリストの間で自転車の役割が見直されている傾向を、今後の商機としてどう捉えていますか?

 コロナ禍ではスポーツや芸術といった余暇が私たちの人生にどれだけ大きな潤いを与えてくれているか、そして心身の健康の大切さを改めて強く認識させてくれました。自転車がさらにスポーツとしても交通手段としても、その可能性と素晴らしさがより一層認知されるよう貢献していきたいと思います。

 商機と問われると、明るい材料を見つけるのはなかなか簡単ではないですが、スポーツそのものがもっと身近になり、そのための余暇と可処分所得が十分な社会になって欲しいと思います。スポーツバイクが欲しいと思った時にサイクリストに選ばれ続けるように、当社の製品も魅力を高め続けていきたいです。

 それと同時にサイクルスポーツに情熱を燃やす、サイクリストの鏡ともいえるライダーやプロジェクトをグローバルでもローカルでもサポートし、スポーツとしての自転車の価値をシェアしていきたいと思います。

──オンライン化が進んでいますが、実店舗の役割、消費者のショッピングスタイルは変わると思いますか?

 高性能なバイク、高品質なサービスを、適正価格で提供するというキャニオンのビジネスの方向性はこれからも変わりません。世界中のサイクリストからさらに選ばれるように、そしてもっとサイクリングコミュニティに貢献できるように取り組んでいきます。

 販売はオンラインに特化しているキャニオンですが、その購入体験やマーケティング施策も今後さらに進化していくと思いますし、お客様に不自由なく長く愛用してもらうためのサポート体制も、さらに充実させていきたいと考えています。

 キャニオンでは「ダイレクト・デジタル・シンプル・ヒューマン」をキーワードにして、ビジネス全体の進化を推進しています。プロスポーツと密接な製品開発に始まり、ドイツ本社工場の効率化、オンライン・オフラインをミックスしたマーケティング、公式ストアのユーザビリティ改善など、その内容は多岐に渡ります。

 例えばアフターサービスについてグローバルな取り組みを一つ紹介すると、ヨーロッパでは「Bikerepair.com」というサーチエンジンで持ち込みメンテナンスが可能な近隣のプロショップを検索し、得意とするバイクのカテゴリーや顧客からの評価、工賃も比較できるようになっています。アメリカでは「Velofix」というモバイルバイクショップチェーンと協業し、メンテナンスから納車まで対応しています。

 日本では、キャニオンジャパンサービスセンターがオーバーホールなどの点検整備を受け付けていますが、多くのプロショップさんからもキャニオンの持ち込みメンテナンスを受け入れたいという声をいただいております。そのようなプロショップさんとキャニオンのオーナーを繋げられるよう橋渡しをしていきたいと考えています。

コロナ禍は世界がつながるきっかけに

──コロナ禍をきっかけにライドスタイルの変化はありましたか?

 オンラインは世界的なキャニオンアスリートたちと私たち一般のサイクリストが、かつて無いほど身近に繋がることができる機会をもたらしてくれました。ヤン・フロデノの「自宅でトライアスロン」は大きなニュースになりましたし、毎週金曜日には「#FrodissimoFriday」としてZwift(ズイフト)イベントを開催しています。

 私自身もZwiftのWahoo Shred Sessionsでダウンヒルライダーのトロイ・ブロスナンのイベントや、グラベルライダーのピーター・ステティナのグラベルライドに参加し、ライド中はチャットで、ライド後はインスタグラムで気軽に交流することができ、感激しました。

 またキャニオンは昨シーズンeレーシングのプロチーム「Canyon ZCC」を立ち上げましたし、チームアルペシンフェニックスも「Ronde van Zwift」に参戦、そしてYouTuberであるファビオ・ウィブマーも自宅で撮影した作品「ホーム・オフィス」を公開するなど、観るスポーツとしての楽しみ方の広がりを感じます。

2019シーズンのカチューシャアルペシンチームプレゼンテーションにて。キャニオンCEOのローマン・アーノルド(写真左)、往年のビッグスター(ツール・ド・フランス6年連続ポイント賞獲得)にして現在はキャニオンでプロスポーツサポートを担当する、エリック・ツァベル(写真右)と (提供写真)

 それでもやはり、私自身は旅先でのライドが人生の楽しみなので、リアルな世界で再び安全に走れる日が待ち遠しいです。白馬岩岳、富士見、ふじてんをはじめとしたバイクパークに再び足を伸ばしたいですし、欧米のグラベルレースにもチャレンジしてみたいです!

──ご自身はコロナ禍の中でどのような行動をされていましたか

 コロナ禍でもキャニオンジャパンがお客様へのサービスを継続できるようにするため、社内を複数チームに分けてチーム間の接触を避け、リモートワーク・フレックス勤務を推進しています。勤務環境の変化にも前向きに取り組んでてくれている社員皆に、感謝しています。

 私自身にとっては、ズイフトを始めるきっかけになりました。友人が誘ってくれたMEET UPは新鮮で楽しめましたし、来るシクロクロスシーズンに向けて(C2に降格したこともあり)Zwiftで計画的にトレーニングしていけたらと思っています。

 外でのライドは控えていますが、その分グラベルバイク「グレイル」で走るソロライドの行き先を自宅から東西南北と毎回変えて、季節の移り変わりの美しさを満喫しています。

キャニオンはシクロクロスの普及をはかるAJOCC、サービスセンター地元の京都府自転車競技連盟が運営する関西シクロクロスをサポートするとともに、自らも積極的に参戦している Photo: Kei Tsuji

──メーカーとしての売り方はどう変わっていくと考えますか?

 キャニオンがこれまでも主眼としてきた、世界最高といえる革新的なバイクを開発していくこと、そのバイクを適正価格でお届けすること、最善のカスタマーサポートを提供すること、そしてプロスポーツを通じ、サイクリングの素晴らしさをシェアすること、これらははまったく変わりません。

昨年チェコで開催されたMTBクロスカントリーヨーロッパ選手権を制した、マチュー・ファンデルプールと。東京オリンピックではMTB競技で金メダルの最有力選手だ (提供写真)

 来年東京オリンピックが晴れて開催され、マチュー・ファンデルプールやポリーヌ・フェランプレボ、そしてアレハンドロ・バルベルデといったキャニオンアスリートたちが輝く瞬間を間近で応援できること、そしてその興奮を多くのサイクリストと共に分かち合える瞬間を、楽しみにしています!

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