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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<340>ビッグネーム勢ぞろいのバーチャルレース トレーニングキャンプ実施の明るい話題も

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 夏場のシーズン再開に向けて着々と準備を進めるロードレース界。新型コロナウイルス感染拡大を完全に食い止めるまでは時間を必要とし、各国で施される対策のもとで選手・チーム、そしてレース主催者など関係者が動いている状況だ。そんな中で、各地から明るいニュースも届いている。ビッグネーム集結のバーチャルレースイベントが近日開催されるほか、トレーニングキャンプでリスタートを切ったチームも出てきた。今回は、レースシーンをポジティブにする話題をお届けしていきたい。

バーチャルレースイベント「ザ・チャレンジ・オブ・スターズ」参戦が決まったクリストファー・フルーム。室内でのトレーニングを続けている様子 Photo: RCS Sport

フルームら参戦のバーチャルレーストーナメント

 コロナ禍による世界的な活動自粛によって、すっかりスタンダードなサイクリングアイテムになったバーチャルライド。オンラインでのサイクリングイベントや、トップライダーが集まる本格派レースまで、サイクリストたちを熱狂させるコンテンツに成長した。

 そんなバーチャルレースシーンだが、ついに世界ナンバーワンライダーを決める時が来たといえそうだ。ジロ・デ・イタリアなどを主催するRCSスポルトは5月18日、スマートトレーナーを製造・販売するビークール、イタリアの電力会社・エネル、スイスの時計メーカー・ティソの公式パートナーシップのもと、5月23日から24日の2日間、バーチャルレース「THE CHALLENGE OF STARS」(ザ・チャレンジ・オブ・スターズ)を開催すると発表した。

バーチャルレースを得意とするヤコブ・フルサン。クライマー部門の優勝候補に挙げられる Photo: RCS Sport

 このイベントの注目ポイントは、ワールドクラスのライダー16選手を集め、脚質ごとに分けてのノックアウト方式で勝者を決めようというもの。

 脚質別トーナメントとあって、コースも各選手にピッタリの舞台が用意された。スプリンター・ルーラー部門は距離1.2km、平均勾配0.97%、最大勾配2.53%。クライマー部門は距離2.9km、平均勾配8.69%、最大勾配12.75%。ジロでおなじみのシチュエーションがバーチャル化され、スプリンター・ルーラー部門はトスカーナ、クライマー部門はステルビオ峠をイメージしたものになるという。

 参戦メンバーは豪華そのもの。なかでも、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム イネオス)の参戦はビッグトピック。出場にあたって、「レースができないこのような時期に、技術を駆使して“ザ・チャレンジ・オブ・スターズ”のようなイベントを行って、サイクリングファンにエンターテインメントをもたらすことは素晴らしい。トップライダーを相手に、ニュータイプのチャレンジができることを楽しみにしている」とコメント。

 ライバルとなるのは、4月18日から5月10日まで開催されたジロ・デ・イタリア・バーチャルを制したヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ プロチーム)。バーチャルライドでも強さを発揮しているが、「屋外での競技を待つ間、インドアサイクリングはトレーニングにおける有効な代替手段だといえる。新たなレースカレンダーを楽しみにしているが、それまでの間は“ザ・チャレンジ・オブ・スターズ”のような他のプロライダーとバーチャルレースで勝負できることは素晴らしい機会だ」と意気込む。

 このほか、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)や、世界王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)らも参戦。日本からの観戦は、公式のTwitterFacebookInstagramから可能。また、大会2日前には、両部門の優勝者を予想するスペシャルイベントも予定されている。

ザ・チャレンジ・オブ・スターズ 出場選手と組み合わせ

●スプリンター・ルーラー
パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) vs ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)
ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) vs マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) vs ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) vs フィリッポ・ガンナ(イタリア、チーム イネオス)

スプリンター・ルーラー部門組み合わせ Photo: RCS Sport

●クライマー
ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ プロチーム) vs ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) vs シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)
ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) vs トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
クリストファー・フルーム(イギリス、チーム イネオス) vs ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)

クライマー部門組み合わせ Photo: RCS Sport

イスラエル・スタートアップネイションがトレーニングキャンプを実施

 チーム単位での活動再開の情報も入ってきた。

イスラエル北部でトレーニングキャンプを実施したイスラエル・スタートアップネイション Photo: Ronen Topelberg

 トップチームで先陣を切って活動再開を実現させたのは、イスラエル・スタートアップネイション。5月上旬から中旬にかけて、同国北部にて3日間の集中トレーニングを行ったことを発表している。

 このキャンプには、同チームのイスラエル人ライダーに加えて、下部組織のイスラエルサイクリングアカデミーの選手が参加。12選手が集まり、スプリントとクライミングに特化したトレーニングを行った。北隣のレバノンとの国境近く、ベイト・ヒレルを拠点とし、チーム独自の「コロナウイルスルール」を設定しての活動。選手・スタッフが1カ所に20人以上集まらないよう留意し、参加者には健康診断書への署名、検温、食事は個別配給といった措置を講じたという。また、ミーティングは屋外で行い、マッサーは施術時にマスクを着用するなど、厳格なルールを用いたことも明かしている。

 キャンプの実施に関して、チームオーナーのシルヴァン・アダムス氏は「常に前向きで、迅速な対応が光ったイスラエルの管理体制と、(世界的に見て)比較的少ない症例数を証明している」と述べ、国を挙げての取り組みを称賛。これからはイスラエルチームとして初参戦となるツール・ド・フランスに向けて、準備のペースを上げていくことも強調した。

トレーニング前に検温が行われる Photo: Ronen Topelberg
マスクを着用して施術するマッサー Photo: Ronen Topelberg

今週の爆走ライダー−ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 5月23日から24日にかけて開催されるバーチャルレースイベント「ザ・チャレンジ・オブ・スターズ」に、スプリンターとして出場メンバーに選出。現役のベルギーチャンピオンは、トップスプリンターの1人であるユアンとの対戦が決まった。

ベルギーチャンピオンジャージを着用するティム・メルリエ(左端)。2月のツアー・オブ・アンタルヤ第4ステージを制し、スプリンターとしての力を見せつけている Photo: AKRA

 自転車王国ベルギーの王者でありながら、ロードレース界ではあまり名が通っていない。その理由は、“本職”がシクロクロスであるから。彼にとってのハイシーズンは冬であり、ロードにはさして力を注いでこなかった。

 ただ昨年、ノーマークからベルギーの王者まで駆け上がったことで、状況は一変した。例年マウンテンバイクで脚試しをしていた夏場には、取材やテレビ出演のオファーが殺到。未経験の事態に戸惑ったというが、クローゼットに収められたチャンピオンジャージを毎朝確かめては自らを鼓舞。マウンテンバイクでの成果はイマイチに終わってしまったが、ロードでのチャレンジに日々前向きになっていったという。

 今年は当初、ベルギーのカラーをまとって春のクラシックに臨むつもりだった。そのために、冬場のシクロクロスは強度を落としたほど。思わぬ事態に予定は狂ったが、将来的にロードへの比重を高めていく方針には変わりないという。

 シクロクロスとロードの両立を「2つの愛」と表現する。シクロクロッサーでありながら、ロードでも超人的な力を見せるチームメートのマチュー・ファンデルプール(オランダ)や、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)のようにはなれないというが、「自分なりのやり方がある」と現状に胸を張る。そんな最中でやってきた「ザ・チャレンジ・オブ・スターズ」。バーチャルとはいえ、世界屈指のライダー相手にチャレンジする絶好の機会。ベルギー王者になったときを彷彿とさせるジャイアントキリングを起こす可能性は十分にあるはずだ。

大注目のバーチャルレース「ザ・チャレンジ・オブ・スターズ」に選出されたティム・メルリエ。シクロクロスで培った脚で大物食いを狙っている Photo: AKRA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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