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教えて! 安井先生<5>自転車の整備はショップに任せるべき? 自分でやるのもあり?

by 安井行生 / Yukio YASUI
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今回のお題

Q:私は自分の自転車を自分でいじるのが大好きです。洗車やメンテナンスはもちろん、パーツの交換なども自分でやります。しかし、「整備はショップに任せるべき」という声もあります。安井さんはどう思われますか?

A:これ、実はなかなか難しいテーマなんです。自分でいじれることがスポーツバイクの楽しみの一端でもあるし、いじることで自転車に対する理解が深まることは確かです。工賃が節約できるなんてメリットもあるかもしれません。でも、「やりたいならやればいいじゃん」とは言えないんです。

自転車の整備はショップに任せるべき? Photo:gettyimages/ filadendron

 まず、2つのポイントを再確認しておきましょう。

 「自転車には車検制度がない」こと。これがクルマやオートバイ(250cc以上)とは違うところ。そして、「人を傷つける可能性がある」こと。ここがプラモデルやラジコンとは違うところです。

 車検がないので、自分で組み立てたりパーツを交換したりして公道で自由に乗り回せますね。だからよく「自転車は大きなプラモデルみたいなもの」なんて言われます。理解はできますが、僕はその比喩が好きではありません。自転車は人を乗せ、体重を支え、刻々と変化する大きな負荷を受けながら、操作を正確に運動に反映しながら、高速で疾走する乗り物です。

 もしブレーキワイヤーの締め付けが甘かったら? もしブレーキシューホルダーの固定力が不足していたら? もし下っている最中にフォークコラムが折れたら? 自分が死んじゃうかもしれないし、人を死なせてしまうかもしれない。

 自転車って、そういう“重い”乗り物なんです。本来なら、軽い気持ちで「組んでみるか」と言えるようなものではないんです。もちろん「プラモみたい」と言っている人は、「自分で組み立てられるしパーツも変えられるし」くらいの軽いニュアンスなんだと思いますが。

 でも、「一切触るな、ショップに全て任せろ」とも言えません。なぜなら、僕がいじるの大好きだから。もう走るのと同じくらい自転車いじりが好き。勉強や仕事では徹夜はほとんどしたことありませんが、自転車いじってて夜が明けたことは何度もあります。

アマチュアメカニックの心得

 いい機会なので質問にお答えしつつ、20年ばかり自転車いじりやってきて思うところを書いてみましょう。名付けて「アマチュアメカニックの心得」。

①自分は下手くそだと自覚し、臆病になること

 お恥ずかしい話ですが、これまでたくさん失敗してきました。ステムの締め付けトルクが足りずハンドルがおじぎをしたのは一度や二度ではないし、ステムのフォークコラム側のクランプを締め忘れて派手に落車したこともありました。リアディレーラーをスポークに巻き込むという悲劇も経験してます。

 幸いにして人様を傷つけたことはありませんが、自分の整備の腕は全く信用してません。だから自転車に少しでも手を加えたら、走り出す前にハンドルに荷重をかけて左右にこじってブレーキかけて…と、何度も確認します。作業にいくらでも時間をかけられるのはアマチュアの特権ですから。

 自分で自転車をいじるなら、「自分は機械いじりに関しては素人だ」と自覚し、常に臆病でいてください。

②プロメカニックへのリスペクトを忘れないこと

 昔、ケーブル内蔵のフレームのライナーをミスって抜いてしまい、何時間かかってもケーブルが通らず、ショップに持って行ったことがあるんですが、ものの数分でケーブルを通してくれました。まるで魔法を見ているようでした。

 これだけでなく、僕はメカニックに何度も助けられてます。ホンモノのプロメカニックはやっぱりすごいんです。知識、経験、技術、感覚、どれもアマチュアとは比べ物になりません。「自分でできるし」「このくらい簡単」「工賃なんて払う必要ない」なんて思わないこと。ボルト一本締めるのだって、プロとアマチュアでは差が出ます。それを忘れてはいけません。

③プロに任せるべきところは任せること

 「ここまでは自分でできる」「ここからはプロに任せる」という線引きをしておくこと。「駆動系は自分でやるけどハンドル周りは生死にかかわるから任せる」とか、「家でやるのは注油と洗車だけにする」とか。僕は基本的なことは自分でやりますが、フレーム&フォークに刃を入れたり力をかけたりする作業や、ホイール組み&振れ取りなどは、近所の(信頼できる)ショップにお願いしています。

 その境目が曖昧のままだと、いつか痛い目にあってしまいます。踏み込んではいけない領域には手を出さない。それが大人の自転車乗りってもんです。

④ 良い工具を使うこと

 工具はそこそこいいものを買いましょう。僕らアマチュアは弘法ではありません。筆は選ぶべきです。

⑤ 機材を理解し、機械いじりの基本を学ぶこと

 いじる対象となるモノの素材や構造や設計意図を理解しましょう。このパーツには走行中にどんな方向からどのくらいの負荷がかかるのか。このネジを締めたらどこにどういう方向の力がかかるのか。パーツをじっと眺めて、動くところを観察して、各部にかかる力を想像して、ときには理系の友人に聞いてみたりもして、機械に対する理解を深めてください。

 また、どのように工具を持ってどのように力を入れればいいのかを考えましょう。そうすると、だんだんといじり方の勘所というか、機械との付き合い方が分かってきます。それがアマチュアメカニックとしての進歩です。取説見ただけで理解しないままいじっちゃうのが一番怖いです。

自信がなければプロショップに

 ではまとめを。ケーブル内蔵が当たり前になり、ディスクブレーキが主流になりつつあり…と、自転車いじりが難しくなってきた今。しかし、車検制度がなく、構造がシンプルで車体もパーツも軽いため、クルマやオートバイに比べれば整備や改造のハードルがかなり低いことに変わりはありません。しかも、今はネットでなんでも買えて、整備方法がいくらでも検索できて、動画もあって…と、やろうと思えば全部自分でできちゃいます。

 だからこそ、「自分で自分の自転車をいじるということは、どういうことなのか」と、改めて考えてみてほしいと思います。そして、僕がここで挙げたような自分のルールを設定してほしいと思います。そうする自信がないなら、プロショップに任せることをお勧めします。

インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

 大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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