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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<339>アクティブさ戻ったヨーロッパの自転車界 ロックダウン解除でトレーニング再開の動きも

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新型コロナウイルスの猛威によっていまだ緊張感が漂う世界情勢だが、スポーツでは競技によってシーズンの開幕または再開といった動きもみられるようになってきた。ロードレース界も同様で、夏ごろのシーズン再開を視野にレーススケジュールがまとまってきた。特にヨーロッパではロックダウン(都市封鎖)の段階的な解除にともなって、トップライダーたちが屋外での活動を解禁。戦線へと戻る準備を始めたところだ。そこで、ここ1週間での有力選手やチームの動向をチェック。合わせて、出場チームが決定しルートの再考にも入ったブエルタ・ア・エスパーニャの最新情報もお届けしよう。

シーズン再開に向け選手・チームが動き始めている。熱きレースシーンが夏に戻ってくるだろうか(写真はブエルタ・ア・エスパーニャ2019第5ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

ヨーロッパ各地で屋外トレーニング再開 ツール目標の公言も

 中断していた2020年シーズンのUCIワールドツアー新スケジュールは前回のこのコーナーでお伝えしたとおりだが、ときを同じくしてヨーロッパ各地では少しずつロックダウンの解除を実行。多くの国で3月下旬からの外出制限が行われていたが、これからはあるべき日常を取り戻すための日々を送ることになる。

 ロードレース界もいよいよ動き出す。5月4日にイタリアやスペイン、トップライダーの多くが拠点とするアンドラなどでロックダウンが一部解除に。ソーシャルディスタンス(対人距離)の確保などの条件付きながら、選手たちが屋外でのトレーニングを再開した。11日にはフランスをはじめとしたヨーロッパの広範囲で解除。一大勢力であるコロンビアでも、自転車選手の屋外トレーニング許可が下りたことが明らかになっている。

 いまはまだ、本格的な活動再開への長いプロセスの始まりに過ぎないが、アクティブさを取り戻しつつあることで、選手やチームからの明るい声も聞かれるようになってきた。

シーズン再開に向け意欲を高めているプリモシュ・ログリッチ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第21ステージ、2019年9月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 「新たなレースカレンダーに対して、いまは最善を尽くすだけ」と語るのは、昨年のブエルタ王者プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)。昨年末の段階から、今シーズンはツール・ド・フランスでのマイヨジョーヌ獲得を最大目標に設定しており、これからもその軸は変わらないことを明言。チームも当初の予定通りログリッチ、ステフェン・クライスヴァイク、そして今季加入のトム・デュムラン(ともにオランダ)のトリプルリーダー態勢で8月29日のツール開幕を目指していくことを再度表明した。

 ツール本番ではユンボ・ヴィスマにとって最大のライバルになるであろう、チーム イネオスのエースたちも元気に活動再開を果たしている。昨年のクリテリウム・デュ・ドーフィネで負った大けがからの復調を目指すクリストファー・フルーム(イギリス)は順調な回復ぶり。ツールが2カ月延期になったことは「調整に時間を有効活用できる」と明るい。

 2年前のツール覇者であるゲラント・トーマス(イギリス)は、自国へ帰っていたがこのほど本来の拠点であるモナコへと戻ったことをSNSでアピール。同国も隣国フランスと同様にロックダウンが解除され、トレーニング再開の見通しが立ったよう。

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Boarded and ready to go ????????

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 そして、王座防衛を目指すエガン・ベルナル(コロンビア)は、「大会前半の山岳ステージで誰がチームリーダーかはっきりする可能性がある」と、すでに視線は本番へと向く。地元コロンビアのシパキラ市による配慮で、時間限定でのトレーニングが許されていたが、ロードレースシーズン全体が少しずつ活性化しているのに合わせて、若き王者も気持ちが高まっている様子。「状況が許すようなら、ストラーデビアンケ(8月1日)からレースを始めたい」と公言するなど、“再開幕”からエンジン全開でいきたいという。今年のグランツールはツールに集中するが、来年はジロ・デ・イタリアとツールでの「ダブルツール」を狙いたいとビジョンを明かすなど、現状でのモチベーションの高さはトップライダーの中でも随一だ。

 これからしばらくは、屋外トレーニング再開や新たな目標設定に関するコメントがあらゆるところから聞かれることだろう。注目すべき選手たちの声や表情をキャッチしながら、シーズン再開へのプロセスをたどっていこう。

ツール・ド・フランスで共闘予定のエガン・ベルナル(左)とクリストファー・フルーム。ともにモチベーションを高めている =ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム2019チームプレゼンテーション、2019年10月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

ブエルタ・ア・エスパーニャ2020出場22チームが決定

 ブエルタ・ア・エスパーニャを主催するウニプブリクは5月8日、2020年大会の出場全22にチームを発表。19のUCIワールドチームに加えて、同プロチームから3チームを選出した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2020出場チーム ©︎ Unipublic

 同プロチームに与えられた3つの出場枠のうち、昨年のUCIワールドランキングで同プロコンチネンタルチーム(現プロチーム)で最上位にランクしたトタル・ディレクトエネルジーが自動選出。規定により出場義務は発生しないが、チーム側が出場を表明したことで参戦が決定。

 残る2つの枠を占めたのがスペイン勢。実力・実績で申し分なし、ブエルタでは常連のカハルラル・セグロスRGAと、昨年の大会でアンヘル・マドラソ(スペイン)のステージ優勝が印象深いブルゴス・BHが選ばれた。

 結果的には順当といえそうだが、出場を逃したチームには、2016年の王者であるナイロ・キンタナ(コロンビア)擁するアルケア・サムシックや、グランツール出場を熱望していたシクロクロス世界王者マチュー・ファンデルプール(オランダ)が率いるアルペシン・フェニックスの名も。ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)がオーナーを務めるバスクチーム、フンダシオン・オルベアも選外になった。

 大会は新スケジュールによって、10月20日から11月8日まで、18ステージよって行われることとなっている。当初予定されていたオランダ開幕は実現せず、同国での3ステージをそのままカットし、第4ステージのスタート地を予定していたバスク自治州のイルンで開幕を迎える見込みになっている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2020出場チーム

●UCIワールドチーム
アージェードゥーゼール ラモンディアール
アスタナ プロチーム
バーレーン・マクラーレン
ボーラ・ハンスグローエ
CCCチーム
コフィディス
ドゥクーニンク・クイックステップ
EFプロサイクリング
グルパマ・エフデジ
イスラエル・スタートアップネイション
ロット・スーダル
ミッチェルトン・スコット
モビスター チーム
NTTプロサイクリング
チーム イネオス
ユンボ・ヴィスマ
チーム サンウェブ
トレック・セガフレード
UAE・チームエミレーツ

●2019年UCIプロチームリーダー
トタル・ディレクトエネルジー

●ワイルドカード
ブルゴス・BH
カハルラル・セグロスRGA

ブエルタのポルトガルステージ断念

 そのブエルタだが、もう少し調整が必要となっている。

 主催者ウニプブリクは5月9日、大会途中で通過する予定だったポルトガルへの入国を断念すると発表。新型コロナウイルスの感染拡大による例外的な状況と、同国でのレース開催に必要な条件を確保できないことを理由に挙げた。

 コース再考が求められているのは、序盤でポルトガルに入国後南下してポルト.マトジニョシュにフィニッシュする第15ステージと、ビセウを出発後東進しレース終盤にスペインへと戻る第16ステージ。すでに代替都市との確約は済ませているものの、ステージに関する詳細は新ルートとプロファイルが確定したのちに発表するとしている。

ポルトガル入国が予定されていたブエルタ・ア・エスパーニャ2020第15ステージ ©︎ Unipublic
ポルトガル・ビセウをスタートする予定だったブエルタ・ア・エスパーニャ2020第16ステージ ©︎ Unipublic

 2020年大会は当初、前述したオランダのほか、ポルトガル、さらにはフランスにも足を延ばす国際色豊かな大会になる予定だったが、前例のない事態によってオランダとポルトガルへのブエルタ進出はかなわないことになった。なお、フランスへ入国しトゥールマレー峠での頂上フィニッシュが控える第6ステージは、いまのところ変更はされていない。

今週の爆走ライダー−ガブリエル・クレイ(イギリス、モビスター チーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 レース再開までを待つ今の時期は、プロトンの新たな顔にスポットをあててみたい。今回はモビスター チームに今年加入したイギリス人、ガブリエル・クレイを挙げる。

モビスター チームで将来のエーススプリンター候補として育成されるガブリエル・クレイ Photo: Gomez Sport + Telefónica

 24歳のネオプロは、コロナ騒動の収束を誰よりも待ちわびていることを自認する。スプリンターである彼は、メインであるライドと合わせて筋力トレーニングをジュニア時代から導入。これまでの経験から、ジムでの高負荷のトレーニングの不足は自らの走りを失う危機にあることを理解している。

 179cm・78kgの体は、筋力トレーニングで身につけた鎧だ。チーム ウィギンスで走った2018年に環境の変化からジムへ行く機会が減ると、思っていた以上にスプリント時のパワー不足を痛感した。以来、全身で瞬発的な力を出せて、なおかつ集団内でも当たり負けしないための強固な体を求め、週に数回のジムワークを欠かさないようになった。

 現チーム入りも、ジムワークに理解を占めるパチ・ヴィラコーチの存在があったから。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)らを育てた名コーチからのメニューをこなしながら、将来のトップスプリンターを目指している途中だ。

 今年はデビューイヤーとあり、シーズン序盤は目立った成果こそ挙げられなかったが、トップのレースレベルに慣れて結果を出していこうと意気込んでいた。それだけに、過去に例をみない形でのシーズン中断には、「プロ入り前の状態に戻ってしまうかもしれない」と焦りを隠さない。

 ただ、いま置かれている状況を受け入れる以外、ほかの方法がないことも分かっている。とにかく我慢をして、来るべき活動再開の日を待つことにする。鍛練を重ねることで自分自身が強くなっていく感覚は、心身ともに覚えている。プロセスは変われど、トップスプリンターになるという大きな目標に変化はない。

チーム ウィギンス時代のガブリエル・クレイ。早くから筋力トレーニングを取り入れスプリントに生かしてきた。コロナ騒動が収束したらジムでのトレーニングも再開するつもりだ Photo: Movistar Team
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

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