自転車:+175%
徒歩:-1.7%
自動車:-46%
バス:-80.3%
電車:-90.9%
路面電車:-92.2%
調査対象:1200人
※ データ取得のため使用したアプリ:Catch my Day
つれづれイタリア~ノ<142>自粛後の世界はこう変わる? 変化するイタリアの自転車活用法
中国発祥の新型コロナウイルスの急な感染拡大が世界中に甚大な影響を与えています。多くの国で医療体制が捌き切れる能力を超える感染で経済を停滞させています。しかし、ヨーロッパを中心に国民へ課した厳しい移動制限は徐々に緩和され、市民生活は元に戻りつつあります。禁止されていた野外スポーツも2カ月ぶりに解禁されました。ただ、まだ状況は不安定のため、「三密状態(密集・密接・密閉)」を避けるべく、様々な制限がかけられています。今の日本とまったく同じような状況です。 今日のテーマは、新型コロナウイルスショック後の世界と移動手段としての自転車の姿をご紹介します。

自転車は新型コロナウイルス後の社会の要に?
イタリアで移動制限が 5月4日、部分的に解除されました。感染防止対策に合格した企業は仕事を再開させ、念願だった野外活動(サイクリング、ランニング、釣り、ゴルフ、カヌーなど)も解禁に。全て日本で「自粛警察」と称される人に叩かれる行為ばかりです。
スーパーや薬局以外、営業が認められていなかった商業施設の一部やレンタカー、自転車ショップの再開が許可されました。しかし、学校、レストラン、バーなどは、依然として使用禁止のまま。県をまたぐ移動も制限され、移動の際は説明書が必要です。
日本と同様に、会社までの移動手段をどうするのか、という問題が持ち上がっています。三密を避けるため、バス、電車、地下鉄、路面電車の利用を控える人が増えているのですが、車を選択した人々による渋滞は懸念されます。実際、電車、地下鉄、バスといった公共交通機関の定員数は厳しく制定され、乗車率を50%までとされています。手袋とマスクの着用も義務とされています。結果として、通勤できなくなる人は続出していますね。この状況の中、人々の関心は自転車へと向けられています。
4月25日、スイスの交通計画と交通システム研究所(Institut für Verkehrsplanung und Transportsysteme)が発表した調査結果を見ると、よくわかります。決して自転車王国とは呼べないスイス国内の自転車の使用は2019年秋と比べて175%増えているようです。逆にバス、電車などの公共交通手段の使用は軒並み8割以上減少しています。日本に似た現象です。

今、イタリア政府は思い切った対策に乗り出しました。人口5万人以上に住んでいる住民を対象に、車の使用を抑えるため、イタリア国土交通省(Ministero delle Infrastrutture e dei Trasporti) は6日、自転車や電動アシストキックボードの購入に500ユーロまで補助金を出すと発表。さらに思い切って、車進入禁止地区の拡大と自転車専用道路の充実化を加速される企画もあります。
例えば、ミラノの中心街に35kmの新しい自転車レーンを作り、時速30kmゾーンや歩道幅の拡大を夏までに完成する予定です。

左から
- 自転車を公共交通手段に持ち込むアクセスを改善
- 新しい自転車専用道路のための道路交通法変更
- 自転車専用道路スペース(標識のみ)
- 実在の自転車専用道路
- シェアバイクスペース
- カーゴバイク(Cargo Bike)導入を促進
- 駐輪スペース
自転車に乗るときのエチケット
イタリア自転車競技連盟とACCPI(Associazione Corridori Ciclisti Professionisti Italiani、イタリアプロ自転車競技者協会)も自転車によるキャンペーンを提案しています。新型コロナウイルス拡散防止に関係するものもあれば、エチケットに近いものもあります。#iovadoinbici(私は自転車で行きます)と称し、かなりわかりやすいものになっています。見てみましょう。
1. 一人で出かけよう(混んでいる道をさけ、安全な距離を守りましょう)
2. お住いの地域(県)から出ないようにしましょう(今の我慢は明日の自由につながる)
3. ウイルスの拡散を避けるため鼻を噛むとき、唾を吐くときティッシュを使いましょう
4. 手をよく洗い、ボトルを交換しない
5. ゴミを持ち帰ろう(自然を守るのが大事)
6. 自転車用ゴーグルを使おう
7. 自転車を降りたら、マスクと使い捨てグローブを使おう
8. 自転車を降りたら機材を清潔にしよう
9. 他人に安全な情報を伝えよう(そうすることでまたみんなで走れる)
10. 通勤や移動の時、自転車に乗ろう
マルコの一言
ワクチンの開発や治療の充実でこの新型ウイルスも普通のインフルエンザに変わる日は決して遠くないと思います。一方、この非常事態は、他人と関わり、自然の付き合い方、社会のあり方など、様々なことを考えさせてくれるきっかけになったかもしれません。ヨーロッパでは「街を人に返そう」という運動は加速し、移動手段として選ばれたのがやはり環境に優しい自転車です。
道路の狭いヨーロッパの旧市街で自転車専用道路が作れるのであれば、道路の狭い日本でも作れない訳ではないと思います。日本の未来をきちんと考え、頭のいい政治家に期待します。

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ」