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栗村修の“輪”生相談<178>20代男性「クライマーですが平坦は他の人に任せるべきでしょうか」

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 初めまして、20代男性のロード乗りです。

 ロードバイクに乗り始めて4年、何度も仲間とツーリングに行く内に自分は明らかにクライマーであると分かりました。それゆえ上りは人よりも速く走れますが問題は平坦道です。少しでも私が先頭を走るとグループのスピードは落ち、更には後ろから抜いてくる仲間についていけずグループから後れをとる始末です。

 平坦はクライマーの仕事場ではないからと他の人にドラフティングを任せるべきか、それとも他に方法があるのでしょうか。

(20代男性)

 真剣に悩んでいらっしゃるのだと思いますが、周囲からしたらなかなか贅沢な悩みかもしれませんね。平地はついて行けるけれど上りで大きく遅れてしまう…という人のほうが多いであろうからです。

 質問者さんは体重あたりのパワー、つまりパワーウェイトレシオが大きいタイプなのだと思いますが、おそらく小柄ではないでしょうか? 180cm/60kgでも、162cm/54kgでもパワーウェイトレシオは同じですが、質問者さんはたぶん後者だと思います。

 というのも、同じパワーウェイトレシオなら、一般的に体重がある人ほど絶対パワーも大きくなる傾向がありますから、平地にも強いはずだからです。質問者さんは、パワーウェイトレシオは大きいけれど絶対パワーが小さいタイプなのでしょう。さらに付け加えると、たぶん空力のいいフォームをとるのが苦手なんじゃないでしょうか。

 そんな質問者さんが平地で後れをとるのはやむを得ない話です。トッププロにもそういう小柄な選手はいますが、平地の独走でがんばったりはしません。上りとか、自分の得意なところで勝負をするわけです。

小柄で体重の軽さを武器にするクライマーは空気抵抗の割合が増す平坦では不利となる Photo: Yuzuru SUNADA

 それでもどうしても平地で先頭を引きたいなら、筋肉量を増やして絶対パワーを大きくすることになりますが、このようなクライマーにありがちなのが、平地での力を強化した結果上りが遅くなってしまった…というパターンです。上りの力を犠牲にする覚悟は必要です。

 一方で、平地の強化方法の中には、上りの力にとってもプラスになるものがあります。それは、瞬発力をつけるトレーニングを取り入れることです。

 ご説明する前に、改めてロード選手の代表的な脚質を確認してみましょう。

・ルーラー(平地での高速走行を維持できる/大柄であることが多い)
・スプリンター(短時間のダッシュ力に優れている/速筋が多く体重が重い)
・クライマー(上り坂では相対的に速い/パワーウェイトレシオ値が高い=質問者さん)
・パンチャー(クライマーとスプリンターを合わせたようなタイプ=クライマーに比べてダッシュ力がある)

 今回のご質問の対象となるのはルーラーでとしての能力ですが、ルーラーは大柄で筋肉量が多いタイプがほとんどなので質問者さんが目指すタイプではありません。

 一方、パンチャーであれば、上りの力を犠牲にせずに平地での能力を獲得できます。というのも、自転車は慣性をうまく使えるとどんどん有利になっていく特徴があるからです。

 どういうことかというと、ダッシュやインターバルに強いパンチャーは平地を高速でずっと走り続けることはできませんが、コーナーの立ち上がりや先頭交代時など速度や出力が大きく変化するシチュエーションでも、前走者との間隔を開けずに(つまり風を受けずに)うまくやり過ごせるという強みがあります。

 ですからパンチャーは、パッと加速してすぐに他の人のドラフティングに入り、脚を休めて回復したらサッと先頭を引いて下がり、またすぐに無理なく人の後ろにつけるのです。独走力があまりないパンチャーが長いレースで勝てることがあるのは、上記のように脚を残したままゴールにたどり着くことができるからです

 ですから、質問者さんは、まずは10秒ほどのダッシュ練や全力での1分走などを繰り返す練習を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 そして平地を走る時は、ルーラーのようなドッシリした高速維持形の走りではなくて、パッとサッと先頭に出て、まわりの迷惑にならないように自分の役割をうまくこなしていく走り方を習得してください。

 それと、上りの力を犠牲にせずに改善できるポイントとしては、空力ですね。空気抵抗の少ないフォームがとれるようになれば、平地でのスピードはかなり増すと思います。こちらは体質改善よりも手っ取り早い対策ではあります。

 あくまでご自身が持っている強みを消さないように、「平地での走り=空気抵抗との戦い」を改善させていってください。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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栗村修の“輪”生相談

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