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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<337>フランスの大規模集会禁止延長はツール開催に影響? 有力選手は屋外トレーニングの準備へ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にともない、シーズン中断が続いているサイクルスポーツ界。ロードレースは7月の再開に向けて動き出したことを前回お届けしたが、さらなる展開として、日々の感染者数の増減を見極めたうえでの対応が各国で見られるようになってきた。これを受けてか、有力選手の中には新たな目標設定を行う様子や、新スケジュールの構築に向け奔走する大会主催者の動向も明らかに。今回は、シーズン再開に向けた続報として、各地から届いた現況についてまとめてみたいと思う。

ヨーロッパ各地で屋外トレーニング再開に向けた動きが出てきた。選手・大会主催者の動向にも注目が集まる(写真はパリ~ニース2020第5ステージから) Photo: Yuzuru SUNADA

フランスでは5000人以上のイベントが9月まで禁止に

 本記出稿時(4月28日)にフランスで大きな動きが見られた。4月28日、エドゥアール・フィリップ首相は、外出禁止措置に関する解除案を議会にて発表。そこでは、5000人以上が集まるイベントを9月まで禁止とすることが決定。加えて、当面は集団スポーツや10人以上の集会を禁止することも確認された。

フランスでは9月まで5000人以上が集まるイベントの禁止が決定。8月29日開幕のツール・ド・フランスに大きな影響を及ぼす可能性が出てきた =ツール・ド・フランス2019チームプレゼンテーション、2019年7月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この決定によって、スポーツ界は相応の対応が求められることになった。同国ではすでに国内サッカーリーグの「リーグ・アン」「リーグ・ドゥ」のシーズンキャンセルが決定。そして、さらなる焦点となりそうなのが、ツール・ド・フランスの8月29日開幕がかなうかどうかである。4月15日に決定されたレーススケジュールであれば、8月下旬にチームプレゼンテーションやグランデパールイベントが実施され、同月最後の3日間にニースなど同国南部を走行するルートが予定される。

 大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏は、3月の時点で「無観客」でのレース実施を否定しており、それを貫くとなれば、開催日の変更などを検討する必要性が出てくる。

 フィリップ首相の発表から数時間後、同国スポーツ省はこの決定がツール開催に直接的な影響があるかどうかはまだ分からないとしており、「ツールが延期またはキャンセルされることを意味するものではない」と強調している。

 ただ、ツールはフランス国民のみならず世界的なビッグイベント。チームプレゼンテーションやスタート・フィニッシュ地の観客動員が5000人を割ることはまず考えられず、「5000人以上が集まるイベント」としない方が至難の業であるのが実情である。

 この決定によってツールを含む多くのレースが開催方式の再検討を求められることになるのは必至。大会主催者による決定や声明をより注視していく必要が出てきた。

イタリア、フランスなど段階的な外出許可へ

 ヨーロッパの中でもとりわけ感染者数の多かったイタリアとフランスだが、条件付きで屋外でのトレーニングが再開できる見通しとなった。

屋外でのトレーニングが禁じられていたイタリアでは5月4日に解除される見通しになった(写真はイル・ロンバルディア2019から) Photo: Yuzuru SUNADA

 2月23日のロンバルディア地域での都市封鎖を皮切りに断続的に封鎖地域を増やしていったイタリアでは、ジュゼッペ・コンテ首相が「5月4日から屋外でのスポーツ活動を許可する」と発表。対象となるのは、同国のオリンピック委員会、パラリンピック委員会、各種スポーツ団体から認められた「オリンピックまたはパラリンピックに参加準備を行っているプロ・アマのアスリート」。また、現時点では個人競技に限定され、自転車競技はこれに相当するとされる。ルールとして2メートル以上の対人距離を保つことが挙げられている。ちなみに、チームスポーツにおける活動再開は5月18日が予定されているほか、各種スポーツ施設は6月8日まで閉鎖。

フランスではスポーツを含めたあらゆる分野での経済活動の復興を目指すプロジェクトが始動する(写真はツール・ド・フランス2019第4ステージから) Photo: Yuzuru SUNADA

 大規模イベントの禁止が延長されたフランスでも屋外トレーニングが許可される可能性が高まっている。同国のスポーツ紙・レキップが4月26日に報じたもので、5月11日にプロライダーたちの外出禁止が解除されるとのこと。当面は個別トレーニングが絶対条件とされ、複数人での走行やチームトレーニングは禁止。

 なお、屋外トレーニング再開の許可については4月28日に正式発表と見られていたが、5月7日に解除するかどうかを決定するとフィリップ首相が明らかにした。同国ではスポーツ、グルメ、文化、観光といった分野での経済活動の再開並びに復興を目指すプロジェクト発足の準備も進んでいる。この屋外トレーニング許可もその一環とされ、少しずつながらレースシーズン再開への足掛かりとなっていくか。

 両国とならんで、スペインでも5月2日から運動と散歩に関する規制を緩和する見込み。当面は近距離での活動のみとのことだが、ゆくゆくは屋外でのトレーニング再開も決まっていくことだろう。少しずつながら、明るい日々を取り戻すためのポジティブな話題が各地から聞かれるようになってきている。

本格トレーニング再開に明るい選手たちの姿

 シーズン再開やトレーニングの見通しが立つことも関係してか、有力選手たちが次々とアクションを起こし始めている。総じてモチベーションは高い。

インドアトレーニングに乗り気ではなかったエリア・ヴィヴィアーニ。まもなく解禁される屋外でのライドを楽しみにする =サントス・ツアー・ダウンアンダー2020第1ステージ、2020年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 屋外トレーニング再開に心躍らせているのがエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)だ。外出禁止期間中はスマートローラーでのインドアトレーニングやオンラインレースが世界的に盛り上がったが、これに「乗り気」じゃなかったヴィヴィアーニ。「屋外でのライドと違いがありすぎる」というのが理由で、実際に外出禁止期間中はローラーでのトレーニングは行っていたものの、あくまでも体力レベルを落とさないためだったよう。5月4日に制限緩和されたらすぐにでも屋外トレーニングを行う構えで、「もう一度走り出す時がきた」と、その日を待ち焦がれている。

エガン・ベルナルは地元コロンビア・シパキラ市からの許可を得て条件付きで屋外トレーニングを再開させた =ツアー・コロンビア2020チームプレゼンテーション、2020年2月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年のツール・ド・フランス覇者、エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)は、地元シパキラ市の許可のもと27日から屋外でのトレーニングを再開できることになった。

 これはシパキラ市独自の対応で、ベルナルのほか、チームメートのブランドン・リベラら、同市で生活する5選手が対象に。時間は午前5時から8時までに限定し、彼らが一緒に走る場合でも5メートル以上の距離を守ることが条件。コロンビアに帰国後はシーズン再開まで時間があることから、トレーニングを一時的にストップしていたベルナルだが、いよいよツール2連覇に向けて再始動といったところか。このところは自身が使用したバイクや、昨年のツールで獲得したマイヨジョーヌをチャリティーオークションに出品するといった活動も行ってきたが、地元の仲間とともにいよいよ動き出す。

 少しずつバイクに跨る状況が整いつつあることもあってか、早々に目標を定めた選手の声も聞こえてくる。

レムコ・エヴェネプールはロード世界選手権とジロ・デ・イタリアが目標になると公表した =ブエルタ・ア・サンフアン2020第6ステージ、2020年2月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ベルナルと同様に、その実力から今シーズンの動向が注目されているのがレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)。こちらは具体的な目標設定に至っており、10月開催が見込まれるジロ・デ・イタリアを目指すことを明言している。当初からジロでのグランツールデビューを決めていたエヴェネプールだったが、シーズン中断と大会延期とが重なったことで、一度ターゲットを白紙にしていた。ただ、8月以降のUCIワールドツアー再開の方針が決まったこともあり、改めてレースプログラムを設定。まずは9月のロード世界選手権に向け調子を上げていき、そこでの勢いのままジロへと乗り込もうという公算だ。

今週の爆走ライダー−イアン・ガリソン(アメリカ、ドゥクーニンク・クイックステップ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 前回に続いて、ニューヒーロー候補の予習といきたい。シーズン序盤、まずまずの出足を見せていたのが、21歳のアメリカ人、イアン・ガリソンだ。

ジュニア時代からタイムトライアルスペシャリストとして鳴らしているイアン・ガリソン。プロデビューして早くもレースで結果を残している =UCIロード世界選手権2019アンダー23個人タイムトライアル、2019年9月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 デビュー戦のツール・ド・ラ・プロヴァンス(UCI2.Pro)第4ステージでは、うまく逃げに乗って3位フィニッシュ。逃げメンバーの中でも自分が一番脚を残している実感があったというが、最終局面で躊躇してしまったという。スプリントのタイミングを見計らっているうちに、ライバルに先を行かれてしまった。まだプロ1年目、そこは経験の差だろう。

 ジュニア時代からタイムトライアルでは世界のトップに立ち、昨年はエリート部門でもアメリカ王者になった。ただ、この種目を極めていくかはもう少し検討していくつもり。しばらくはレースを通じて走り方を学んでいきたいといい、そうした中から脚質を決めていけたらという考えだ。

 プロトンきってのトップチームへの加入は刺激的な毎日。ゼネク・スティバル(チェコ)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)とは早々に意気投合し、トレーニングキャンプ中はいつも3人で話していたのだとか。チームからの期待も大きく、当初予定していたブエルタでのグランツールデビューは、長期的な育成方針の一環だという。これまでステージレースでの大きな実績はないが、その適性は果たして。この先、自分でも知らない潜在能力に気づくことが多々あることだろう。

 両親と観ていたツールがサイクリングへの入口だったという。当時のヒーローは、ブラッドリー・ウィギンスとクリストファー・フルーム(イギリス、チーム イネオス)。フルームがツール初制覇した2013年のレースは今も大好きだという。そんなフルームに熱狂していた少年は、順調にプロライダーに。きっと近いうちに、ヒーローたちが集う戦いに身を置くことになるはずだ。

すっかりチームにも溶け込んで経験豊富な選手たちから学んでいるというイアン・ガリソン。チームの育成方針に添いながらレース経験を積んでいく © Sigrid Eggers | Deceuninck - Quick-Step Cycling Team
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

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