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昼間岳の地球走行録<53>時代とともに変化する旅の情報収集の手段 今日も世界のどこかで、マニアックな話題が飛び交っている

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 初めて海外をバックパックで一人旅したのは2001年だった。当時は旅でパソコンを持っている人はいなかったし、スマホは初代iPhoneの発売が2007年だったので当然持っている人はいなかった。学生の頃から海外を旅してきたが、その頃から海外でもネットカフェがとても目立つようになってきた。家族に電話するだけでもいちいちネットカフェや電話屋に行っていたし、e-mailアドレスだけ取得して家族にメールをしたことは凄い衝撃的な出来事として覚えている。

ダム建設のあおりを受けて湖に沈むはずだったエジプトのアブシンベル神殿。1036個のブロックに切断されて元の位置より60m上に移転された。こんな情報も知って見るのと知らずに見るのでは大きな違いがある Photo: Gaku HIRUMA

情報収集の手段と変遷

 かなり少数派であるがパソコンを持って旅している人に出会うと、一目を置かれるどころか、変わった人だなぁと思われるくらいだった。なぜなら当時の情報収集は、旅人や現地の人の情報交換、ガイドブックから得るのがほとんどだからだ。

 自転車世界一周に出発した2009年は、逆にネットカフェが減っていて、皆自分のパソコンをWi-Fiで繋いでいた。まさか旅を始めて10年たたない間に自分がパソコンを持って旅をするなんて夢にも思わなかった。

 こうなると情報収集の方法は劇的に変わってくる。ブログやGoogleマップで有益な情報のみを拾ってこれるのは、すごいことだった。また同じルートを走っていたサイクリストが、小さい町の宿や食堂の情報などを載せていると、あの小さな町でも泊まれるのかと、安心感を持って自分のプランニングに生かすことができた。

ガイドブックには載っていない名所も沢山ある。パタゴニアのペンギンコロニーは旅人の情報だけが頼りだった Photo: Gaku HIRUMA

 ただ観光情報はネットだけだと自分の好みの場所しか調べないことが多い。そういう時はガイドブックが活躍するのは昔から変わらなかった。海外旅行に限らず、国内旅行でも行く場所が限定的で、目的が観光であるなら大抵の人はガイドブックを持って旅行を楽しむと思う。では行く先々で国がころころ変わって、1年以上も放浪する世界一周旅行者はガイドブックを持っていたのか。

 僕の印象ではガイドブックを持っている旅行者は半数くらいで、残りの半分は全く持っていなかった。サイクリストに限ってはやはり殆どが持っていなかった。

 その理由として、紙ベースのガイドブックは重たくて持てないのと、ネットからの情報で十分だという旅行者が多かった。ガイドブックをPDFにしてスマホで見るという方法も普及していた。

受け継がれるガイドブックと意外な使い方

 僕個人的にはガイドブックが大好きだったので、重たくても持ちたかった。旅をしていると、通り過ぎた町の近くに見ておけばよかったと後悔する場所がいくつかある。だからガイドブックで行きたい所に目星を付けるのは、自転車旅でも一緒だった。

 そうはいっても何冊もガイドブックを持ち運ぶわけにはいかないので、日本から送ってもらう荷物の中に入れたりして工夫した。僕は幸運にも、旅人から使わなくなった地域のガイドブックをタイミングよく貰えることが多かったので、これは本当に重宝した。すでに使わなくなったガイドブックは日本人宿に寄付したり、旅人にあげたりした。

食堂などの待ち時間などにも、文庫本のようにガイドブックを読み込む Photo: Gaku HIRUMA

 海外ではいつでもネットに繋げるわけではない。だからガイドブックが文庫本の様な役割を果たしてくれる。野宿のテントの中や、食堂の待ち時間でふと手に取る読み物だった。隅々まで読んでいると興味が無かった土地も行きたくなる。その土地の歴史や時代背景も書いてあるので、旅がより深く楽しめるようになることもしばしばだった。

 またパタゴニアの無人地帯で暴風に晒されたテントの中で、身体はもちろんヘトヘトで心も病んでしまうくらい疲れ果てていた時、暖かくて穏やかな地域の情報を読み込みんだ。ここが終わったら絶対行って楽しんでやると現実逃避して、なんとか精神を保っていた。

パタゴニアはノイローゼになりそうなほどの轟音と暴風。テントの中で穏やかな地域のページを読み、必死に精神を保っていた Photo: Gaku HIRUMA
日本人宿の情報ノートには、様々な情報が書かれている Photo: Gaku HIRUMA

 そして、ガイドブックと同じくらいアナログな情報源として、日本人宿や日本人が良く使う宿などに置かれた情報ノートがある。

 ネットが普及して書き込みが少なくなったとはいえ、近所のお勧めの食堂やニッチな観光地の行き方、ビザ情報と危険情報、そして注意喚起など、ネットには書けない裏話などがたくさん書き込こまれてあった。アッと驚く内容も情報ノートから拾ってくることも珍しくなく、情報ノートが見たくて日本人宿を利用することすらあった。

当時のサイクリスト特有だった情報源

 他の情報源でサイクリスト特有のものとして、自転車世界一周のメンバーで作るメーリングリストに参加していた。出会ったサイクリストにこの存在を教えてもらい、僕も新しく出会ったサイクリストに勧める形で、どんどんとメンバーを増やし、各地の情報を増していった。

 宿にある情報ノートとは比べ物にならない位マニアックな世界で、お勧めのルートや危険な場所、辺境の地、ビザのことまで、ありとあらゆる情報が共有されていて、とても重宝した。2020年現在、メーリングリストのメンバーのほとんどが帰国したので、メーリングリストにほぼ投稿はなく、その役目を終えた。

 時の流れに合わせて変化する旅と世界の情勢。今はどの様な方法で情報共有しているか知らないが、きっとどこかでマニアックな情報が飛び交っているに違いない。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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