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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<16>【動画あり】未舗装路の楽園、伊豆大島へ MTBで見つける島旅の魅力

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 2019年9月に開催を予定していたCyclist主催の「伊豆大島 御神火ライド」。台風19号の影響でやむなく中止となりましたが、キャンプ企画のゲストだった山下晃和さんは1人リベンジすべく、キャンプ仕様の自転車を携えて伊豆大島へと下り立ちました。山下さんは伊豆大島へは過去に何度も訪れているそうですが、今回は島内に張り巡らされた未舗装路を楽しむためにMTBで臨んだそうです。山下さん本人による手記と旅動画(文末)をご紹介します。

トウシキキャンプ場から、溶岩が長い年月をかけてつくり上げた見事な景観を望む Photo: Akikazu YAMASHITA

◇         ◇

念願の「一人御神火ライド」

 昨年、伊豆大島で行われるはずだった御神火ライドが台風の影響で中止となり、それから何度か伊豆大島へ行こうと計画していたが、スケジュールの都合がつかず、台風の被害を確認できないまま2019年は終わってしまった。

 しかしながら、昨年の11月から月2回ペースでキャンプツーリングをしていて、撮影でキャンプをすることも多かった年末。何度も冬キャンプを実践することで寒い時期の装備類のアップデートや、その時に起こりうるトラブルシューティングなど回数を重ねる度にブラッシュアップさせていた。

 その実力を発揮させる場所が欲しかった。まだ今ほど新型コロナウイルスの影響が無かった先日、ようやく休みが取れたので、伊豆大島へ船中含む2泊3日のキャンプツーリングに行けることになった。

今回のツーリングの装備。<左上から左下まで>テントポール、テント本体(プロモンテ VL14テント)、クライミット のスタティックVマット、モンベルのスリーピングバッグカバー、ナンガのミニマリズム寝袋。<中央上から中央下まで>グランドシート、モンベルのレインウェア上下(トレントフライヤー)、ゼログラムのクッカー、SIGGのナイフ、プラティパスのボトル。<右上から右下まで>リンプロジェクトのウィンターグローブ、チャオラスの手ぬぐい、ソーラーパフLEDランタン、THULEのガジェット類ケース、PENTAXの一眼レフカメラ、エコバッグ、プエブコの化粧ポーチ Photo: Akikazu YAMASHITA

 私がもう一つの仕事としているモデル業は非常にスケジュールが読みづらく、平日は毎日午後4時に必ず翌日のスケジュール確認で事務所に電話をするので、いつ休みがとれるか分からない。また、翌週にオーディションなどが突然入るということもザラで、そのスケジュールも書類選考で通らなかったりすると二転三転。予定が何も無くなるという事態になる。

 とはいえ、そんなことでヤキモキする年齢はとうに過ぎたため、オーディションがあっても無くても不動心を貫くようにした。オーディション会場でも、かつては緊張しながら待っていたものだが、現在はスマホで原稿を打ったり、企画書を書いたり、校正をしたり、仕事のメールを返信したり、ラジオを聞いていたり、自分の時間軸で動くようになった。何事もそうだが、自分のペースに持っていくことは非常に重要だ。

 話は逸れたが、そういったスケジューリングで動いていると、キャンプという楽しい遊び(私にとっては仕事でもある)ができないまま歳を取ってしまうので、今年はできるうだけ旅を優先することに決めた。それは自転車に限らず、だ。一番怖いのは旅への情熱が冷めてしまうことだから。

旅は自宅から始まる

 バイクパッキングを整えた自転車でフェリー乗り場のある竹芝へと向かった。積載した道具類を、一度竹芝で下ろさなくてはならないのは面倒だが、そうしないと船に無料で自転車を積むことはできない。

 もし自宅から輪行した場合は、積載→輪行→積載→走行→輪行とさらに手間がかかるため、それに比べれば積載→輪行で済む自走の方が案外ラクだ。

自転車の輪行バッグは私のを除いて3つ。裏にも1台ある。一人はキャンプ道具も入ってそうだった。キャンプ仲間だ Photo: Akikazu YAMASHITA

 自転車は輪行バッグに入れて船内に積めば無料だが、輪行状態にせずコンテナに入れて運ぶとなるとお金がかかる。電車(※)や飛行機も国内線は今のところ輪行は無料なので、このことをサイクリスト以外の人にもぜひ伝えてほしい。自転車に乗っていない人は意外と知らないのだ。

※JR東海、JR西日本、JR九州は5月から新幹線に 特大荷物置場を設置(事前予約制)。事前予約なしに利用する場合は持込手数料として税込1000円の追加料金が必要となる。

 4月30日までは東海汽船130周年記念の「島島切符」があり、往復4000円という破格(通常であれば往復9080円)。さらに伊豆大島の波浮港にあるトウシキキャンプ場はテント泊が無料(要予約)。つまり、食費を合わせたプランニングをしても6000円でお釣りが来てしまう計算だ。ちなみに高速ジェット船も67%オフになっている。

 話は戻って、竹芝まではフルパッキングの自走し、汗だくになりながら午後8時くらいに到着。夕飯にコンビニおにぎりを頬張りながら、船の周りでピーピーと走るコンテナ輸送カーの鳴き声を聴き、東京の夜景にウットリする。いや、待て。向かうところも東京なのだ。

 輪行バッグと、キャンプ道具の入ったバッグ類である“家財道具”一式を担ぎ上げて乗船。筋トレが好きな人でなければ、この数メートルの移動が一番億劫に感じるだろう。

 午後10時になると、「カンカンカンカン」という鐘の音の放送と共に、船のエンジンが唸りをあげて動き出すのが分かる。島島切符は2等のリクライニングシートと決まっているため、椅子を倒して寝るスタイル。平日だったせいか、もう一人のお客様のみ。つまり2人貸し切りだ。他の1等船室や2等和室はたくさんいたが、皆リッチな船室を好むのだろうか。

 お台場のレインボーブリッジを通るところまでは夜景を楽しみたいと思っていたので、船のデッキの階に上がってスマホを構える。「さようなら東京!」

船から眺めるレインボーブリッジ。なんとも幻想的 Photo: Akikazu YAMASHITA

 いや、向かうところも東京だった─。

 早朝5時。120°に傾いたベッドのようなリクライニングシートで、いつの間にか深い眠りに落ちていた。スマホのタイマーに叩き起こされて、大きな身体を起こす。階段の踊り場に置いた自転車を抱えて、順番に船を降りる。どうやら岡田港に着いたようだ。

 伊豆大島には岡田港と元町港と2つの場所がある。その日の天候によってどちらかに発着場が変わるのだが、元町の方が少し栄えていてスーパーもあるので買い出しもすぐできる。 さらにキャンプ場にも近く、上り坂も少ないのだが、何十回もと渡っているものの元町港に着いたことはほとんどない。

 早朝の薄暗い中を重い荷物を担いで進み、スペースを見つけ、輪行バッグから荷ほどきして自転車を整えているうちに清々しい朝になっていた。小鳥の歌声が耳に心地よい。

海も山もトレイルもある島旅

 伊豆大島は一周道路が46.6kmあるが、そこはこれまでに何度も走っているので、舗装路を走るよりもグラベルやトレイル等の未舗装路を選んで走ることにした。なぜなら今回はMTBで来たからだ。

 坂の途中、グラベルの上りがあったので入ってみると、「マイアミ球場」という森の中に現れる野球のグラウンドがあった。まさに映画『フィールド・オブ・ドリームス』のような自然に囲まれた球場には驚いた。本当はベンチに座ってコーヒーでも飲みたかったが、まだ買い出しをしていなかった。

ホームランを打ったら「森の中へサヨウナラ」になる山間にあるグラウンド。ここでキャンプイベントができたら最高だろうに!! Photo: Akikazu YAMASHITA

 三原山へと続く道は激坂だが、ある程度上がると眼下に大海原が広がる。海あり、山ありという表現は、大島のためにあるような言葉だ。

絶景の海を楽しみながら走ることができるグラベルロード(砂利道) Photo: Akikazu YAMASHITA

 そして、メインの道から外れるとトレイルやグラベルは無数にある。詳しい場所は言えないが、集落の中にあるので、スマホのマップを諦めて自分の足で探検すると良いだろう。

 また現地の人も丁寧に道を教えてくれる。そうやって道を見つける方が断然面白い。ひと山越えて島の南東部まで下り、波浮港に到着した。本当は三原山まで続く「裏砂漠」を走りたいのだが、そこは自転車走行が禁止なので原則行くことはできない(クルマが入れる場所までは行けるが)。

伊豆大島はキャンプ時間も格別

 伊豆大島は走る楽しみもあるが、キャンプする時間も格別だ。今回はそれが目的でもあった。途中、ようやく見つけたスーパーで買い出しをして、キャンプ地である「トウシキキャンプ場」(※)までダウンヒル。本来なら昨年の御神火ライドでキャンプイベントを開催し、宿泊する予定だった場所だ。

※ コロナウイルス感染症緊急事態宣言に基づき、5月6日(水・祝)まで休業

トウシキキャンプ場の前にて。事前に電話予約が必要。テント設営料は無料 Photo: Akikazu YAMASHITA

 ここもやはり台風の爪痕が残っていて、工事が行われている個所もあったが、芝生や防風林は無事で、難なくキャンプすることができた。ここからは海側に溶岩流で作られた断崖絶壁が見えて、美しい夕陽を拝むことができる。この日は雲が多かったものの、水平線に落ちるオレンジ色の光を確認することができ、キャンプ道具を満載にしてデコボコ道を走り切った自分の身体を労った。

 ご飯は簡単に調理できるモンベルのドライフード「リゾッタ」とお菓子を食べて、早めにテントに入った。というのも夜間は風がどんどん強くなって、春とはいえ、かなり冷えてきたから。テントのフライシートのジッパーを閉じる前にふと空を見上げると、東京とは思えないほどの一面の星空が広がっていた。その光景はまるで宇宙だった。

パッキングの技量が試されるグラベル

 朝は早めに撤収作業をし、再びバイクパッキングを研究する。こんな時間も非常に楽しい。

テントを立てて、自分の愛車を眺める時間も至福 Photo: Akikazu YAMASHITA

 うまく積載し終わって海沿いにあるダブルトラックの砂利道を降りていくと、そのまま海の眺めを横目に進むことができた。おそらくMTBではなくグラベルロードでも走ることができるくらい簡単な道で、絶景の場所だ。

 車体の挙動をコントロールさせないと真っ直ぐ進まない道を走では、荷物の積載がうまくいっているかどうかが身体を伝わって分かるので、研究材料にはもってこいだ。バイクパッキングという限られた積載方法で、軽量なキャンプギア類を選択するとなると、計算して順番に詰めていかないと走りにも影響が出てくるのだ。

今回のバイクパッキングスタイル。無駄な物は一切入っていない Photo: Akikazu YAMASHITA

 ご存知の方も多いと思うが、伊豆大島にはコンビニエンスストアが1つもないので、スーパーを頼ることになる。また、電子マネーは楽天Edyは使えるところもあったが、「なんとかPay」が使えるところは圧倒的に少ないし、クレジットカードでさえも使える場所が限られる。

 また「SUICA」などの交通系の電子マネーが使えるのは岡田港の売店だけだった。銀行も少ないのでお金の管理、つまり現金をある程度持っておかないと大変なことになる。これだとインバウンドや地方から来る人には旅行しづらいので、早急に対応してもらいたいところだ。

次回はグラベルロードで

トウシキキャンプ場から戻りがてら極上のグラベルロードを発見。ここの支線からはゴツゴツの溶岩と海が観られる。果たしてここは本当に日本? Photo: Akikazu YAMASHITA

 お昼ご飯はスーパーで買ったおにぎりで済ませ、港に戻った。船が来るまで時間があったので、お土産屋「一峰」でホットコーヒーを楽しむ。丸い郵便ポストが隣にあって時折ネコが顔を出す。とてものどかだ。

 輪行バッグに再び自転車をしまい、フェリーへと乗り込んだ。甲板に出て外を眺めると、船が出るタイミングで、地元の子供たちが大声で「さようなら!」と叫ぶ。ゴゴゴーという大きな音を立てながら、高層ビルが立ち並ぶ東京の方へ船は進み始めた。

青空に映える白亜の東海汽船「さるびあ丸」。そろそろ新しい船に変わるそうなで、ファンは急げ! Photo: Akikazu YAMASHITA

 伊豆大島の自然は、昨年の台風19号の被害もほぼ無く回復傾向にあること、また同じ東京なのに、ものすごくゆったりとした時間を堪能できたこと、キャンプ道具の選定にも成功し、有意義に寝ることができたこと。そんなことを反芻しながら家路に着いた。

 世の中が落ち着き、また伊豆大島へ行けるときがきたら、今度はグラベルロードで行こうと心に決めた。

 

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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