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昼間岳の地球走行録<52>アメリカ・モニュメントバレーの先住民、レアリさんが教えてくれたナバホ族の暮らし

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 「モニュメントバレーに行くなら、ナバホインディアンのレアリさん紹介してあげようか? 興味があれば伝統家屋のホーガンにも泊まれるよ」一緒に走っていた友人のサイクリスト にそう言われた。彼は去年も別ルートでアメリカを走っており、その時にレアリさんにお世話になったとのことで、僕が興味があれば話してみるよと言ってくれた。ナバホ族とはモニュメントバレーを管理し、その一帯で生活しているインディアンの部族だ。

モニュメントバレーでは圧倒的な風景の中で走れる Photo:Gaku HIRUMA

連絡手段に苦戦

 モニュメントバレーはナバホインディアンの聖地とされている。そこで先住民の方にお世話になれるまたとないチャンスだと思ったが、問題は僕の語学力だった。旅の序盤ということもあって、トラベル英語以外ほとんど喋れなかったので、僕が行っても相手に悪いのではないかと思った。でもここで行かなかったら自転車で旅に出た意味がないと思い、連絡をお願いしてお世話になることに決めた。

 メールアドレスを聞き、レアリさんに直接なんとかお世話になる旨のメールを送ると、「手前の町まで来たら電話で連絡してね」と、僕にとっては難易度の高い連絡が来た。

 直接話すならまだしも電話は本当に無理だろと思いながら、言われたとおりに手前の町で公衆電話から電話をかけた。心臓が口から飛び出るんじゃないかと思うくらい、緊張してどもりまくりだったけど、事前連絡のおかげで怪しい電話にも快く対応し、「待っているよ」と言ってくれた。緊張から一気に解放され、受話器を置いた瞬間の空の青さをよく覚えている。

ホーガンで堪能した贅沢な夜

 レアリさんはモニュメントバレーのすぐ近くのハイスクールの用務員さんをしていた。学校でレアリさんの居場所を聞くと、「敷地内にある宿舎にいるよ」と教えてくれたので行ってみた。

 宿舎に居たレアリさんはニコニコの笑顔で出てきて「よく来たね。大変だっただろ」と言い、とても快く迎えてくれた。褐色の肌で恰幅が良く、長い髪を三つ編みに束ねていた。普通の洋服を着ていたが、彼がインディアンであることはすぐに分かった。そして何よりも優しさがにじみ出てくるような人柄だった。

ナバホインディアンのレアリさん。ナバホの伝統や生活を誇らしく教えてくれた Photo: Gaku HIRUMA

 自己紹介を済ますと、彼は学校にあるナバホ族の伝統家屋ホーガンに案内してくれた。ホーガンは土でできた巨大なかまくらの様な外観をしていて、しっかりと扉がついてあった。中に入ると木がとてもバランスよく組まれ、その外観とは裏腹に温かみのある作りになっていた。

ナバホインディアンの伝統家屋ホーガン。土壁で固めれれている Photo:Gaku HIRUMA
ホーガンの内部。木でしっかりと組まれており、石炭ひとつで朝までずっと温かかった Photo:Gaku HIRUMA

 屋内中央にはストーブがあり、石炭を 一個くべれば一晩中温かいという。天井には1m四方の天窓が設けられ、夏場に開け放つととても涼しいのだという。夏場は暑く、冬は寒いこの地方ならではの作りだった。昔からの知恵を結集した様な伝統家屋のホーガンに興味が尽きず、どんなホテルよりもこの素晴らしいホーガンに泊まれることを幸せに思った。

 隣には形の違うホーガンが2つあった。夏に使うのと、儀式の時にサウナとして使うやつとのだった。その他にもナバホの伝統を僕らにもわかりやすく説明してくれた。ナバホの伝統を語るレアリさんはどこか誇らしかった。

 夜の外気は氷点下まで下がったが、レアリさんの言った通りホーガンの中はビックリするほど温かかった。

 室内の明かりを消すと天窓から月明かりが入り、ストーブの炎が夜のホーガン内を妖しく照らし揺らめいていた。バチバチと優しく弾ける炎の音が聞こえる。遥か昔のインディアンと同じ感覚をを味わえてると思うと、とても贅沢な夜だった。

モニュメントバレーの荒野で乗馬体験

 その後も石炭の採石場に石炭を一緒に取りに行ったり、ナバホのマーケットに連れて行ってもらったりしてとても良くしてもらったが、極めつけは一緒に馬に乗れたことだった。

 レアリさん所有の馬で、道のない荒野をインディアンに連れられて馬に乗れるなんて思ってもみなかった経験だった。数日間お世話になったのち、出発の前日お別れも兼ねてレアリさんの自宅に遊びに行かせてもらった。

モニュメントバレーの荒野をインディアンに連れられて、馬に乗れるなんてこんな贅沢な事は無い Photo:Gaku HIRUMA

 レアリさんが「モニュメントバレーでは色々な映画の撮影があってね」と、その時インディアン役として出ていた写真などを見せてくれた。さらに一冊の本を取り出して見せてくれた。それはなんと日本語の本だった。

 その本は日本人女性がモニュメントバレーの構図の中で微笑んで写っており、文章が綴られていた。「どうしたの」と聞くと、「撮影に協力したんだ」とのことだった。

 でも何に協力したのか分からず聞くと、「これだよ」と見せてくれたのは、シリアスな表情をしてインディアンの格好をして焚き火の前で祈りをささげるレアリさんがいた。まさに僕ら日本人のイメージするインディアンはこんな感じと言う具合だった。

 一方、僕のカメラに収まるのは、普通の格好をしたシリアスとは程遠いニコニコと微笑んだレアリさんだった。僕は普通の格好をした本物のインディアンと一緒に過ごし、笑い合えたのを本当に幸せに思った。

帰国後に起きた偶然のできごと

 後日談だが、僕が世界一周の旅で韓国から日本に帰国したとき、レアリさんを紹介してくれた福岡のサイクリストの家に遊びに行った時だ。ゴールの喜びと当時の思い出を語っていた時に、テレビにレアリさんが映っていて本当に驚いた。ゴールのタイミングで、レアリさんを紹介してくれた友人の家で、レアリさんを見れるなんて、無事に帰国できたことを祝福してくれてるようで本当に嬉しかった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録

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