Cyclist的“自転車通勤”考<1>自転車通勤の始め方 目的・用途別、ロード、クロス、e-BIKEをどう選ぶ?

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 新生活が始まる春、職場が近くなるなど環境の変化で自転車通勤を始める人が多くなりますが、最近は満員電車から逃れる策として自転車通勤を考えている人も多いと思います。そこで今回は「Cyclist的“自転車通勤”考」と題し、普段から様々な自転車に乗って都内を走っているCyclist編集部員の視点から、自転車通勤を始めるための“ハウツー”をお話ししたいと思います。これから始める方はもちろん、すでに「ジテツーサイクリスト」(自転車通勤者)の方もご意見、アドバイスがあればコメント欄にお寄せいただければと思います。ということで早速第1回は「自転車の選び方」について。

通勤用自転車を選ぶコツをCyclist的視点で解説します Photo: Kenta SAWANO

車種選びに必要な視点とは

 仕事柄よく「自転車通勤を考えてるんだけど、どの車種を買えばいいの?」という質問を受けます。クロスバイクのおすすめ、ロードの初心者向けのおすすめといった括りで質問されると答えやすいのですが、自転車に乗らない方から寄せられる質問は「ロードとクロスがどっちがいいの?電動ってどう?」といった具合です。

 でも、そうなるのも無理はありません。一般的なところでは“ママチャリ”のような「軽快車」をはじめ、ちょっとスポーティーなクロスバイク、さらにスポーティーさを増したロードバイク、マウンテンバイク(MTB)があり、最近はこれにe-BIKEと、選択肢が多岐にわたっています。

 では、それらのうちの何が通勤に最適なのでしょうか。端的な答えは「あなた次第」です。自転車は自分の生活スタイルに合ったチョイスでないと、いつの間にか乗らなくなってしまうのものです。 生活スタイルを形成する要素とは、どう乗りたいか、どういう道を走るのか、乗る技量や体力、予算、生活環境等々。それらの何を優先するのか、したいのか、そういう視点から通勤自転車の選び方を紐解いていきましょう。

 とはいえ何はさておき「まず予算!」という方もいるでしょう。中には「2万円くらい」でお探しの方もいると思います。そうなると自ずと 軽快車一択ですが、価格が優先条件ならばそれでも問題ないと思います。ただ、この記事を読まれている方は選択肢を前にして車種を検討している方々だと思いますので、それを前提として各自転車がもつメリットを紹介していきたいと思います。

趣味の世界が広がるロードバイク

 では、まずご自身が「どう乗りたいか」をイメージすることから始めてみましょう。

 自転車通勤を機に趣味としてスポーツバイクを始めてみたいという意欲がある方は、ストレートにロードバイクをおすすめします。まずはクロスバイクからというのもアリですが、乗り慣れた末にロードバイクを買い直す人を数多く見ているので、自分の運動神経と天秤にかけた上で、スポーツバイクを始めたい気持ちがあるなら断然ロードバイクから始めることをおすすめします。

 クロスバイクでも快適サイクリングは楽しめますが、この先にロングライドやヒルクライム、輪行(自転車を袋に収納して公共交通機関に積載する)等を見据えているのなら、クロスバイクだと正直しんどいです。また次第に仲間も増えていくと、ロードバイクが欲しくなるのは必然です。

 ロードバイクもピンキリで、最安値は6万円台から上はご存知の通りクルマのような価格帯のものもあります。もちろん素材や性能の違いによる価格差ですが、通勤仕様からスポーツとしてのライドデビューをサポートしてくれるレベルなら、素材はアルミの完成車(自転車として完成された状態)で概ね8~10万円台を一つの目安とするのが良いでしょう。

トレック「Domane AL 2」(カラー:Matte Trek Black)85,000円(税抜) ©TREK

 そのクラスであれば重量10kg程度で、想定される‟デビュー戦”にも耐えてくれます。変速機器やホイール等のパーツは慣れてきたら後々交換できるので、最初からグレードを気にする必要はありません。

ジャイアント「CONTEND 2」(カラー:シルバー)86,000円(税抜) ©GIANT
フェルト「FR60 日本限定モデル」(レッド)89,800円(税抜) ©FELT

 もちろん予算が許す場合、また憧れのモデルがある場合はそれを選ぶのも良いと思いますが、街乗りのロードバイクには、悲しいかな「盗難」というリスクが付きまとうことも忘れないでください。有名ブランドの高級モデルはそれだけでターゲットになってしまうもの。防犯アイテムの詳細は後々ご紹介しますが、街乗りには「盗まれにくいバイク」「盗まれたダメージが比較的低いバイク」(書くのもつらい表現ですが…)という自己防衛策も重要です。また、自宅での管理も可能なら屋内管理をおすすめします。

 「機材のメンテナンスが難しそう」というイメージもあるかもしれませんが、それも愛車をもつことの醍醐味。すなわちそれは自分用にカッコよくできるということ。ロードバイクがもつ自由度でもあります。自分でできること、できないことがありますので、自転車ショップのスタッフに教えてもらいながら習得していきましょう。

自転車購入後も頼りになる自転車ショップ Photo:gettyimages/ Predrag Vuckovic

 最近はネットでも安値の自転車を購入できますが、しっかりとメンテナンスを行うためにも、とくにロードはスタッフと直にコミュニケーションがとれる実店舗で購入することをおすすめします。ロードバイクに関する知識はもちろん、ショップライドを開催している店もあるので、親しくなると楽しさが倍増します。

 以上を踏まえると、屋内管理だったり盗難防止策だったりメンテナンスだったり、車体管理に気を使うけれど、新しい世界が広がるという点がロードバイクの長短。ご自身が思い描く自転車ライフと天秤にかけて考えてみてください。

スポーティーさと利便性を備えたクロスバイク

 「最初からロードは怖い」「サイクリングのようにスマートに通勤したい」「スポーツバイクに興味があるわけではないけれどママチャリはいや」─そんな声に答えてくれるのがクロスバイクでしょう。一般的に「 軽快車≦クロスバイク<ロードバイク」と位置づけられていますが、乗ればわかる、 軽快車とは一線を画す乗り物です。

ライトウェイ「SHEPHERD」(カラー:マットネイビー)57,800円(税抜) ©RITEWAY

 ロードバイクとの違いはハンドルの形状が特徴的ですが、最大の違いは「ジオメトリ」というポジションを作り出すフレームの構成比。ロードよりアップライトで楽なポジションながら、 軽快車と違ってしっかりペダルを踏み込むことができます。初めて乗ったとき、予想以上の軽い乗り心地を体験して衝撃を受ける人も多いです。

 さらに最近は5万円台から買える優秀なクロスバイクも登場していたり、予算的にもとても買いやすくなっているので、そういう意味ではスポーツバイクの入門編といえます。

ジャイアント「ESCAPE R3」(マットエメラルド) 52,000円(税抜) ©GIANT

 ロード希望の方であっても、車道でのバイクコントロールに自信がもてない場合は、危ない目にあって嫌な思いをする前にクロスバイクで走行に慣れるのも一つのステップです。

カゴやスタンド等、乗り方に応じたカスタマイズが可能 ©GIANT

 あとはなぜかロードバイクではつけ難いスタンドや、買い物に便利な“カゴ”もクロスバイクならとりつけやすかったり、何かと乗り手のニーズに合わせてカスタマイズできるのも特徴。帰宅途中で買い物をする等、自分の通勤スタイルに合わせて幅広い乗り方ができるのが強みです。

路面不問の無敵自転車・MTB

 「どんな道でも不安なく走りたい」という方は、自宅での収納場所を確保できるならMTBという選択肢もありです。

 舗装路といってもちょっとした段差や側溝は随所にあり、わずかなコントロールミスでそれらは容赦なく細いタイヤを捕らえてきます。とくに交通量が多く、かつ工事でもしていようものなら緊張で視野が狭くなり、最悪の場合事故につながりかねません。

 そんな場所でも、MTBならまるで戦車のように安定した走りで切り抜けることができます。ロードと比べると疾走感は期待できませんが、視野が開けるアップライトな姿勢と、地面からの突き上げに動じない太いタイヤは文句なしの安心感です。

GT「アグレッサー スポーツ」(カラー:インク)51,800円(税抜)  ©GT

 筆者の自宅には収納できる場所がないため、MTBを所持することはできませんが、東京都心でクルマと戦いながら走るには実はMTBが最も適しているのではないかと思います。

 そこで個人的は、MTBほど大物でない「グラベルロード」という、未舗装路も走行可能なタイヤをつけられるロード形状のバイクに注目しています。道を選ばず走れるツーリング向けバイクとして最近新しく登場したカテゴリーですが、これなら屋内にも置けるし、万が一災害で悪路になっても機動力が高く移動できて有利かもしれない…そんなことも最近は考えます。

キャニオンのグラベルバイク「グレイル AL 6.0」(カラー:ソリッドシルバー) 159,000円(税抜)  ©CANYON
GTのグラベルバイク「グレード アロイ エリート」(カラー:ブラック)108,000円(税抜) ©GT

痒い所に手が届く、折り畳み小径車

 そして、個人的に自分の通勤ライフを一番豊かにしてくれるのではないか、と思うのが折り畳み小径車です。「小さい自転車」という意味で「ミニベロ」ともいわれていますが、通勤用の場合は単に小ささだけでなく“折り畳み”というところがポイントになります。

英国発の折り畳み小径車「ブロンプトン」。カスタマイズを楽しむ人も Photo: Kyoko GOTO

 想像してみてください。当日、急な誘いで夜に予定が入ることってありますよね。そんなときでも小径なら「自分、自転車なんで無理っす」と断らなくても良いのです。飲酒をしても折りたたんで、電車輪行して帰宅。翌朝、何もなかったようにまた自転車通勤できるのです。ロードも輪行できますが、非現実的(めんどくさい)です。

 また、職場が許せばですが、折り畳んだ状態で自分のデスク周りに置いておくこともできるので勤務地周辺に駐輪場がなくてもOK。盗難の心配も無用です。これは自宅での収納においても然り。室内にスペースが確保できないでも、小さく畳めば玄関先で場所をとらずに置いておくことができます。折り畳み小径にもさまざまな種類がありますので、実際に店頭で折り畳みやすさや重量、乗り心地を試してみると良いでしょう。

折りたためばスペースをとらずに屋内管理が可能 Photo: Kyoko GOTO

 ちなみに筆者の周囲での話ですが、現在ロードに乗っている人に折り畳み小径車出身者が多く見受けられます。折り畳み小径車は疲れたらいつでもエスケープできるという安心感があるので、「帰り道の体力」を気にせず走れるというメリットがあるのではないかと思います。その気軽さから限界を突破しやすく、疲労感なく自転車の世界を広げているうちに本格的に楽しさにハマる、というプロセスがあるのではないかと勝手な推測をしています。

疲れ知らずのe-BIKE

 最後に最近話題のe-BIKEです。「e-BIKE」とは電動アシストの 軽快車とは異なる、いわゆるスポーツバイクの電動アシスト付モデルをいいます。通勤仕様として乗るには全般的に価格が高めな印象ですが、その分e-BIKEならではのメリットが確かにあります

スタイリッシュなモデルも増えているe-BIKE Photo: Kyoko GOTO

 一番のメリットは何はさておき疲れ知らず! とくに長距離通勤だったり、経路で坂が多い場合に真価を発揮します。非電動バイクと比べて息が上がることは皆無なので、「満員電車に乗りたくないけど疲労は最大限抑えたい」というニーズにはもってこいです。

 また通常のサイクリングよりもさまざまな“リスク”がある通勤。開放的な道路を走るのではなく、幅寄せや飛び出し、突然の左折など予期せぬ動きをするクルマと一緒に走る道路では、身を守るためにやむを得ず歩道を走行する場合もあります。そういったシチュエーションで減速走行する場合でもアシストがあると「ストップ&ゴー」の動作がストレスなく行え、むしろ速度をコントロールしやすいのです。

 最近は電動アシスト自転車(軽快車)でもe-BIKEに迫るスタイリッシュさとバッテリーの‟持ち”を実現したモデルが登場しています。e-BIKEと比べると搭載されているパーツは軽快車のそれですが、泥除けやスタンド、自転車本体に搭載されたロック等スポーツバイクにはないお役立ち機能が満載で、その“全乗せ”ぶりには「そう、通勤バイクに欲しい機能ってこれだよね」と改めて気付かされます。

ブリヂストンの電動クロスバイク「TB1e」(カラー:T.X マットグレー) Photo: Shusaku MATSUO

 また軽快車の場合、スポーツバイクと比べてホイールベース(前輪軸と後輪軸との距離)が長く、重量も重ためなので、必然的に屋外管理になると思われます。自宅での管理の仕方も含めて検討してみてください。

 いかがでしたでしょうか。自分の乗り方がどれに当てはまるのか、ぜひバイク選びの参考にしてみてください。次回は、自転車の必須アイテムをはじめ、通勤時にあると便利なお役立ちグッズを紹介します。

<つづく>

後藤恭子後藤恭子(ごとう・きょうこ)

Cyclist編集部員。まとまった時間ができるとすぐに自転車旅へと出かける“放浪”サイクリスト。国内だけでなくスイス横断旅を始め、欧州各国を自転車で旅した他、2018年にはノルウェーで開催されたアマチュア最高峰のステージレース「Haute Route」に日本人女性として初参加・完走を果たした。最近はトライアスロンにも挑戦中。

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e-BIKE グラベルロード クロスバイク マウンテンバイク ロードバイク 小径車 自転車通勤

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