title banner

旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<51>世界で最も貧しい国、マラウイで見つけた奇跡の焼き立てパン

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
  • 一覧

 タンザニアからマラウイに入って劇的に変わったのは、挨拶の回数だ。ケニアやタンザニアで聞いたスワヒリ語の「ジャンボ!」という元気の良い挨拶は好きだった。またマラウイは、現地の言葉と一緒に英語も公用語になっているので、僕ら外国人を見ると必ず「ハロー」と声をかけてきてくれた。

マラウイで見た感動的な朝焼け。アフリカの夕焼けや朝焼けは特に印象的だった Photo: Gaku HIRUMA

気軽に挨拶してくれるフレンドリーさ

 アフリカは車が数分に一度通るくらいの道でも、歩いている人は結構いるのだ。そのため、マラウイでは1日に100回以上は自転車に乗りながら挨拶をしたと思う。よく聞くと「マネー」とか「ペン」とかも言ってるけど、それはマラウイに限ったことではないので良しとしよう。それくらいマラウイの人達は人懐っこかった。

英語が公用語のひとつになっており、観光地でもない食堂に英語表記のメニューがあった。ずらっと書かれているが、「ある?」と聞くと「ない」と言われることがほとんど Photo: Gaku HIRUMA

 現在、世界最貧国のひとつに数えられるマラウイ。僕がこの地を訪れる2年前(2011年)に走ったサイクリストの情報では、経済が混乱して闇レートが公然と存在し、食糧不足やガソリン不足が深刻だったと聞いていた。

 だからタンザニアではできる限りガソリンと食料を買い込んでマラウイに入った。ところが僕が旅行していた2013年は既に公定レートになっていて、食料もガソリンも問題なく、一安心だった。

 世界最貧国のひとつと聞くと治安が悪そうなイメージを持つが、全くそんなことはない。マラウイは独立後、アフリカでは珍しく内乱や対外戦争などを経験していないらしい。

 そのことから分かる通りとても穏やかな国だ。写真撮影は一度も断られたことがなく、皆が気さくに挨拶をしてくれるフレンドリーな人達だった。

マラウイは本当にフレンドリーで、商店で休憩していると毎回興味深そうに集まってくる Photo: Gaku HIRUMA

 ある村の小さな電気屋では、小さなブラウン管のテレビから流れるプロレス中継を皆が食い入るように見ていた。マラウイにもいつかそんな時代もあったねと語られる日が来るのだろうが、そういう時代に旅できることをしみじみと幸せに思った。

焼き立てパンが食べられる幸せ

 海外を走るサイクリストは、街が嫌いでひたすらアウトドア生活を求めているというイメージを持つ人がいるが、むしろその逆が多い。いつも強制的に大自然の中に身を置いているため、街に癒しを求めることも少なくない。

 例えば快適な宿にネット環境。豊富な食事情であったり、綺麗で整然とされた外資系大型スーパーやショッピングモールなどは、とても興奮し癒される場でもあった。

 マラウイは経済が混乱していると聞いていたので、街の癒しは諦めていたのだが、首都のリロングウェイではそういった先進国の癒しとローカルさが交じり合っていて、滞在する価値は充分にあった。

マラウイの首都、リロングウェイの市場。活気があり写真にもにこやかに応じてくれる Photo: Gaku HIRUMA

 とはいえ貧しい国なのは確かなので、過度な期待はせずに走っていたのだが、その期待はいい意味で裏切られた。市場や商店は活気に満ちていたし、スーパーの品ぞろえも充実していた。そしてなにより衝撃を受けたのが、スーパーの店内で焼いてくれている焼き立ての食パンだった。

アフリカに焼き立てパンコーナーがあるのは、奇跡の様だった。この時ほど感動したパンには未だに出会えない Photo: Gaku HIRUMA

 いい香りに誘われて行ってみると、オーブンからどんどん食パンを取り出していた。それをお客さんがどんどん買っていた。日本ではスーパーに焼き立てパンが売っているのは普通のことだけど、海外で、それもアフリカで、しかも世界で最も貧しい国のひとつ、マラウイで焼き立てパンが売っているのは奇跡だった。

 ちなみに僕が海外でいつも食べている食パンは、モソモソしている。地方の商店で買ったりすると、カピカピした様なパンをずっと当たり前の様に食べてきたから尚更だった。

 そんなパンしか食べていなかったので、温かく香り高いパンに顔をうずめて食べる瞬間は、昇天してしまうのではないかというくらい幸せだった。パンがこんなにもふかふかでもっちりとした食べ物だったとしばらく忘れていた。

100円以下のアフリカ飯にがっつく

 物価もグッと安い。瓶の冷えたコーラが30円くらいだし、食堂でも100円以下で食べられた。地方の食堂はトウモロコシやキャッサバの粉で練ったシマやウガリと呼ばれる蒸しパンか、ご飯と煮込みが定番だ。

マラウイの米は美味しく、物価も安かったので、走行中の食事はもっぱら食堂を探しながら走った。シンプルだがアフリカのご飯は美味しい Photo: Gaku HIRUMA

 栄養バランスはかなり偏りそうなメニューなのだが、マラウイの米はアフリカで有数の美味しさだった。腹が減ってるサイクリストにとって、大盛りのご飯にトロトロに煮込まれた肉の煮込みをぶっかけて、がっつくアフリカ飯は最高に幸せで美味しかった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

この記事のコメント

この記事のタグ

旅サイクリスト昼間岳の地球走行録

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載

連載