アイテムインプレッション20203Dプリント技術を駆使したサドル フィジーク「アダプティブ」を実走レビュー

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 フィジークの最新サドル「ヴァーサスエヴォアンタレス00アダプティブ」の実走インプレッションをお届けする。立体的な幾何学模様で構成された表面のクッション性の実力はいかに。走り込みを行い、新技術のスペックを確かめた。

フィジーク「ヴァーサスエヴォアンタレス00アダプティブ」©fizik

プロ選手も実戦へ投入

 サドルは遥か昔から革製が用いられてきた。長時間、少ない面積の上で運動し続けるロードレースにおいて、数少ない身体との接点であるサドルは、極力フィットさせたいものだ。 使い込むたびに馴染みが出る革製が好まれたのはこうした理由がある。近年ではより耐久性に勝る人工皮革を用いたり、サドル中央に穴を設け、尿道の圧迫を防ぐなど、工夫が凝らされたモデルが続々と登場している。そして、ついに3Dプリンター技術を用いたモデルが発表されたのだ。

3Dプリンターの技術を用いて、複雑で立体的な構造に ©fizik
デジタル紫外線投影で液体樹脂を成型する ©fizik

 アダプティブの特徴はその強烈なインパクトを放つパッドにある。ベースやレールは従来の「アンタレスエヴォ00」と同様だが、表面にはCarbon, Inc. が開発した「Digital Light Synthesis」が用いられ、立体的なハニカム構造がパッドを構成している。これは最新の3Dプリンター技術で、デジタル紫外線投影とプログラム可能な液体樹脂成型を駆使。人の手では作り得なかった複雑な形状で作成されている。

ツール・ド・フランスを制したエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)も導入済みだ ©fizik

 すでにUCI(国際自転車競技連合)ワールドチームの選手たちが実戦でも投入している。モビスター チームやユンボ・ヴィスマ、また、ツール・ド・フランスで個人総合優勝を飾った エガン・ベルナル(チーム イネオス)も愛車の「ドグマF12」へ装着。プロ選手からの評価も上々だという。

 アダプティブの実物を手に取ると、その軽さに驚かされる。重量はレギュラーサイズで147gで、ベースが同じアンタレスエヴォ00の153gを更に下回る数値となった。

新感覚のクッション性能

 格子状のエラストマーは内部を構成する密度と形状によって硬度が変えられている。圧力分布によって最適化された4つのゾーンで硬さが異なり、最も体重がかかる中心部はかっちりとした印象を受け、後部の端は指で簡単に押せるほど柔らかい。同じ素材でありながら、内部構造だけでここまでクッション性に違いが出るものかと驚きつつ、正直こんな柔らかさで体重を支えられるのだろうかとやや心配になった。

指で押すと簡単に凹むほどの柔らかい箇所も Photo: MATSUO

 早速バイクの取り付け、パッドに体重を預けると不安が払拭された。指で押すと明らかに異なった硬さであったのにも関わらず、ビブショーツを通して伝わる表面のクッション性は、サドル全体で硬さが均一であった。数々のアスリートをテストして、圧力分布を測った結果だろう。想像以上に違和感がない。

 表面に小さなサスペンションが付いているような感覚もあった。走行中に微妙にエラストマーが動いているのが分かる。路面からの微細な振動も除去してくれるようだ。しかし、ただ柔らかいわけではなく、体重を支える芯はある。従来のサドルには無い新感覚の使い心地だ。ロングライドでは間違いなく疲労軽減に一役買ってくれるだろう。

幅は139mm(レギュラ)と、146mm(ラージ)を用意 Photo: Shusaku MATSUO
ベースのカーボンは「アンタレスエヴォ00」と同様 ©fizik

 乗車中にポジションを変化させてもエラストマーが接触する場所に応じて追従してくれる。例えば、細身の先端に圧力がかかるよう、ドロップハンドルを持ったポジションを取り、骨盤を寝かせても、高さのあるエラストマーが適度に潰れてフィットする。圧力が一個所に集中することなく、不快な感覚はなかった。

 気になったのはエラストマーの色だ。サドルでは見慣れない薄いグリーンが似合うバイクがどれほどあるのだろうか。と思っていたが、意外にも黒い車体にも収まりがいい。逆に一目でアダプティブだと分かるアイコニックなカラーで、個性を主張できる。しばらくすると見慣れるし、なかなかカッコよく感じるものである。

僅かに動くエラストマーの表面が細かい振動を除去する Photo: Matsuo

 先にも述べたように、サドルと乗り手との相性はこの上なく重要である。そこで現在、ヴァーサスエヴォアンタレス00アダプティブのテストライドプログラムが全国の対象店舗で開催されている。指定のフォームから申し込みを行い、貸し出しから返却まで7日間試せるプログラムだ。この機会に乗り慣れた愛車で新しいフィーリングを体験してみてはいかがだろうか。

■フィジーク「ヴァーサスアンタレスエヴォ00アダプティブ」

税抜価格:48,000円
重量:147g(レギュラー)、154g(ラージ)
幅:139mm(レギュラー)、146mm(ラージ)
レール:10×7mm メビウスカーボンレール

松尾修作松尾修作

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。

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