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栗村修の“輪”生相談<175>20代男性「1カ月後のレースでまた落車を起こしてしまわないか不安です」

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 いつも楽しく拝見しております。自転車歴5年で去年から本格的に競技に取り組んでいる22歳男性です。実は今日あったレースで落車を起こしてしまいました。バイク、自分共に傷ついた(物理的にも精神的にも)のですが、幸いまともに転んだのは自分だけでした。

 そこで栗村さんにお聞きしたいのですが、1カ月後に控えているレースに参加していいものでしょうか。また落車を起こしてしまったり、他人を巻き込んでしまわないか不安です。レースに出場する前に集団走に参加するなど練習を重ねてから出場したほうがいいのでしょうか。

(20代男性)

 近年、ホビーレースでもプロのレースでも落車は増加傾向にあります。

 プロのレースで落車が増えている理由の一つは、どこのチームも戦略的な走りをするようになったからでしょうね。一昔前は個々の選手の裁量に任される部分が多かったので、それぞれが割と勝手に動いていましたが、今は無線がありますから、上りの前とか、道が細くなるとか、そういう勝負どころの前ではどの選手も「(集団前方に)上がれ!」という指示を受けるわけです。

 でも、当たり前ですが、全員が先頭付近に陣取ることなんてできませんよね。10人、20人しか入れないスペースに100人の選手が殺到するわけですから、当然落車が起こります。

 あと、機材の高性能化も逆説的に落車を増やしていると思います。ウェアを含む機材の進歩でスピードはどんどん上がっていますし、ディスクブレーキとキャリパーブレーキの混在によって制動力に差が生じてしまい、それらがリスクにつながっているという説もあります。

 最後に、室内トレーニングのウェイトが高まったこと。外で走らずに強くなった選手は、極端に言うと、強力なエンジンの車に上手ではないドライバーが乗っているような状態ですから危険です。

 ホビーレーサーの場合はチーム戦略は関係ないでしょうから、機材の高速化と実走のウェイトが減ったことが原因だと思います。

 質問者さんは自覚されていると思うのですが、落車を起こしがちな選手がありがたくないのは間違いありません。周囲の選手にケガをさせるかもしれませんから。ただ、どんなに上手な選手も転ぶときは転ぶのも事実です。サガンだって転ぶじゃないですか。

抜群の運動神経とバイクコントロール術を持つといわれるサガンも落車することはある Photo: Yuzuru SUNADA

 だから自分を責めすぎず、淡々と対策をとってからレースに出ましょう。今のままレースに出てはいけないのは言うまでもありません。

 対策とは、まず、落車によって歪んだ心身を整えること。プロ選手を見ていてもわかるように一度落車すると立て続けに転びやすいのですが、それは落車のショックで体のバランス感覚が狂うからでしょう。あと、心理的なショックでビビってしまい、体がこわばったり、変なブレーキングをしたりすることも次の落車に繋がります。

 したがって、「落車せずに走る」という当たり前の経験を積み重ねて、心身のダメージを回復させてください。その上で、車が来ない安全な広い場所で地面にボトルなどを置いて8の字で走ったり、急ブレーキの練習をしたり、可能ならご友人と肩くみ走行や肩を当ててバランスをとる練習もしてください。ハスる練習も効果的ですよ。低速でちょっとハスらせることで、ハスってもパニックを起こさないようになるんです。但し、こちらはかなり上級編となるので初心者にはオススメできませんが。

 基本的なことになりますが、普段やっていないことは本番でもできません。高速でのコーナリング、集団走行、人との接触、急制動、etc…。もちろんセンスがある人であればいきなりレースに出てもまったく転ばないということもあるでしょうが、そういった人はごく一握りです。

 トレーニングというとフィジカルトレーニングばかりに目が行く方が多いのですが、こういうスキルトレーニングを軽視してはいけません。エンジンの馬力だけアップさせてドライビングテクニックはそのまま、なんてトレーニングとは言えませんよね?

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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栗村修の“輪”生相談

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