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つれづれイタリア~ノ<138>イタリア、新型コロナウイルス感染拡大による厳しい移動制限実施 プロアスリートの活動は保証

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 ご存知の通り、イタリアにおける新型コロナウイルス感染の急拡大しています。そこで、イタリア政府は国民に対し、今までない厳しい措置を取りました。全国移動制限令です。この命令に従わないと、罰金から3カ月〜4年までの禁固刑となります。レースの開催や選手にも影響する、とにかく厳しいものです。

新型コロナウイルスの罹患が発表されたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAE・チームエミレーツ) Photo: Yuzuru SUNADA

 なぜイタリア政府は例を見ない対策に踏み切ったのか。理由は簡単です。急増する患者に対し、医療体制をパンクさせないためです。そもそも日本と比べて、病院の数が少なく、緊急患者の受け入れ態勢は弱いことが挙げられます。

 イタリア厚生省の最新データを見てみましょう。

2017年における病院とベッドの数(イタリア厚生省調べ)

公立病院施設:518棟(全15万1646床)
公認私立施設:482棟(全4万458床) ※住民1000人あたり0.7
合計:19万2000床以上 ※住民1000人あたり3.2

世界主要国におけるベッド数のデータ(2018年経済協力開発機構《OECD》調べ)

日本:住民1000人あたり13.1
韓国:住民1000人あたり12.3
ロシア:住民1000人あたり8.1
ドイツ:住民1000人あたり8.0
米国:住民1000人あたり2.8
英国:住民1000人あたり2.5

イタリアの感染者数の状況(2020年3月12日現在)イタリア厚生省調べ

陽性:1万2839人(*) 死者:1016人 回復:1258人
合計1万5113人(*)

自宅療養:5036人
入院:6650人
集中治療室:1153人

 感染者の50%は自宅療養で簡単に完治すると言われていますが、残りの50%は入院せざるを得ない状態です。重篤患者は人工呼吸器を使わざるをえません。すでに1万5000人以上の感染者が確認され、そのうち1000人以上は亡くなっています。現在、イタリア国内で人工呼吸器の650人分しかありませんので、より多くの人命を救うため、3月8日に特定地域を限定した移動制限が戦後初めて発令されました。そして、3月9日にその範囲を全国レベルに広げました。

閑散としたミラノのブレーラ地区 Photo: Alessandro MARCOMINI
入場制限がかかり、入店まで1時間待ちのスーパー。1m以上の退陣距離をとっている Photo: Alessandro MARCOMINI

発令までの経緯

 中国武漢市から世界中に広がった新型コロナウイルスがイタリア国内で初めて確認されたのは、1月30日でした。感染者は中国からの観光客でした。2月18日はミラノ近郊とパドヴァ近郊でイタリア人の集団感染が見つかり、2月23日はこの2つの地域を強制封鎖。その後、感染者の数がイタリア北部で急増し、3月8日にミラノ、ヴェネツィアなどを含む北イタリアを封鎖する政府の首相令が発令され、1600万人に対し、移動制限がかけられました。しかし、異なる地域でも感染が広がり、翌日3月9日にイタリア全土に移動制限がかけられました。

 主な制限を紹介します。在イタリア日本国大使館でも閲覧できます。

・個人のあらゆる移動を避ける。ただし、業務上の必要性、必要がある状況、健康上の理由に裏付けされる動機がある移動を除く。自身の住所、住居、居住地への帰還は認められる。
・隔離措置下にある者またはウイルス陽性者は、自身の住居から移動することを全面的に禁止 。
・ 場所の公私を問わずあらゆるイベントの中止。これらには、文化・娯楽・スポーツイベント、宗教行事、見本市、また一般に公開された閉鎖空間で行われるもの、例えば、大規模イベント、映画館、劇場、パブ、ダンススクール、ゲームセンター、ギャンブルの場、クラブ、その他類似の場所を含む。右施設においてはあらゆる活動を中止。
・保育園・幼稚園及びあらゆるレベル・種類の学校教育サービスの中止、大学及び専門学校や研修活動等の高等教育及び学校活動への参加の一時中止。
・ 博物館、文化開館・施設の閉鎖。
・ レストラン及び喫茶店の閉鎖。
・薬局、食料品店、キオスク以外は営業中止。入場者間に1メートルの対人距離を保つことを保障しなければならない。違反の場合には営業中止の罰則が適用される。
・ジム、スポーツセンター、プール、水泳教室、スパ、温泉施設、文化センタ-、社会福祉センター、レクリエーションセンターの活動は中止。

自転車競技における影響について

 さて、自転車競技における影響を見てみたいと思います。

中止が発表されたレースの一つ「ストラーデ・ビアンケ」 ©Yuzuru SUNADA

 イタリア国内で最後に行われたロードレースは2月23日です。この段階で感染者が見つかったロンバルディア州とヴェネト州以外の地域では大会が開催できるだろうという考え方もありました。しかしその後、イタリア全土で感染者が日を追うごとに増え続け、とうとう大会の延期・中止が決まる方針が打ち出されました。刻々と変わる情勢を見てみましょう。

2/24 ミラノ・サンレモの中止またはスタート変更が初めて議論に。
2/26 イタリア中部マルケ州が全てのスポーツイベントの中止を決定。
2/27 UAEツアー中断。スタッフと選手に新型コロナウイルス感染の疑いが浮上。その後、フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、UAEチーム)らの感染が判明。
2/29 イタリア自転車連盟会長、レナト・ディ・ロッコはまだ楽観的な姿勢を示す。
3/3 フランスのスポーツ大臣はパリ・ニースの実施が可能であると発言。
3/4  EFエデュケーションファースト、ミッチェルストン・スコット、グルパマ・エフデジ、チーム イネオス、ユンボ・ヴィスマは健康を理由に3月末下旬まで活動停止、または一部地域のレース不参加を発表。UCIはレースの中止は避けるべきと談話を発表。
3/5 イタリア政府は国内のレース・試合中止を要請。それを受け、ストラーデ・ビアンケ中止に。
3/6 ティレーノ・アドリアティコは中止に。
3/7 春のクラシック、ミラノ・サンレモ中止に。
3/8 首相令でイタリア北部移動制限発令。
3/9 首相令でイタリア全土移動制限発令。
フランス政府は1000人以上集まるイベントの中止を決定。パリ・ニースは無観客に。イタリアオリンピック委員会CONIはイタリア国内全レースおよび大会の中止を通達。サッカーも無観客試合実施から中止に。
3/10 UCI会長はジロ・ディタリア、ツール・ド・フランスの中止や延期の可能性があると認める。
3/11 ツール・ド・ノルマンディ(フランス)、イストリアン・スプリング・トロフィー(クロアチア)、ポルトガル国内の全自転車競技中止。 WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスの世界的な状況についてパンデミックと宣言。
3/12  ツール・ド・ブレターニュ中止。イタリアプロサッカーリーグ「セリエ A」、「F1」、「NBA」の選手とスタッフの感染が確認。ベルギー、フランドル地方スポーツ省、全地域のスポーツイベント中止を発表。多数のクラシックレースを含む。
3/13 パリ~ニースが第7ステージで打ち切りに。ジロディタリア延期が発表。

スポーツ活動は全面禁止なのか。

 このような状況の中で、スポーツは完全にできないものなのでしょうか。イタリアの首相令では、仕事を理由に移動や活動ができます。実際に会社のほとんどは営業をしていますし、市役所も工場も止まっていません。理論上、プロ選手の仕事であるトレーニングも可能です。移動制限とスポーツ選手の“仕事”の矛盾を解くため、スポーツに関する項目が設けられています。次のようなものです。

場所の公私を問わず、あらゆるスポーツイベント・試合の一時中止

競技場は観客を入れない形で利用可能であるが、オリンピックや国内外での試合の参加を考慮してアスリート、プロ、アマチュア選手伊オリンピック委員会(CONI)及び各スポーツ連盟に認可された者の練習のみ可能とする。観客を入れない競技場内において、国際的なスポーツ機関が企画するイベントや試合の開催は認められる。実施する全ての場合において、スポーツ協会及び団体は、医療担当者を介して、参加する選手、テクニカルスタッフ、指導者、マネージャーの間で新型コロナウイルス感染のリスクを抑えるため、適切な検査を実施しなければならない。野外で行うスポーツ及びモータースポーツは、1メートルの対人関係を確保することを条件に開催が許可される

 つまり、特定選手であれば、トラック競技場の利用と野外練習ができます。しかし、一般サイクリストには自宅待機が求められています。1メートル以上の距離を保てば、問題はなさそうですが、“トレーニングは仕事だ”というアスリート向けの項目を適用できませんし、万が一事故が起これば、ベッド数に限りがあるため、病院に入院することができないという危険性を避けるためです。

イタリアはこれからどう動くのか。

 イタリアでは大会の中止より、延期が好ましいとされています。しかし、過密するレースカレンダーをどう処理するか課題です。実際に、3月13日にはジロ・ディタリアが延期と発表されました。また、ツール・ド・フランスの延期が決定されたら、2020年におけるレースカレンダーの再編成は放映権、オリンピック開催、世界選手権が絡み、困難を極めるのでしょう。選手側にもつらい時期です。特にグランツールでの総合優勝を狙う選手にとって、ピークの調整は全く計画できないものになります。

 状況が流動的なので、今後も状況を見守りたいと思います。

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