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「自転車“基礎”栄養学」<4>栄養素で差がつく補給戦略 ポイントは消化の時間短縮と効率的なエネルギー化

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 レース等やハードなトレーニング等高強度なパフォーマンスを持続しなければならない場合、食事の摂り方も戦略の一つとなります。そのような場合の食事のポイントは、胃の通過時間を考慮した食事内容にすることです。なぜなら、栄養素によって胃の通過時間が異なり、それが体への消化・吸収に差が生じることで、延いては運動中にエネルギーを得る速さが変わるためです。

選ぶ糖質はパフォーマンスにも影響を与える Photo : Yuzuru SUNADA

脂質の消化時間は糖質の8倍

 例えば同量を摂取したとして、炭水化物が胃を通過する時間を1とすると、たんぱく質は2倍程度、脂質は約8倍もの時間がかかります。胃の中に食べた物が残った状態で動くのは不快感を伴うことが多いですし、激しい追い込みも難しくなるかもしれません。練習の前後の食事や補食、運動中の補食はこの点を踏まえて内容を考える必要があります。

 運動前は消化の良いもの、つまり比較的胃の通過が速いものをおすすめします。炭水化物中心が良いので、おにぎり、饅頭、果物などが例として挙げられます。

 パン食が中心の方は、パンの材料に既にバター等の脂質が入っているため、生地が薄いあんぱんやジャムぱんがおすすめです。クロワッサンやデニッシュ生地のパンは、バターをたっぷり使用しているので運動前は避けた方が良いでしょう。サンドイッチも野菜中心のものなら大丈夫ですが、たっぷりのマヨネーズや揚げ物が入っている物は避けた方がよいでしょう。

極力油分が少ない方を選ぼう Photo: iStock.com/Nigel Stripe

 サイクリストの場合、パフォーマンス前にはパスタを食べるという方もいらっしゃいますよね。その場合はオイルたっぷり、クリームたっぷりのタイプよりもあっさりした和風テイストのものを選ぶようにしましょう。

 運動中の補給も基本的には炭水化物中心がおすすめです。市販のジェルなども良いですが、全てをジェルにするのではなく、合間に噛み応えのあるものも摂ると良いでしょう。噛むことで胃腸への消化液の分泌を促進したり、集中力のアップにもつながります。私の周りでは、グミや饅頭、濡れ煎餅など、飽きないように味や食感を工夫して用意している方が多いです。

炭水化物のエネルギー化にはビタミンが不可欠

 自転車競技は運動中の内臓の動きが比較的少ないスポーツで、消化器官に与える負担は少ないと言われていますが、胃の内容物は極力少ない状態で運動した方が練習効率も上がります。他にも、運動前に控えた方が良いものとして、食物繊維の多いもの、乳製品などが挙げられます。食物繊維と乳製品はガスの発生により腸の負担がかかるためです。

 また、前回も書きましたが、炭水化物(主食)だけでは、効率的にエネルギーを作ることができないので、ビタミンを含む食材も併せて摂取してください。 特にビタミンB群は積極的に摂るように心がけましょう。ちなみに私がコンビニで調達するときは、 ビタミンB群が多く含まれている野菜ジュースなどを積極的に選んで一緒に摂るようにしています。もしくは、ビタミンのサプリメントも一緒に摂取するようにしています。

もちろん、豚肉やうなぎにもビタミンB群が豊富に含まれています。ただ、その場で食べられて、かつ脂質が少なくて済むものという点では、手軽に摂れる野菜ジュースという方法があることも知っておくとよいでしょう。

運動後は疲労度に応じて栄養摂取を

 運動後は、すぐにたんぱく質! と行きたいところですが、疲弊している内臓に一番エネルギーがかかるたんぱく質を摂取するとさらに臓器は疲れてしまいます。

 まずは消化の良いエネルギー源を摂取することが、早い回復につながります。運動後すぐにサプリメントで摂るという場合はBCAA等、タンパク質が分解されたアミノ酸の形で摂取する方が負担は少ないです。

 回復には糖質も欠かせないので、私はたんぱく質が摂れるサケやそぼろ、シーチキン(マヨネーズが気になりますが)、シラス入りのおにぎりを食べるようにしています。糖質とタンパク質が同時に摂れ、コンビニでもすぐに手に入るので重宝しています。

 また、追い込みすぎてクタクタに疲れ切ったとき、食事を受け付けなくなるということもあると思います。しかし、何も食べないのは疲労の回復を遅延させるため、少しでも良いので食べられるものを口にしておくことをおすすめします。

 そして脂質やアルコールは避けて、消化しやすいものを選ぶことが回復への近道となります。消化器官に問題がなければ、たんぱく質が含まれた食事をよく噛んで食べるようにしましょう。

小川静香 小川静香(おがわ・しずか)

公認スポーツ栄養士、管理栄養士、博士(医学)。食アスリートジュニアインストラクター。日本女子大学卒業後、東北大学大学院医学系研究科運動学分野を修了。3歳から水泳を始め、国体も経験。大学院在学中にトライアスロンにハマり、2009年に念願の日本選手権に出場。同年佐渡国際トライアスロンAタイプで優勝を果たす。スポーツトレーナーを目指す学生の指導にあたる他、スポーツ栄養の知識を自ら実践し、栄養教育活動や栄養セミナーで伝える。現在はアイアンマンレースに向けた練習と共に筋トレにも精力的に取り組み、ボディメイクに奮闘中。

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