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つれづれイタリア~ノ<137>コロンビアからイタリア、そして世界へ羽ばたく若い星 エガン・ベルナル独占インタビュー

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 欧州の一部の国で盛んに行われていたロードレースですが、時代が移り変わり、アフリカやアジアなど新しい国々でも盛んになっています。今回はそんな欧州ではない国出身の若いチャンピオンにスポットを当てます。22歳の若さでツール・ド・フランスを手にしたエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)です。昨年、10月の「ツール・ド・フランス さいたまクリテリム」へ参加するため日本を訪れた際にインタビューしました。

エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)に独占インタビューをしました Photo: Marco FAVARO

五輪よりツールに集中したい

 ベルナルについて本が書けるぐらい興味深い選手です。誰もが彼のことを努力家で、勉強家、そして低姿勢なことを認めています。自転車のメンテナンスも含め、自分でできることは自分でやる。しっかりしている「現代っ子」という印象です。それでは新生のごとくに現れたコロンビアの若手選手、エガン・ベルナルの独占インタビューにお付き合いください。

――日本を訪れたのは初めてですか。

ベルナル:はい。初めてです。あまり観光はできなかったですが、日本の方たちは礼儀正しい人が多いと感じました。

さいたまクリテリウムの表彰台に上がるエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) Photo: Marco FAVARO

――2020年のツール・ド・フランスは随分変わります。タイムトライアルは少なく、新しい山岳コースが制定されました。いかがですか。

ベルナル: 確かに今年のレースは違いますね。ヒルクライムが強い人だけでなく、パンチャーの特性を持つ人も勝ち目がある大会だと思います。私もそれに順応する必要があります。

記者会見に丁寧に質問に答える(耐える?)エガン・ベルナル(コロンビア。チーム イネオス) Photo: Marco FAVARO
チームプレゼンテーションに臨んだエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) Photo: Marco FAVARO

――UCI国別ランキングを見ますと、コロンビアは2月現在、トップ3に上がっています。東京オリンピックや世界選手権に多くの選手が送り込めるチャンスです。ただ、東京オリンピックはツールが終わってからすぐの開催となります。エガン選手はどちらを優先しますか。ツールか五輪か。

ベルナル: 正直言いますと、オリンピックよりツールに集中したいです。オリンピックはワンデーレースですので、私はどちらかというと、ステージレースに向いています。国としてオリンピックへの出場は大きな目標ですが、私の目標は違います。※2月23日付の報道で、東京五輪に出場すると報道あり。

UCI国別ランキングトップ5(2020年2月20日現在)

1位 ベルギー       13414.09ポイント
2位 イタリア       11984.98ポイント
3位 コロンビア   11009.54ポイント
4位 オランダ       10979.14ポイント
5位 フランス       10829.95ポイント

――2000年代からのコロンビア人選手は自転車競技に飛び込み大きな成績を残しています。2014年、ナイロ・キンタナのジロ・ディタリアにコロンビア人として初めてグランツールで個人総合優勝、そしてあなた自身が2019年にツール・ド・フランスで個人総合優勝を果たしました。コロンビア国内で自転車競技への知名度が変わりましたか。

コロンビアのファンと並ぶエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)右ガールフレンド兼広報担当のシオミ・ゲッレーロ Photo: Marco FAVARO

ベルナル: だいぶ変わりました。サッカーは依然として一番人気ですが、その次は自転車競技です。キンタナ、リゴベルト・ウラン、エステバン・チャベスはもちろんそうですが、フェルナンド・ガビリアなどの登場で、ヒルクライマーだけでなく、強いスプリンターやクロノマン(タイムトライアルレースに強い選手)が出てきました。様々な意味でレースの楽しみ方は変わったかなと感じています。

――ヴェロドローム(屋内自転車競技場)の建設など、コロンビア政府は何らかの形で選手になりたい若者をサポートしていますか?

ベルナル: そうですね。私の場合、支援はなかったですが、マウンテンバイク(MTB)の世界選手権でコロンビア代表として選出されました。今、ツアー・コロンビア(UCI2.1)も開催されていますし、政府と自治体もサポートしています。そのおかげで国内のロードレースの人気が高まっていますね。多くの子供がこのスポーツに興味を持ってくれたらと思います。

大学か自転車か、選択を迫られた

――話が変わりますが、自転車への興味はいつ生まれましたか。

ベルナル: 小さい頃はじっとできない子供だったと聞いています(笑)。父もロードレーサーになりたかったのですが、その夢を叶えることはできませんでした。子供の頃、父とテレビでツールとジロをテレビで見ていた時、「いつかレースに出たいなぁ」と父に言いました。そこで、7歳なった際に古い自転車を買ってもらい、9歳で初めてのMTBレースに出て優勝しました。その賞金でジャージと学費を払うことができました。家は豊かではなかったので、助かりました。その時はロードバイクより、MTBが好きでしたね。

――それはなぜでしょう?

ベルナル: 家の周りは山だらけですから(笑)。地元のシパキラ市は標高が高く(2600m)、オフロードも多いし、練習場所はたくさんあります。ですが、2013年にクリストファー・フルーム(イギリス)のツール・ド・フランス優勝を見て、ロードにも興味が湧き始め、2014年にキンタナのジロ・ディタリア優勝でロードレースへの興味がますます強くなりました。

――どうやってロードレースの世界に入ったのでしょうか。以前はコロンビアのプロチームがありましたが、2015年に消滅しましたね。

自分で自転車を調整するベルナル選手。ニバリ、チポッリーニ、パンターニと同様に自分で自転車を入念調整したい選手の一人 Photo: Marco FAVARO

ベルナル: そうですね。高校を卒業して、進路を決めようと思い、ジャーナリストになるため、大学に入りました。その時は自転車を諦めようとも考えていました。MTB選手として頑張っても生計が立てられないからです。大学は遠かったし、30kmの道のりを自転車で通ってたので、遅刻が重なり、その度に先生にとても叱られ、「自転車か大学かをどちらにしてください」と選択を迫られました。

 成績がよかったので大学の勉強に専念しようと思ったのですが、今度は家族や周りの人に「自転車を止めるな」と言われ、先生に相談したところ、こう告げられました「1年間選手を頑張ってください。ダメなら大学に戻ってください」。

 期限を設けて自転車に専念しはじめたところ結果が出始めました。2015年にアンドラで行われたMTBの世界選手権にコロンビア代表として出場した際、優勝はできませんでしたが2位となったことで、最終的には自転車の道を選びました。

 その後、レースの開催はヨーロッパに集中しているので、ヨーロッパへ行く方法を探しました。当時のMTBコロンビア代表監督だったアンドレア・アルベラーティ(イタリア)に話したら、アンドラの世界選手権の後で地元のシチリアに招いてくれました。彼の家でホームステイをしていました。

イタリアの地方レース、GPベゲッリに出場したチーム イネオス。苦手なワンデーレースでも積極的に参加している Photo: Marco FAVARO

今後の夢はブエルタとジロ

――イタリアのレースとの出会いはどうでした?

ベルナル: 最初はMTBレースから出場しました。その後、ロードレースにも出場し、トスカーナ地方で行われた「トロフェオ・ダウトゥンノ・デル・モンテ・ピサーノ」(通称イタリアのリトルフランドルレース)で優勝。そこで、イタリアのUCIプロコンチネンタルチーム(現UCIプロチーム)、アンドローニジョカットリの監督に紹介され、契約につながりました。2016年から2年間イタリア北部ピエモンテに住みました。

――イタリア語は上手ですね。どこで学びました?

ベルナル: 最初はアルベラーティ監督とスペイン語で話していましたが、毎日イタリア語の辞書を持って勉強をしました。運良くスペイン語とイタリア語が近い言語なので、早く覚えることができました。周りはイタリア人のスタッフやロードレース関係者が多いので、イタリア語は非常に便利です。

――これからの夢は?

ベルナル: もちろん、再びツール・ド・フランスの総合優勝を果たしたいのですが、私の夢はジロ・ディタリアとブエルタ・ア・エスパーニャにも勝つことです。でもチームに相談しないとだめですね。ただ、まだ22歳(インタビュー時点、現在は23歳)ですし、まだ経験が足りないと感じています。チームメートはみんな私より経験が豊かな人で、レース展開も落ち着いています。

――クラシックレースに興味はないですか。

ベルナル: 正直言いますと、コロンビアではクラシックレースよりグランツールのほうが人気です。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュやミラノ・サンレモ、イル・ロンバルディアは好きですが、あまり知られていません。私にとってクラシックレースに勝つことは難しいですが、出たくないわけではありません。ただ、今はできる限りステージレースやグランツールにフォーカスを当てたい。

――MTBレースには戻らないのでしょうか。

ベルナル: MTBは懐かしいですね。楽しかったです。アップダウンもあるし、オフロードもあるし、ロードレースと全然違います。ロードは時々退屈ですから。しかし、MTBはロードに役に立つことをたくさん教えてくれました。ロードレーサーとしてその技術を生かせています。MTBはいいスクールです。お勧めします。

エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)

本名:Egan Arley Bernal Gómez (エガン・アーリー・ベルナル・ゴメス)
生年月日:1997年1月13日(23歳)
国籍:コロンビア
身長:174cm
体重:60kg

所属チーム
2016〜17 Androni Giocattoli (UCIプロチーム)
2018-2019 Team Sky (UCIワールドチーム)
2020- 2023 Team INEOS(UCIワールドチーム)

エガン・ベルナール主な成績
2019年
Tour de France優勝
Tour de Suisse優勝
Paris – Nice優勝
Gran Piemonte優勝

2018年
Tour of California優勝
Colombia Oro y Paz優勝
Tour de Romandie総合2位
Tour of Californiaステージ優勝(2回)
Tour de Romandieステージ優勝

2017年
Sibiu Cycling Tour優勝

2016年
Tour de l’Avenir優勝

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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