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教えて! 安井先生<2>ロードバイクのインプレ記事で書いてあるほど加速や剛性感、快適性を体感できないのはなぜ?

by 安井行生 / Yukio YASUI
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今回のお題

Q:インプレ記事には加速や快適性や剛性感などいろいろ書かれていますが、そこまで感じ取ることができません。鈍感なんでしょうか?

 前回に続き、試乗に関する質問です。今回はこの質問にお答えしつつ、具体的な試乗方法について言及したいと思います。

 前回は「機材の基準を作ること」が前提だと書きましたが、「評価の基準を設けること」も大切です。言い換えると、「自分がどんな性能を求めているか」「どんな性能を感じ取りたいか」をはっきりさせておくこと。

 バイクやホイールには、加速、高速巡航、登坂、快適性、ハンドリング、安定性、扱いやすさ、気持ちよさ、一体感…など様々な評価項目がありますが、人によって求める性能は変わります。

 その基準が変われば、同じバイクでも評価は変わって当然です。だから他の人と判断が違っても気にすることはありません。僕は長年、某選手と一緒にインプレをしてきましたが、評価が真逆になることは決して珍しいことではありません。インプレに正解はないんです。

インプレライダーが教える試乗のメソッド

 ではここから具体的な試乗メソッドを。

 まず、基準となる自分のバイクで走って「その日の自分の体調」や「感覚」をつかんでおきます。この作業が非常に大切です。その後、できるだけ時間を空けずに試乗車に乗り、同じコースを同じように走ります。

 ただし、ぼんやりと走るだけでは「ペダルを踏んだら走り出した」「ハンドル切ったら曲がった」くらいしか分かりません。漫然と走るのではなく、「どんな踏み方をしたら剛性感はどう変わるか」「振動の伝わり方はどんなか」「低負荷と高負荷ではバイクの振る舞いがどう変わるか」など、明確な目的意識を持って、体のセンサーの感度を最大限に高めて試乗してみましょう。

正しいインプレッションを得るには明確な目的意識を持つことが重要 Photo: Shusaku MATSUO

 例えば加速なら、自分の基準バイクと同じ場所で、同じギヤ比で、同じパワーで、同じペダリングで加速してみる。加速の良し悪しだけではなく、感覚的なことも感じ取ってみると面白いと思います。それはどのような加速なのか。「前から引っ張られるようなスムーズな加速」なのか、「天使に優しく背中を押されるような上品な加速」なのか、「超人ハルクに体当たりされるような暴力的な加速」なのか。集中して感じ取ろうとしてみる。そのとき大事なのは、どんな加速が自分の好みなのか、です。

 剛性感はですね、正確に感じ取るのが非常に難しいんです。「加速がいい=高剛性」とは全く限りませんし、「加速が鈍い=剛性が低い」とも言えません。そもそも「高剛性=善」ではありません。

 それに、「フレーム(もしくはホイール)の剛性」って複雑なんです。高い低いだけで語れるようなものじゃない。「たわみ方」に差があるからです。例えば、数値的に「ペダルに○kgfの力がかかったときに○mmたわむ」という剛性を持つフレームがあるとします。しかし、そのたわみ方は「最初に大きくしなって奥の方で耐える」のか、「表面は硬いが大パワーをかけていくとなし崩し的に変形していく」のか、「入力量と変形量の関係が最初から最後まで線形」なのか…と様々です。どのたわみ方が好みなのかによって、剛性感の評価は大きく分かれてしまうはず。ちなみに、たわみ方はペダリングによっても変わります。

 加速の良し悪しや登坂性能などという単純な評価に加え、「どのようにたわんでいるか」を感じ取るようにすると、より深く機材を理解することができ、自分の好みの機材を判断しやすくなるはずです。

 快適性も単純に思えますが、実はけっこう奥が深い。人はハンドル・サドル・ペダルに伝わってくる振動によって快適性を判断しますが、バイクによってその3点の快適性のバランスが変わります。例えばフューチャーショックを搭載したスペシャライズド・ルーベはハンドル周りの快適性が高いのだろうし、アイソスピードでシートポストを積極的にしならせるトレック・マドンはサドル部の快適性が高くなるでしょう。

 しかも、3点のうちどこで主に快適性を感じ取っているかは人によって変わります。前乗りでガンガン踏む人ならハンドル荷重になりがちなので、ハンドル部の快適性が重要になる。一方、後ろ乗りで淡々と走るライダーなら荷重はサドルに集中するので、サドル部の快適性が重要になります。

 自分はどのタイプなのか。バイクの快適性のバランスはどのようになっているか。そこを理解すると、自分に合った特性が選びやすくなります。

試乗を終えたら自分のバイクに一度乗る

 さて。複数台の試乗をするときは、試乗を終えたあとすぐ別の試乗車に乗っちゃダメですよ。直前に乗ったバイクの印象に影響されてしまうので。ここも非常に重要なポイントです。

 ショップやメーカーが主催する試乗会では、いろんなバイクやホイールが用意されており、それらをとっかえひっかえしながら乗ることができます。素晴らしい機会ですが、「正しい試乗」という観点に立てば、あまり好ましくありません。どうしても相対評価になってしまうためです。

 可能であれば、一台試乗をするたびに、基準としている自分のバイクで走り、感覚をリセットすること。それが理想です。ワインのテイスティングをするとき、毎回水で口をすすぐでしょう。あれを自転車の試乗でもやるわけです。そうしないと正しい印象は得られません。

 自転車に関して理解を深めつつ、こんなところに注意しながら試乗すれば、きっと走りの違いを感じ取ることができるはずです。

インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

 大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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