三船雅彦の「#道との遭遇」鉄人・三船さんがヒルクライムの聖地「十三峠」を13回も上って分かったことは?

by 三船雅彦 / Masahiko MIFUNE
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 長距離のエキスパートでプロサイクリストの三船雅彦さんが、全国の道を普通と違った走り方で紹介する新連載「#道との遭遇」。第2回目は、関西のサイクリストを中心にメジャーな「十三峠」を走ってもらいました。ただその走り方が普通でなかったらしいのです。

いよいよ十三峠13回へ なぜか大阪平野は霧に包まれて神秘的 Photo: Masahiko MIFUNE

「十三峠」の名前の由来とは?

 さて連載「#道との遭遇」2回目は、大阪のサイクリストにとってヒルクライムの聖地とも言える「十三峠」。なぜ「十三峠」は「十三峠」と言うのか? 皆さん知ってます?? そう聞いている私も全然わからないです。

 よし!わからないときは現地に行って走ってみよう! きっと十三峠を走れば何かがわかるだろう。しかしそういう私も20代から十三峠を走っているが、いまだに知っているとは言えない。ならば、徹底してわかるまで走ろうではないか。と言うことで今回十三峠×13回、スタート!

 一般的に(サイクリスト的に)十三峠と言われているのは大阪側で、今回も大阪側を徹底的に走ることに。13回を目指してライド開始。しかし登り始めてものの数メートルでこんなことをやったやつはいるのだろうか、と今から13回もここを登ろうというのに気持ちは早くも後ろ向きに。十三峠は約4kmで360m上る。ということは13回で104kmで4680mアップ。普通に考えたら尋常ではない。と言うか、この企画考えた時点で気づけよ、ってことだが。リエージュ~バストーニュ~リエージュよりきついんじゃない??

十三峠展望台へ。今回はここを折り返し地点に設定 Photo: Masahiko MIFUNE
スタートからゴールまでまんべんなくきつい。序盤にまっすぐ上る区間、コーナーの直前は一瞬だが20%は超えている Photo: Masahiko MIFUNE

1回上り25分ペースを刻む

 それほどペースを上げず、目分量範囲だが13回を登り切れるペース配分でのタイムは25分ほど。以後平均して上りは25分ぐらい。下りを入れてふもとの信号から展望台入口までの往復で35分以内。ということは約7時間。それに途中休憩などを入れると9時間というところか。

 今回使用したのはエディメルクス・サンレモ76。ホイールはカンパニョーロ・ゾンダにパナレーサー・レースD25cで空気圧6.5気圧(体重76kg)。ギヤは53Tx39T、11~32T。12スピードに進化しローギヤはワイド化されている。それでもレースに必要だろうと思われる11〜17までのギヤはクロス化されており、プロ選手からも特にクレームはないようだ。今回のチャレンジだとロー側の26Tと29Tしか必要なかったが。

上れど上れど上りは続く。九十九折りと言われるだけのことはある Photo: Masahiko MIFUNE
回数をこなすごとに顔から余裕は消えていく Photo: Masahiko MIFUNE

 2本目、3本目、4本目と順調に走り続ける。5本目を終えて途中コース脇にあるカフェでランチ。居心地よくて小一時間も止まってしまった。この時点で同じように反復で上っていたサイクリストがいたが帰っていってしまったのか。天候に恵まれた十三峠13本アタック、指切りグローブでインナーウェア1枚に長袖ジャージの軽装備だったが8本目ごろから徐々に気温が下がり始め、下りでウィンドブレーカーを着用。それに伴いライトも装着。とにかく長い時間をある程度のペースで走り続けるファーストランの自分的なコツは、汗などで体を冷やさない、ということ。


心拍を130に抑え、ウェアを濡らさない

 上りでは心拍数を極力130で抑え汗でウェアを濡らさないようにする。これが非常に重要です。11回目になると登り続けるという行為が厳しくなり、こじつけのように理由を考えては足を着こうとする。そう、足を着いているのはきついのではなくて、そう、撮影だ撮影!そう言い聞かせる。そして12回目、いよいよ薄暗くなりはじめる。ライトは前灯及び尾灯を点灯した。

日が陰る。下りはライトを点灯して安全に下る Photo: Masahiko MIFUNE
10回を超えると言い訳的に立ち止まって写真撮影… Photo: Masahiko MIFUNE

 余談だが、日が暮れるぐらいのタイミングでたくさんのサイクリストにすれ違ったり追い抜かれたりしたが、夕方ほどなぜか黒いウェアでポケットの膨らみからしてもウィンドブレーカーなし。ちょっと危険だなと思えるサイクリストが何人かいた。黒いウェアのまま下ってくるのはライトだけでは視認が遅れることもあるので(特にこういう真っ暗でバックの景色が夜景など)、夕方以降走る人は明るい色のウェアや反射素材がふんだんに入ったウェア、ハイビズなアウターを持参・着用されるのがいいと思う。

 13回目は登り始めから真っ暗。ここまで12回を登っても何もわからない。きっと13回目を終えたときにまるで座禅で悟りを開くかのように目の前が「ハッ」と明るく開けると思っていたのだが…13回目を終えても何も変わらなかった。下りながら自問自答。それこそ「座禅とはなんだ」「仏とはなんだ」完全に仏門の世界に身が寄りつつも、しかし意識はしっかりとしながら無事に13回を登り終えてスタート地点に戻ってきた。

11回 そろそろ日が陰ってくる。急がねば!しかし脚は回らない… Photo: Masahiko MIFUNE
13回目!真っ暗なのに目の前は真っ白だ( ゜Д゜)さて、下ろう Photo: Masahiko MIFUNE

きついのに50人以上のサイクリストが楽しむ理由

 残念なことに13回も十三峠を登ってみたものの、何もわからなかった。むしろ何がなんだかわけがわからなかったし、ただただ気分が悪かった…だから13回登る必要があったのか?と。

 わかったのは、スタートからゴールまで勾配がきついこと、こんなにきつい峠なのにこの日は延べ50人以上の人が十三峠を走っていたこと、展望台では多くのサイクリストが写真を撮影したりしていて楽しそうに談笑していたり、トイレは昭和な雰囲気をかもしだしている、ということぐらいだろうか。そして何もわからぬまま家路へと着いた。再び十三峠を越えて…しまったっ!14回も登っちまったぜorz

 と、あとで考えて見れば今の時代ネットでいくらでも調べられるではないか!13回も登らずとも。十三峠は十三街道という街道の峠であり、頂上には十三塚があります。十三塚すべてが現存するということで貴重なもののようだ。自転車で通っていると意外と知らない人は多いと思うのだが、大阪側から頂上、信貴生駒スカイラインの高架下をくぐる手前左側に十三塚へとあがる道があり、一番高いところにひとつ、そしてそこから南北に6つずつ並んでいる。

展望台よりさらに上側には、十三塚が並ぶ Photo: Masahiko MIFUNE
十三峠の頂上は信貴生駒スカイライン沿いにあり、大阪府ではなく一応?奈良県だ Photo: Masahiko MIFUNE

現代土木技術の恩恵

 昔は今のような土木が発達していなかったので街道というのものは、川沿いは極力外している。大和川沿いに道を作るのは至難の業でそれは今の土木技術があるからこそ。水というものが山越えよりも怖いものだったというのがうかがえる。今の河川沿い道路はダムや堤防、治水といった現代の土木の技術の恩恵なのである。

 Photo: Masahiko MIFUNE

 大阪と奈良を結ぶ街道と言えば、暗越奈良街道や清滝街道、竜田越奈良街道などがある。そう考えると十三峠は大阪から奈良へと抜ける重要なルートの一つだったことは想像に難くない。

 遥か昔の神々しくもあり命を賭けて越えたであろう十三峠も、今では多くのサイクリストに愛される「険しくも愛されキャラな峠」として、これからも多くの大阪そして奈良のサイクリストに愛され走られることだろう。

 でも私はしばらく行くことはないでしょう…。

三船雅彦
三船雅彦(Masahiko MIFUNE)

元プロロード選手で元シクロクロス全日本チャンピオン。今でもロード、シクロクロス、ブルべとマルチに走り回る51歳。昨年は3回目の『パリ~ブレスト~パリ』完走を果たし、今年はイタリアの1001ミリア出場予定。「知らない道がある限り走り続ける!」が信条。

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